モンキーマニアやバイクファンのみならず、市井のひとびとに「カワイイ!」と言わしめた限定モンキーのプリティ破壊力はまことに凄まじいものがあった。カラーチューンの一等賞を今回は紹介しよう。 月刊モトチャンプ 2019年7月号より
語り◉津田洋介(TSUDA Yosuke)/TDF、まとめ◉宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki)
ゴールドリミテッドはホンダとオトナの余裕の証
──この連載ではじめてのミッション車、ホンダ・モンキーです。しかも金色に輝く限定モデル、その名もゴールドリミテッド! 掲載するカタログは96年発売の2代目ですが。
津田 84年発売の、初代ゴールドリミテッドはまだ6ボルトだったよね。でもちょうどこのリミテッドから装備がぐっと充実したんだ。
──マイナーチェンジですね。
津田 じつはけっこうビッグなチェンジなんだけどね。まずヘッドライトやウインカーのスイッチ類をハンドル左側に集めて、トランスミッションも3速から4速へと多段化。この1速プラスによってスピードレンジを格段に拡げたから、これはこれで大きな意味があった。
──シフトもノーマルタイプになっていますね。
津田 そうそう、それまでのシーソー式から普通のリターン式に改まった。これも多くのライダーが歓迎した仕様変更だったよ。
──エンジンはそのままですか?
津田 いや、エンジンもチューンされて最高出力が2.6psから3.1psに引き上げられたし、最大トルクも0.3kgmから0.32kgmに強化された。数字だけ見ると微力だけど、仮に260psが310psになったと思えば物凄いパワーアップでしょ。スーチャー並みかも。
──……思えませんけどね。
津田 男のロマンのわからないヤツだな。80年代のバイク雑誌でよく見た「新型50㏄スクーター対決企画」だったら驚天動地の大名級パフォーマンスだよ。
─ それはすこし分かります。7.2psは神の領域でしたから。
津田 そこで同級生はみんな、しのぎを削っていたからね。お前のバイクよりも0.2psパワフルな俺のバイクのほうが断然偉い、的な。
──モンキーはもともと小柄でアンダーパワーだから、その圧倒的な劣勢をはね返して大きなバイクをぶち抜くことにひたすら血道を上げてましたよね。コンプレックスこそ最大の武器だぜ! 的な。
津田 そう聞くと、まるでお笑い芸人みたいだな。イケメン優等生よりも愛嬌のあるブサイクのほうが巷の好感度が高いというのも。
─津田さんも今はどちらかというと“愛されキャラ”ですね。
津田 ……。
──不機嫌になったところで質問を変えます。津田さん、モンキーを所有したことはありますか?
津田 むかしあったよ。でもミニサイズ原付ってことで言えば、ヤマハのポッケとかフォーゲルのほうが好みだったな。もともと2ストが好きだったんだよね。
──その2スト好きキャラは、いまでもぜんぜん変わりませんね。ひょっとして頭の中もシンプルな2ストローク構造ですか?
津田 ……。
──だいぶ不機嫌になったところで質問を変えます(笑)。モンキーカスタムの世界にはなかなか奥深いものがありますよね。そんな底知れない沼にハマってしまった中毒患者のみなさんに、なにか有効なアドバイスはありますか?
津田 ないよ! ありません! だいたい、なんでそれをモトチャンプ誌上でオレに言わせるの?(笑)
──病院の廊下まで、重篤患者だらけですからね。
津田 なんだか楽しそうな病院だな。処方箋は症状にピッタリなおすすめカスタム部品リストかな。……ちなみに何ていう名前の病院?
──4ミニ病院、モンキー科(笑)。
津田 わかった、もう怒ってないから!(笑)。ぼちぼち話をゴールドリミテッドに戻そうよ。初代と2代目のデザインを見比べると、初代のほうがアメリカンな雰囲気なんだ。タンクのMONKEYロゴも太ペン風だし、シート地もキルティングっぽい。2代目はどちらかというと和風で、タンク中央に陣取っているウイングマークは赤地に白羽根の紅白仕様で、エンジンもブラックアウトさせて全体を引き締めている。そもそもゴールドの色味にも差があるしね。
──カタログ表紙におどるボディコピー「たいしたモンキー」は、やっぱりたいしたオヤジギャグですね。
津田 だな。しかも完全な確信犯。「次もきっと売れるハズ」「だからちょっと遊んでも大丈夫」という余裕が見てとれるよ。
──直球オヤジギャグにGOサインを出したホンダの余裕。20年以上も前にすでに「クールジャパン」を体現していた金色モンキー、金色は「こんじき」って読んでね!
左が1984年発売の初代ゴールドリミテッド、右が12年後の1996年発売2代目リミテッドだ。限定5000台は同じだが、2代目はエンジンやスイングアームはブラック塗装となり、タンクには赤いウイングマークの立体エンブレムが貼付される。