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カルナバイオ Research Memo(5):リウマチや血液がんを対象疾患としたBTK阻害薬の開発が進む(2)


■カルナバイオサイエンス<4572>の開発パイプラインの動向

2. 各パイプラインの概要
(1) BTK阻害薬「AS-0871」(対象疾患:免疫炎症疾患)
「AS-0871」は免疫炎症疾患(リウマチなど)を対象に開発が進んでいる。その特徴は非共有結合型であること、高いキナーゼ選択性を持ち副作用リスクが低いこと、関節炎マウスモデルで高い治療効果が得られており、難病にも指定されている全身性エリテマトーデス※モデルでも効果が確認されていること、などが挙げられる。

※なんらかの原因によって種々の自己抗体を産生し、それによる全身性の炎症性臓器障害を起こす疾患で、自己免疫疾患の中では最も難病とされている。


同社が公表しているキナーゼ選択性プロファイルを見ると、「AS-0871」はBTK以外で阻害するキナーゼの種類はわずか2種類だけであり、副作用のリスクが圧倒的に低い要因となっている。また、関節炎マウスモデルを使った試験では、溶媒群が投与後も関節炎スコアが高水準を維持したままだったのに対して、「AS-0871」投与群は関節炎スコアが溶媒群との比較において半分以下の数値まで低減する結果が得られている。

リウマチ用治療薬では、抗体医薬品でヒュミラなど数種類が、低分子治療薬ではトファシチニブ(JAK阻害薬、製造販売元:ファイザー)が販売されている。抗体医薬品に関しては薬価が高いことや、月に1~2回の注射投与となるため患者は通院する必要があり、患者負担が経済的・身体的に重たいのが課題となっている。また、トファシチニブは薬効が高いものの副作用も強いといったデメリットがあり、現在はヒュミラなどの抗体医薬品が効かない患者にしか使用されていない。このため、副作用が少ない安全な低分子治療薬の開発が望まれている。リウマチなどの免疫炎症治療薬は世界で約6兆円規模の市場になっており開発競争も熾烈を極めているが、「AS-0871」の開発に成功すればブロックバスターに育つ可能性は十分あると弊社では見ている。

(2) BTK阻害薬「AS-1763(旧化合物名CB-1763)」(対象疾患:血液がん)
「AS-1763」は血液がんを対象に開発が進んでいる。その特長は、非共有結合型であること、高いキナーゼ選択性があり副作用リスクが低いこと、イブルチニブ耐性BTK(C481S変異型BTK)にも強い阻害活性を示すこと、リンパ腫モデルで強力な抗腫瘍効果が確認されていること、自己免疫疾患にも適用拡大が可能なことなどが挙げられる。

血液がん治療薬として、BTK阻害薬ではイブルチニブが既に販売されているが、最近の臨床研究から一部の患者ではイブルチニブを投与し続けると、BTKに変異が生じてイブルチニブ耐性となり、治療効果が低下するとの報告が成されている。イブルチニブは野生型BTKに共有結合してその働きを阻害するが、何らかの原因によりBTKが変異(C481変異型BTK)し、イブルチニブ耐性がつくことで阻害作用が弱くなり、血液がん細胞が増殖する。同社が開発する「AS-1763」は非共有結合型で、野生型及びC481変異BTKのいずれに対しても強力な阻害作用があることが確認されている。また、キナーゼ選択性に関してもイブルチニブと比較して影響を受けるキナーゼの種類が格段に少なく、副作用リスクも低いことが想定される。さらには、動物実験で腫瘍の増殖抑制効果があることも明らかとなっている。ヒトの血液がんの一種であるリンパ腫の細胞(OCI-Ly10細胞)を移植したマウスで「AS-1763」投与群と薬物非投与群で腫瘍の大きさを測ったところ、薬物非投与群の腫瘍のサイズが23日後に約5倍になったのに対して、「AS-1763」投与群は同等から2倍の範囲に収まった。BTK阻害剤では現在数品目の臨床試験が行われているが、これら実験データだけで見ると「AS-1763」がベスト・イン・クラスであると同社では評価している。以上から、次世代型BTK阻害薬の有力候補として注目される。

血液がんの治療薬としては、抗体医薬品としてリツキシマブ(商品名:リツキサン、開発元:バイオジェン)があり、2017年の売上規模は約8,000億円、BTK阻害薬のイブルチニブで約3,500億円ある。「AS-1763」はイブルチニブ耐性BTKにも強い阻害作用があることから、開発に成功すればブロックバスターに育つ可能性は十分あると言える。さらに、「AS-1763」はリウマチへの効果も確認できており、今後の疾患領域の拡大も期待される化合物である。

(3) Wnt-signal(TNIK)阻害薬(対象疾患:大腸がん)
がん幹細胞を標的としたWnt-signal阻害薬について、国立研究開発法人国立がん研究センターと共同研究を進めている。想定される適応疾患は大腸がんである。大腸がんでは、90%以上の症例でWnt-signal遺伝子に変異が認められ、この遺伝子変異がWnt-signal伝達経路を恒常的に活性化させることによってがん幹細胞を発生させ、がんの再発を引き起こす原因と考えられているためだ。このWnt-signal経路の活性化に深く関与している物質がTNIKキナーゼであり、同キナーゼの働きを抑制することで大腸がん幹細胞の発現を抑止することが明らかとなっている。

このため、大腸がんの根治につながる治療薬として期待されるが、開発に当たって課題も出てきている。がん幹細胞が死滅したとしても周辺のがん細胞は大きくなり続けるため、延命効果を確認するのが難しいという点だ。マウスにヒトのがん幹細胞を埋め込んでも死なないため、動物モデルで延命効果を確認するのも現時点では難しい。このようにWnt-signal阻害薬は、ファースト・イン・クラスでまったく新しいことから取り組むべき課題は多いが、上記の薬効をヒトで確認できる評価方法の確立も含め、研究開発を行なうとしている。

なお、従来は「NCB-0846」と「NCB-0594」の2種類の化合物で開発を進めてきたが、両品目ともに水に溶けにくいといった課題が解消せず、改めて化合物の最適化から進めるべく仕切り直しした状況となっている。

(4) キナーゼ阻害薬(対象疾患:精神神経疾患)
精神神経疾患を対象としたキナーゼ阻害薬については、2018年3月に大日本住友製薬と共同研究並びに開発及び事業化に関する契約を締結し、現在、共同研究を進めている状況にある。同社のキナーゼ阻害剤創製のノウハウと、大日本住友製薬の精神神経領域における創薬研究のノウハウを融合することで、精神神経領域での画期的な新規キナーゼ阻害剤の開発を目指して行く。本契約に基づいて、契約一時金50百万円を2018年12月期の売上に計上しており、前臨床試験で使用する候補化合物が決定した段階で30百万円の研究マイルストーン収入を計上することになる。

開発するキナーゼ阻害剤について、がん領域を除く全疾患を対象とした臨床開発及び販売を全世界で独占的に実施する権利を大日本住友製薬に許諾し、今後、臨床開発・販売への移行を決定した場合には、開発段階や販売額目標達成に応じた開発・販売マイルストーン収入として総額で最大106億円を、また、販売後は販売額に応じて一定のロイヤリティ収入をそれぞれ得られることになる。

(5) TGFβ signaling阻害薬(対象疾患:血液がん)
慢性骨髄性白血病のがん幹細胞を標的としたTGFβsignaling阻害薬について、2015年より広島大学と共同研究を進めている。現在は化合物の最適化を行っている段階だが、絞り込みが進んでいるようで順調に進めば2019年中にも前臨床試験に進む可能性がある。

白血病の治療法としては、抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植などがあるが、いずれも副作用が強く、患者負担が大きいのが課題となっている。分子標的薬ではイマチニブやイブルチニブが上市されており、それぞれ数千億円の売上規模となっている。ただ、いずれも白血病細胞の増殖を抑えるための薬剤で対症療法となる。同社が開発を進めているTGFβsignaling阻害薬は、白血病幹細胞を死滅させる根治療法を目的としたものであり、開発に成功すればブロックバスターとなる可能性がある。同社では、早期に前臨床段階へのステージアップを図り、自社で臨床開発を進め、ヒトでの有効性・安全性を確認した上で導出したいとしている。

(6) その他
その他のパイプラインでは、新たに追加されたDGKを標的キナーゼとした低分子化合物が今後注目される。DGKキナーゼは、がん細胞を攻撃するキラーT細胞の働きに関与していることが明らかとなっているためだ。具体的には、DGKα及びDGKζと呼ばれる2種類のキナーゼが、キラーT細胞を眠らせる信号を伝達する役割を果たしている。このため、DGKαとDGKζの働きを阻害する薬剤ができればキラーT細胞の働きを活発化させ、がん細胞への攻撃力を回復させる効果が期待できる。チェックポイント阻害剤を使った治療では、メラノーマなどのがん患者に対して3割程度しか治療効果が現れないが、これは全身の免疫力が低下している患者、もしくは免疫力があってもキラーT細胞が十分活動していない患者だと推測されている。DGKα及びDGKζを標的とする治療候補化合物が開発されれば、がん免疫チェックポイント阻害剤との併用により治療効果も一段と高まることが予想される。

また、血液がんの「AS-1763」、Wnt-signal阻害薬、TGFβsignaling阻害薬について対象疾患に新たに「がん免疫」が追加されていることも注目される。ここ最近はがん治療領域においてチェックポイント阻害剤が普及し始めており、チェックポイント阻害剤の開発企業が併用療法で有望な薬剤に関して共同開発を行うため、大型契約を結ぶケースが出ているためだ。2018年3月にはエーザイ<4523>が自社の抗がん剤「レンビマ」と米メルクの「キイトルーダ」の併用療法による共同開発契約を締結し、メルクから契約一時金及び開発・販売マイルストーンで約6,110億円を得る可能性があることを発表した。同社でも今後、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法なども見据えた開発を進めていくものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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