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平和RE Research Memo(3):分配金は11期連続でスポンサー変更後の最高値を更新


■平和不動産リート投資法人<8966>の業績動向

1. 2021年5月期の業績概要
2021年5月期における国内経済は、コロナ禍の影響で、大都市圏を中心とした2度の緊急事態宣言の発令、及びその後の延長等により、経済活動が抑制される動きが続いた。さらに、感染力の強い変異株による感染が拡大しており予断のできない状況が続いている。また、米中貿易摩擦やコロナ禍に伴う経済活動の停滞が長期化しており、海外経済の不透明感も継続している。

このような環境下、2021年5月期(第39期)決算は、営業収益6,730百万円(前期比4.8%減)、営業利益3,309百万円(同10.0%減)、経常利益2,916百万円(同11.0%減)、当期純利益2,916百万円(同11.0%減)となった。物件譲渡益が485百万円減少したことから減収減益となったものの、物件取得に伴い期初予想を上回って着地した。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益とほぼ同水準となっている。

2021年5月期の外部成長戦略としては、HF高輪レジデンスを譲渡する一方、東菱ビルディングなどの取得を行うことで、2021年11月期以降の収益の段階的な向上を見込む。また2021年11月期初払込を目指した公募増資の取り組みを推進したことで、総額86.9億円のエクイティ調達を実施し物件取得資金に充当した。内部成長戦略としては、2021年5月期のポートフォリオ全体の稼働率は97.45%と高水準を維持していることに加え、稼働率の高位安定に伴い、NOI利回り(実質利回りとも言う、(賃貸事業収入−賃貸事業費用)(年換算)/期中平均帳簿価額×100で計算)も5.35%と、引き続き高水準を維持している。また、財務運営では、資金調達コストが過去最低水準を更新し、健全な財務体質を堅持している。この結果、実力ベースの収益力を示す、賃貸収益ベースの1口当たり当期純利益(譲渡益等の一時的要因を除く)は、前期比126円増となった。なお、譲渡益の一部を内部留保することで将来の分配金支払原資を拡充した。以上から、1口当たり分配金を期初予想通りの2,800円(前期比120円増)とし、11期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。

コロナ禍に対しては、同REITは分散の効いたポートフォリオ(109物件)、潤沢なフリーキャッシュ(70.5億円)、十分な内部留保(54.8億円)、低い鑑定LTV(40.2%)、コミットメントライン(70.0億円)など、不測の事態に備えて十分なリスク耐性を備えている。なお、コロナ禍による影響については、オフィスの賃貸事業利益への影響は軽微にとどまり、オフィスの稼働率は過去の平均水準を上回った。一方、レジデンスは繁忙期を迎え(レジデンスでは5月期は3月・4月を含む繁忙期となるが、11月期は非繁忙期)、キャンペーン実施等により稼働率はコロナ禍前の水準まで回復した。

2. 財政状態
2021年5月期末の財政状態は、総資産190,986百万円(前期末比1.1%増)、純資産95,183百万円(同0.3%増)、有利子負債88,067百万円(同2.2%増)であった。平均調達金利は0.747%と過去最低を更新した。また、有利子負債の平均調達年数は7.06年であった。今後も、主要金融機関との良好な関係のもと、比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、緩やかな調達コストの低下が見込まれる。なお、長期借入金固定化比率は83.0%と高く、将来の金利上昇リスクに備えている。また、コロナ禍の影響を考慮し、大手都銀からのコミットメントライン(必要な時に借りられる、銀行からの融資枠)を2020年11月期より70億円に拡大し、不測の事態にも対応できるように、手許流動性を拡充している。

一方、鑑定LTV比率(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は40.2%と良好な低水準を維持している。同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って同比率は低下傾向にあり、借入余力が拡大したことで、より機動的な物件取得が可能になっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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