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911Carrera S Driving Impression Chapter02 伝統のフォルムの中には、どのような速さと楽しさが込められているのか。


伝統のフォルムの中には、どのような速さと楽しさが込められているのか。


秘められた進化は、もちろん乗ってみなければわからない。日本上陸を果たした新型911の実力を、大谷達也、佐藤久実の2人のジャーナリストが試す。




REPORT◎佐藤久実(SATO Kumi)


PHOTO●小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)




※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。

 新しいポルシェ911カレラSに乗らないかと、編集長から嬉しいお誘いを頂いた。しかも箱根で!




 駐車場で待ち構えていたクルマは、紛うことなく911である、と同時に一見して新しいデザインであることもわかる。特に、リヤまわりのマッスルな感じは新しい。ホント、デザインを見るだけでもこのクルマの凄さがわかる。




 ボディと面一になっているドアグリップは、ロックを解除すると自動的にせり出すが、最初からロックされていないときは引っ込んだままである。この状態はものすごくグリップを掴みづらく、爪でボディを傷つけたり、爪を傷つけたりしやすいので要注意だ。見た目の美しさや空力的には良いが、実用性はやや不便。




 エクステリアデザイン以上に意外だったのは室内に乗り込んでからだった。水平基調のダッシュが印象的で、それに加え、ウッドパネルが何とも新鮮。911カレラに使われているのを見たのは初めてだ。その昔はウッドパネルがあったらしい。そりゃね、古いモデルは珍しくないかもしれないけど、最近は、いろんな色やマテリアルがオプションでチョイスできるとはいえ、メタルやカーボンの印象しかなかった。




 そして、シートの座り心地も今までと違う。スポーツシートとしてのホールド性も高めながら、快適だ。




 さて、早速走り出すと、見た目同様、明らかにポルシェ911でありながら、何もかもが新しい感覚だ。




 まず、エンジンのフィーリングが明らかに異なる。911のエンジンはスポーツカーらしいしレスポンスはありながら、従来、操作感も含めてどこか〝重さ〟があった。たとえば、アクセルペダルの踏み込み量を1㎜ずつ、タコメーターの針の上昇ひと目盛りずつをドライバーに意識させながら加速していくような。しかし、新型911カレラSのエンジンは、軽さがあり、気持ち良く回る。ターボチャージャーも新設計されたそうだが、その恩恵もあるだろう。ターボを感じさせないフラットなトルク感と加速感で、路面を蹴っ飛ばしながらグイグイ車体を推し進めていく。ノーマルモードでもその感覚はあるが、スポーツモードやスポーツプラスにすると、よりレスポンスやトルク感が実感できる。

 そして、この爽快さはもちろんエンジン単体での話ではない。今回、従来の7速から8速になったデュアルクラッチトランスミッションは、パドルのクリック感も軽く、スポーツプラス時のシフトチェンジは電光石火。ステップ比もちょうどいい感じで、エンジンのフィールとシフトのレスポンスがシンクロして、爽快さ倍増といった感じだ。特に下りのリズミカルな走りっぷりは楽しすぎる。今までもブレーキに応じてシフトダウンする機能はあったが、さらにキレ味が鋭くなっている。たとえば4速で走っていて緩めのコーナーの手前で軽めにブレーキを踏むとスッと3速にシフトダウン、立ち上がりでシフトアップしてくれる。ヘアピンのようなきついコーナーの手前で強く長めのブレーキを踏めば、一気に2速までギヤが落ちる。踏力やブレーキの長さなどのパラメータがあり、加速側もアクセルの踏み込み量やスピード、そして走行モードによってもシフトタイミングは変わるようだが、ペダル操作でギヤまでコントロールして走れるので、ドライブの楽しさが増す。




 一方、シャシー性能も進化している。先代でホイールベースが約100㎜延長され、それだけでもかなり安定感は増した感じが強かったが、今回はトレッドが拡大されたとのこと。この、基本的なディメンジョンだけでも、安定性とハンドリングは向上しているだろう。それに加え、さまざまな電子制御による飛び道具も装備される。ワインディングを走っていて、わかりやすく恩恵を感じたのは、リヤアクスルステアリング。違和感はないのだが、コーナーにアプローチした際のステリアング舵角の少なさや姿勢変化、旋回性能から、「これ、リヤステアが付いているんだろうな」と思ったら大当たり。オプション装備で、お値段は36万8000円也。シャシーは、エンジンやミッションなどの走行モードと別でノーマルモードとスポーツモードが選べるが、乗り心地も先代より一段と快適で洗練され、コンフォートとダイナミクスのバランスが絶妙だ。

エンジンには大幅に手が加えられて、さらに鋭いフィールが味わえるようになった。前後異径のホイールもタイプ992の特徴である。

 一方、今回から、走行モードに〝ウエット〟が加わった。試乗日は天候に恵まれ、残念ながら、その恩恵にあずかることはなかったが、ハイパワーなスポーツカーを雨でも安心して走らせる装備は絶対的に有難い。




 ちなみに、今回の試乗車はほぼフルオプションでオプション総額は約860万円にもなる! シャシー関連だけで約250万円。いろんな機能の相乗効果でこのハンドリングや性能となっているのだろうが、基本性能が高くなければ後付けの機能装備は活かされない。「素」の性能やキャラクターがどのようなものか、乗ってみたいとすごく興味を惹かれた。



 新型911カレラS、個人的には、空冷から水冷になった時に匹敵するくらい、革新的な変化を感じた。大げさな、と言われるかもしれない。が、あの時はドラスティックにクルマの仕組みが変わったから、フィーリングも変わって当然。しかし今回は技術的アップグレードは多々あるが、991型の正常進化といえるだろう。にも関わらず、こんなにもドライブフィールが変わったことに強いインパクトを受けた。モデルチェンジの度に進化を感じるのは毎度のことではあるが、改めて、恐るべしポルシェ、と思った。




 これはポルシェ911史上、最高に乗りやすいモデルではないだろうか? あくまで、ワインディングを走っただけだから限界域のハンドリングはわからないが、クルマの動きを見ていると、多分サーキットでも乗りやすくて速いだろう。是非、試してみたい! ね、編集長!

ウッドパネルの設定や丸型5連メーターなど、過去のモデルに対するヘリテージが感じられるタイプ992のインテリア。
走行モードやPASM、リヤウイング、エキゾーストの設定などはモニター画面で行える。


SPECIFICATIONS ポルシェ911カレラS


■ボディサイズ:全長4520×全幅1850×全高1300㎜ ホイールベース:2450㎜ ■車両重量:1540㎏ ■エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ 総排気量:2981㏄ 最高出力:331kW(450㎰)/6500rpm 最大トルク:530Nm(64.2㎏m)/2300~5000rpm ■トランスミッション:8速DCT ■駆動方式:RWD ■サスペン


ション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク ■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ245/35ZR20(8.5J) Ⓡ305/30ZR21(11.5J) ■パフォーマンス 最高速度:308㎞/h 0→100㎞/h:3.5秒 CO2排出量:205g/㎞ 燃料消費量(EU複合):8.9ℓ/100㎞ ■価格:1666万円
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