50年後のインフラ維持管理に向けた自治体職員の育成と簡易で効率的なシステムを北陸で先行開発。
【9つの高等教育機関が連携して研究体制を構築】
50年後のインフラ維持管理に向けた自治体職員の育成と簡易で
効率的なシステムを北陸で先行開発。全国へと展開を目指す
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第3期 研究開発プロジェクトの一環
金沢工業大学はこのたび、北陸を中心とした高等教育機関と研究体制を構築し、老朽化が進む地方公共団体所管のインフラ構造物の維持管理に向けた自治体職員向け人材育成プログラムと、使いやすく効率よく維持管理ができるデジタル版手引の研究開発を2023年11月から開始しました。
自治体所管のインフラ構造物は老朽化が進み、その対応は喫緊の課題となっています。一方でインフラ・メンテナンスに携わる自治体職員むけ人材育成プログラムや、点検→診断→措置必要の有無の判断という一連のプロセスを簡易に行えるシステムは、全国的にも無いのが現状です。
北陸地方は、市町村との官学連携体制が整備されているとともに、各高等教育機関の強みをあわせた総合知に基づく多角的な研究開発が可能です。このたび、金沢工業大学環境土木工学科の宮里心一教授が研究開発責任者となり、長岡工業高等専門学校、金沢大学、富山県立大学、石川工業高等専門学校、福井大学、長岡技術科学大学、岐阜大学、宇都宮大学によるプロジェクト研究体制を構築。北陸地方で実装に向けた実証研究を、先行事例として進め、全国への展開を目指します。
当研究は内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第3期(2023年-2027年度)で掲げられている「スマートインフラマネジメントシステムの構築」のサブ課題C「地方自治体等のヒューマンリソースの戦略的活用」の一環として行われるもので、研究開発の完成は2027年度中を予定しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202312124171-O2-4vMLBv7f】
【市町村における2060年問題】
新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県飛騨地域内の市町村が管理する橋は約35,400橋にのぼります。こうした橋は老朽化が進み、修繕や更新を必要とする橋が増加する一方で、市町村が橋の維持管理に充てることができる予算額は年々減少傾向にあります。
この対策費用が急激に増加するのは2060年前後と見込まれています。このため2060年までの長期的なスパンで、今後修繕すべき橋と修繕不要の橋を戦略的に選択することによる予算の平準化と、限られたヒューマンリソースでの業務の効率化が求められています。
また北陸三県の市町村へのヒアリングを行った結果、日常の維持管理はできるが、数十年先の戦略を立てられる人材は不足しているため、その間に塩害等によりインフラ劣化が進行しているといった現状や、容易に点検や診断および必要な措置が取れる一連の手引が求められていることがわかりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202312124171-O3-7pMQ578s】
塩害で劣化した能登にある短支間橋の事例
【当プロジェクトが目指すもの】
当プロジェクトが目指すものは次の3点です。
(1)数十年先のメンテナンスを視野に入れた戦略的維持管理ができる人材育成
プロジェクトでは、今回開発する教育プログラムにより、データを活用した戦略的維持管理ができる人材育成を目指します。さらに人材育成にあたっては、学習意欲を向上するためにポジティブ心理学の導入や、ARやVRを活用したデジタル教育基盤を整備。臨場感がある学習ができるよう研究開発を進めます。
(2)デジタル版手引の開発
プロジェクトでは、人材育成とともに、コンクリート橋やトンネル、舗装等の維持管理や予防保全を効率よく、かつ高度に行えるデジタル版手引(システム)の開発にも取り組みます。
システムでは、設計図から得られる値(寸法、配筋、配合等)や、海からどれだけ離れているのかといった飛来塩分環境の基礎データ、目視での状況などを含む点検データをタブレットに入力すれば、点検の直後に安全度や危険度といった診断結果や必要に応じて措置方法も表示されるようにし、点検→診断→措置の時間短縮とコスト低減に寄与します。当システムは向こう3年間での構築を目指します。開発された技術は10~15市町村で実証実験を行い、検証をすすめるとともに、公開デモや講習会を通じて市町村職員に紹介し、デジタル教材としての導入をはかります。
(3)仮想空間上で50年後の措置の必要性を判断するシステム開発
さらにデジタルツインやAI技術を活用することで、現在のマップと50年後のマップを仮想空間上で重ねることにより、各市町村における個々の橋梁の安全度、危険度を表示。橋梁を通る道路の将来の利便性も地図上に表示することで、どの橋梁が早めに修復が必要かわかるようにします。またあまり使われない橋梁で代替ルートがある場合は将来的に無くすといった50年先を見据えた戦略的維持管理ができるようにします。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202312124171-O1-g0gBe5bm】
現在のマップと50年後のマップを仮想空間上で重ねることでどの橋を修繕すべきか判断できるようにする
【スマートインフラマネジメントシステムの構築について】
「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」とは、内閣総理大臣のリーダーシップの下で、科学技術・イノベーション政策の推進のための司令塔として、わが国全体の科学技術を俯瞰し、総合的かつ基本的な政策の企画立案及び総合調整を行う「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」が、社会的課題の解決や日本経済・産業競争力にとって重要な課題を設定し、基礎研究から社会実装までを見据えて一気通貫で研究開発を推進するもので、第1期(2014年-2018年度 課題数:11課題)、第2期(2018年度-2022年度 課題数12課題)に続き、2023年度からは第3期(2023年-2027年度)が進められています。
特に第3期ではSociety5.0 の実現に向けてバックキャスト(未来から逆算して目標や計画を立てる戦略的思考)により14課題が設定されました。
「スマートインフラマネジメントシステムの構築」は、この14の課題の一つで、Society5.0の実現を目指して「未来のまち」「未来のインフラ」「未来の建設技術」の構築に資する技術開発・研究開発に取り組みます。インフラ・建築物の老朽化が進む中で、デジタルデータにより設計から施工・点検、補修まで一体的な管理を行い、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを推進するシステムの構築をミッションに掲げています。
さらに当「スマートインフラマネジメントシステムの構築」には、
【A】革新的な建設生産プロセスの構築
【B】先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」
【C】地方自治体等のヒューマンリソースの戦略的活用」
【D】サイバー・フィジカル空間を融合するインフラデータベースの共通基盤の構築と活用
【E】スマートインフラによる魅力的な国土・都市・地域づくり」
という5つのサブ課題があり、この度、金沢工業大学が中心となって研究開発を進めるのがサブ課題Cの「地方自治体等のヒューマンリソースの戦略的活用」です。
人材育成・教育にかかる全国レベルの共通基盤により、多様なスキルを持つ人材の参入、リカレント、リスキリングを促進し、労働力不足の解消と質的向上を図ることを目指しています。
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