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「一人で来ました」 12歳でグアテマラから1か月…米国境に子ども移民の波

  • 2021年04月13日 15:19:00

【ローマAFP=時事】密入国業者が操る小さなボートに乗って、12歳のオスカル君はメキシコからリオグランデ川を渡り、米テキサス州に着いたばかりだ。南米グアテマラからの1か月に及ぶ危険な旅を終えて涙を流し、腹をすかし、おびえている。(写真は単身でグアテマラを出発、メキシコからリオグランデ川を渡り、米テキサス州にやって来た12歳のオスカル君)
 「ベンゴ・ソロ(一人で来ました)」。オスカル君がスペイン語で発した米国到着の第一声だ。
 「何も食べるものがなかったので、こっちに来ました」と、やせ細った少年は茶褐色の大きな瞳でAFPに語る。
 就任から2か月以上がたったジョー・バイデン大統領にとって、メキシコ国境に押し寄せる移民の急増は最大課題の一つだ。
 バイデン氏率いる民主党政権発足以降、大人の同伴者がいない子どもや多くの家族が入国を許可されてきたが、政府や国境警備隊の収容施設には人があふれかえっている。
 オスカル君の希望は、ロサンゼルスに15年住んでいるペンキ職人のおじと再会することだ。グアテマラを出発する前に「ママに泣いちゃダメと言われたけど、泣いてしまいました」と、涙をこらえきれずに語った。
 一人息子のオスカル君を育てるシングルマザーの母親は、新型コロナウイルスの感染拡大で清掃作業員の職を失った。

■「より良い暮らし」
 米国への旅で最悪だったのは、メキシコ国境近くで他の移民と一緒に12時間、トレーラーの中に詰め込まれたときだ。「暑くて、みんな気絶し始めました」。オスカル君も気を失ったが、誰かが水をくれたおかげで助かった。
 旅の途上で一人、友達ができたのは良い思い出だが、今では行方が分からない。「あきらめちゃダメだ、神様のご慈悲とともにやり遂げようって言ってくれました。あっち(米国)ではより良い暮らしがあるんだって」
 米国では「勉強することができる。ママを連れてくる方法を学ぶんだ」とオスカル君は言った。
 AFPは3月27日の夜、正規の書類を持たない70人以上の移民がリオグランデ川を渡り、ここテキサス州ローマに次々と到着したのを目撃した。ほとんどがグアテマラかホンジュラスから来た移民で、2人だけルーマニア出身だった。そのうちの二十数人が同伴者のいない子どもや思春期の少年少女で、最年少は7歳だった。
 移民らは到着後、やぶに囲まれた砂地の道を1キロ以上歩き、待ち受けていた国境警備隊員に身を預けた。
 この小道には、移民らが落としたり捨てたりしていった、それまでの暮らしがしのばれる品々が散乱していた。例えば、川を渡る際に密入国業者に与えられた身元識別用のプラスチック製ブレスレット、靴の片方、ウエットパンツ、赤ん坊のがらがら、ホンジュラスの紙幣などだ。
 当局は、未成年者については家族と再会できるよう尽力する。難民申請のための聴取を待つことになる家族もいれば、国外退去を迫られる家族もいる。
 単身で到着した成人はすべて国外退去処分になると、米政府は告げている。時に入国者が一晩で数百人に上ることもある。こうした光景は地元の住民にとって日常茶飯事だという。
 共和党のドナルド・トランプ前大統領は、全長約3200キロのメキシコ国境を封鎖しようとした。同党は、民主党のバイデン現大統領が政策転換したために移民の殺到を招いていると非難している。

■子どもは送還しない
 バイデン氏はトランプ氏の移民政策の多くを破棄する方向だが、国境を開放しているわけではないと主張する。正規の書類を持たない入国者のほとんどは直ちに国外退去させるとも述べている。
 ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はテレビ番組フォックス・ニュース・サンデーで「18歳未満の子どもたちを危険な旅に追い返すことはしない」と言明した。
 サキ氏は「それは、彼らが米国にとどまる許可を得たということではない」とも付け加えた。「われわれは彼らを人道的に扱い、それぞれのケースを審査する間、彼らに安全な場所を確保したい」
 コロナ禍で一時鈍化した米国への不法入国者数は、今年2月には10万人近くに上り、2019年半ばの水準に戻っている。うち単身で入国し、当局に身を預けた未成年者は前月比28%増の9400人以上だった。当局はさらに増加が続くと予想する。
 米国側に入ってすぐにAFPのインタビューに応じた十数人の移民希望者は、貧困や暴力、失業が主な理由で国を離れたと語った。コロナの感染拡大と最近彼らの国を襲ったハリケーンがそれに輪をかけた。
 何年も別れたままの親との再会を夢見る少年少女も多い。グアテマラから来たディエゴさん(17)は、携帯電話を借りて、生後わずか1か月のときに彼を残したまま米国に去った母親に電話をかけることができた。
 「母は泣きだしました。僕もです。17年も会っていなかったから」と言った。「心の中に大きな穴がある気がします。もう一度、母の愛でその穴を埋めたいです」【翻訳編集AFPBBNews】

〔AFP=時事〕(2021/04/13-15:19)
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