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コラム【アナリスト夜話】:加速する『新たな地政学』のタネ(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)


先週成立した米「国防権限法」では、“宇宙軍”の発足が話題になりましたが、その裏で中国への対策も目立ちました。そこに新たに盛り込まれたのが、「中国の北極圏での活動を注視する」という項目です。

近年、北極圏を巡る覇権争いが熱気を帯びています。この地域には、世界のLNGの3割、石油の13%が眠っており、日ロの1兆円を超えるプロジェクトも始動しています。

海底資源と並んで注目されるのが「北極海航路」です。今年の10月、中国船が欧州から苫小牧港までの運行実験に成功しました。実用化されれば、欧州との輸送距離を3-4割も圧縮できるため、中国は、北極海航路を「氷上のシルクロード」と名付け、開発に注力しています。韓国もこの航路への文大統領が期待をにじませる発言を行っています。北極圏では、他の地域の2~3倍の速度で温暖化が進んでいることが、こうした思惑を刺激しているようです。

一方、温暖化を歓迎するような戦略への批判も否めません。先月、ナイキは、温暖化に反対するため、北極海航路は使わないと宣言しました。今月上旬には、その名の通り北極圏に生息するホッキョクグマが、餌を求めてよろよろと700キロを大移動してきた姿が世界の同情を集めています。

とはいえ、中国の北極海ルートが実現すれば、日本の至近距離を通過することになります。海洋国日本としては、環境問題には配慮しつつも、動きを加速せざるを得ないでしょう。新たなリスクであるとともに、興味深い機会が拡大しそうです。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:12/23配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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