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「ごみ置き場まで行けない…」高齢者につらいごみ出し 自治体支援は


 ごみ置き場までごみを持っていくのがつらい――。高齢で体が不自由になり、自宅からごみ袋を持ち出せない高齢者が各地で増えている。高齢化が今後ピークを迎える中、国や自治体も支援に乗り出すが、人手や財源は限られており、支援のあり方をめぐって試行錯誤が続いている。

 午前8時半前、北九州市小倉南区の女性(80)がごみ袋を手に一軒家の自宅から外に出た。地域で決められたごみ置き場までの距離は10メートル程度だが、2、3歩進んでは、重さに耐えられずにごみ袋を路上に置く動作を繰り返した。

 女性は、生活の一部で手助けが必要な「要介護1」の夫(88)と2人暮らし。週2回の「家庭ごみ」など、ごみ出しは女性が担うが、足腰が弱っていて楽ではない。夫が使ったおむつもごみ袋を重くしている。

 ごみ置き場までは緩やかな下り坂になっていて、台車を使うのも危険だ。女性は「80歳を迎えて、年を感じる。ごみ置き場が近くにあるからまだ持って行けるけど、将来は分からない」と不安を口にする。

 65歳以上が人口の3割を超え、全国の政令市で高齢化率が最も高い北九州市。足腰が弱まるとされる75歳以上の人口は2020年の約15万6000人から、30年には約18万7000人と2割増えると見込まれる。エレベーターがない団地で階段の上り下りができなかったり、ごみ置き場までに坂道があったりして、ごみ出しが難しいと訴える人は増えている。

 高齢者が不安を抱く背景に、ごみ出し特有の事情がある。ごみ出しの時間は朝や夜が多く、日中にホームヘルパーなどの福祉サービスでカバーすることが難しい。一方、核家族化や地域コミュニティーの希薄化で、周囲に助けを求められず孤立する人もいる。

 市内では、社会福祉協議会やシルバー人材センターが高齢者らのごみ出し支援をする。だが、ボランティアは減少し、近くに支援会員がいないこともある。

 市は14年から週1回の指定日に、市民が玄関前にごみ袋を出せば市職員が回収する事業を開始。自力で日常生活を送るのが困難な「要介護2」以上や障害福祉サービスを受給する単身世帯が対象だったが、21年からは、一定の要件を満たし市環境局長が認める人も対象に加え、22年度は594世帯が利用する。

 担当者は「施設に入らず、自宅にいたいという要望の増加など、社会の変化もある。利用者数に応じた収集体制を作っていく必要がある」と課題を口にする。

 国の人口推計によると、全国の75歳以上の人口は20年の1860万人から30年には2261万人とピークを迎え、その後も全人口に占める割合は増え続ける。

 総務省は19年から、自治体のごみ出し支援の経費の半分を手当てする。環境省も21年に自治体向けに支援の手引を作成した。支援を導入する自治体は18年度の23・5%から20年度は34・8%に拡大している。

 横浜市や大阪市は、ごみ出しが困難で親族や近隣住民の協力が得られなければ、65歳以上世帯は玄関前収集をする。利用世帯は23年3月で横浜市が約9400世帯、大阪市が約1万1000世帯と多い。両市とも収集業務が直営で財政規模も大きいため、手厚い支援が可能となっている。

 横浜市の澤田亮仁業務課長は「ごみ収集を担う職員は1000人以上いて、回収ルートの工夫などもしている。希望者にはごみが出ていなければ安否確認もしている」と話す。

 もっとも、ごみ収集に割ける人的余裕がない自治体の方が多数だ。

 仙台市は、ごみ出し困難者のごみ回収を町内会など地域コミュニティーに担ってもらい、家庭ごみの場合、1世帯当たり1度の回収に140円を交付する。担当者は「ごみ出し業務を外部に委託しており、個別収集にすれば経費が膨大になる。行政にできることには限界がある」と吐露する。

 東京都日野市は、ごみ出し困難者向けに指定回収日より前のごみ出しを認めるシールや箱を配布。ヘルパーによるごみ出しを可能にする。ただ、ごみが外に長時間放置されることに不快感を抱く人もおり、理解をどう得るかが課題となる。

 北九州市立大の松本亨教授(環境システム)は「ごみ出し支援は、高齢者がけがをしたり、ごみ屋敷になったりするのを未然に防ぐなど、結果的に自治体としてのコスト減につながる側面もある」と強調。「各自治体で抱えている状況は違い、先行事例から学び取り入れることが大事だ。IT(情報技術)を活用し高齢者のごみ回収のコスト削減を試みた自治体もあり、工夫が求められる」と指摘する。【宗岡敬介】

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