視覚障害者のための「鏡を使わないメークレッスン」が教えてくれたこと。 ~言語化された色のイメージ、手指を使うメーク法~
- 2022年11月30日 17:00:00
- マネー
- Dream News
一般社団法人 ダイアローグ・ジャパン・ソサエティでは、多様性を受け入れより豊かな社会を目指す企業と協働プロジェクトを行っている。その一環として、株式会社ポーラ(本社:東京都品川区、社長:及川美紀)による、ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」にて、視覚障害者、聴覚障害者のアテンドスタッフに向けて、メークレッスンが実施された。レッスンを受けたのは、10月7日、11月18日にダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)アテンド7名、同21日にダイアログ・イン・サイレンス(以下DIS)アテンドとインタープリター16名。メークを担当したのは、新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」の美容コーチをはじめ、ポーラスタッフだった。今回は、DIDアテンドへのメークレッスンを中心にレポートする。
ダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドへの鏡を見ないメークレッスン
レッスンを受けたDIDアテンドは、はち、たえちゃん、まりちゃん、はーちゃん、ミキティ、あっけちゃん、バリ・ジョニー(名前はアテンドネーム。DIDの暗闇では参加者全員が対等になるために、ニックネームで呼び合う)。7人はそれぞれ、アテンド以外の職業でも人前に立つ機会がある。たえちゃん、はーちゃん、ミキティ、はちは声楽、バリ・ジョニーは役者として、舞台に立つときにメークは必須だ。舞台ではないが、鍼灸師をしているあっけちゃんは、患者さんに清潔感をもってもらうためにメークをするという。
ただ、はーちゃんとバリ・ジョニーはメークが苦手。あっけちゃんは、メークは好きだったけれど、マスク生活によって仕事以外ではほとんどしなくなってしまったと言う。ミキティは積極的にメークを楽しみたい派だ。目の見えない人のメークとの付き合い方は、それぞれ違う。
見えないからこその優れた手指の感覚が活かされるメーク法
実際のメークレッスンで使われたアイテムは、すべて手指を使って行われた。スキンケアはもちろん、チューブタイプのファンデーション、アイカラー、アイブロウ、チーク、リップまで。両手の指にそれぞれアイテムを少量ずつとり、スタッフの声かけに従って塗っていく。目の際に細く引くアイラインは、小指の爪の先を使った。
フィニッシングパウダーを乗せるときのパフ以外、道具類はいっさい使わない。色を重ねて色の深みを出していくには、丁寧で繊細な手指の動きが必要だ。細かい点字を読むことが可能なほどの手指の優れた感覚をもって、7人は全員きれいにメークを仕上げた。
色のイメージをことばで伝える
中途視覚障害者の場合は色の記憶が残っていることもあるが、視覚障害者は色をことばで理解している。言語化されることによって色をイメージするのだ。
今回使ったアイシャドウは3種類の中から、それぞれが選んだ。ポーラスタッフが説明した色のイメージは次の通り。
パープル系…女性らしさ、エレガント
ブラウン系…ナチュラル、大人っぽい。
ブルー系…涼やか、シャープ
自分がなりたいイメージに合わせて色選びをするのは、視覚障害があってもなくても同じ。ただ、目で色を感じる人にとっては、なりたいイメージと、自分が選びがちな色によってかえってギャップができてしまうことがあるのかもしれない。言語化された色によって選んだメークは、仕上がりも本人たちが希望したイメージ通りとなったようだった。
レッスン後のDIDアテンドの感想「メークしなくては…ではなく、積極的に楽しみたくなった!」
DIDアテンド4人のメークレッスン後の感想は次の通りだった。
あっけちゃん
マスク生活ですっかりメイクをさぼっていたので久々のフルメイクでした。アイシャドウはパープル系でやわらかく、チークとリップはローズ系ではっきりした色合いをブレンド。アイライナーはこれまで躊躇していたけれど、これで自信がついたので今後もトライしたい。
バリ・ジョニー
舞台でメークはするけれど、自分でしたことはほとんどありませんでした。実は、私にとってメイクは「欠点を隠すもの」というようなネガティブなイメージがあったのです。でも、今回のレッスンで自分の顔に自信を持てるようになりました。自分ってこんな目の形だったんだ、とか、自分が好きな色の青が似合うと言ってもらえてとても嬉しかったのです。3時間近く、自分の顔と向き合って、それをサポートしてくださるポーラの皆さんがいてとても褒めてくださる。こんなに楽しい時間が過ごせるとは、全く予想していませんでした。これからはメークを楽しんでいきたいです!
はーちゃん
メークは苦手意識が強かったのでしっかりメークしたのは久しぶり。指を使ってたくさんのことができるとわかり、またスタッフの方から「失敗しても拭きとればいい」と言われて気が楽になりました。目元のブラウン系、真っ赤なリップなど、普段使わない色を選んでもらって楽しかった! メークをしないと恥ずかしい、ではなくて、楽しんでグレードアップしたいと思いました。
みきてぃ
メークすると、もちろん顔は華やかになっていると思うけど、心も華やかになります! メークは大好きな一方で、躊躇することは多かった。特に眉毛! これから、習ったことを練習したいと思います。 パープル系はふだん使わない色でしたが、やわらかく見えると知りました。カラーアイテムとして足していきたいです。
今回のメークでは、鼻やあごなどにはシャドウを入れていない。それでも、だんだんにメークが完成に近づくにつれて、4人の顔は立体的になっていった。それはただ色を乗せたからだけではなく、ポーラスタッフの声かけによって、「これが似合う」という自信になり、心からメークを楽しんでいる様子が顔の表情に現れてくるようだった。
ダイアログ・イン・サイレンスのメークレッスンには男性も参加
一方、ダイアログ・イン・サイレンス(DIS)の聴覚障害者のアテンドは、鏡を見ることはできるけれども、レッスン講師の声は聞こえない。視覚障害者のレッスンとは違う工夫がたくさんあった。メークのポイントが視覚的にわかるようにプロジェクターで映し出され、リアルタイムで話している内容がテキストで表示され、手話通訳がついている。
DISアテンドのかりんは、「メークやおしゃれは大好きですが、メークレッスンというものを生まれて初めて受けることができました! なぜならば、通常のメークレッスンは99%聞こえる人が対象だからです。今回は手話通訳と文字通訳が用意され、説明内容がすべて理解できる、こんな当たり前のことがとても嬉しく、はしゃぎまくったメークレッスンでした。」と話す。
また、男性のスタッフもメークを体験。マスカラを手に「触るのもはじめて」と言う声もあがる中、ファンデーションを塗り眉を整えるだけでも印象がキリッとすることなども実感していた。色鮮やかなメークを楽しむ男性アテンドの姿もあった。
視覚障害や聴覚障害者があってもなくても、いきいきと自分らしくメークをすることは、その人の魅力を引き出し、さらに自信を授けてくれるものだということを、教えてくれるメークレッスンとなった。
【ポーラの「サスティナビリティ方針」】 https://www.pola.co.jp/company/sustainability/
ポーラは、2029年に迎える創業100周年に向けて、誰もが「美しく生きる」ことができる社会を目指し「サスティナビリティ方針」を発表しています。そこで定めたSDGsの目標には、「ジェンダー・年齢・地域格差・様々な“壁”の解消」、「多様な人が、健康に、イキイキと活躍する機会の創出」があります。取り組みの一つとして、視聴覚が不自由なお客さまへのご案内やエステサービス、分析、カウンセリングなどのガイドラインを定め、美容職のダイバーシティ推進に向けて順次導入・強化していきます。ポーラはこれからも、誰もが自分の可能性を諦めず、多様な価値観を尊重し、全ての人が活躍できる社会を創造します。https://www.pola.co.jp/wecaremore/
【ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」】 https://taiwanomori.dialogue.or.jp/
みえないからこそ、みえるもの。聞こえないからこそ、聴こえるもの。老いるからこそ、学べること。 目以外の感性を使い楽しむことのできる「ダーク」では、見た目や固定観念から解放された対話を。表情やボディーランゲージで楽しむ「サイレンス」では、言語や文化の壁を超えた対話を。そして「タイム」では、年齢や世代を超え、生き方について対話をします。 世代。ハンディキャップ。文化。宗教。民族。世の中を分断しているたくさんのものを、 出会いと対話によってつなぎ、ダイバーシティを体感するミュージアム。 この場で生まれていく「対話」が展示物です。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000271039&id=bodyimage2】
配信元企業:一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ
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