パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡り、ロシアは双方に即時停戦を訴えている。その背景には、イスラエルへの支持表明で一致している西側諸国をけん制する狙いが見て取れる。ただしロシアは近年、イスラエルとも友好関係を結んでいることから同国への非難も避けている形だ。
ロシアのラブロフ外相は9日、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長とモスクワで会談。「あらゆる戦闘行為を即時停止し、交渉へと移行するように共に訴える。我々は、何百人ものイスラエルとパレスチナの人々が犠牲になったことを深く憂慮している」と哀悼の意を表明した。
一方で、「パレスチナ問題に関して、何十年もその解決策が見つかっていない理由についても特別な注意を払う必要がある」と強調した。「イスラエルはテロリストに打ち勝ち、壊滅させなければならない」とだけ求めるのは「深刻な問題がある」と指摘。ハマスへの非難を続ける欧米諸国への批判をにじませた。
また、イスラエルで暮らすロシア人の安否にも言及し、「現状において彼らの今後について憂慮しており、ロシアへの脱出を望む人たちには避難の用意がある」と述べた。
ロシアの前身のソ連は中東情勢に関連し、パレスチナをはじめとしたアラブ諸国を支持する立場を取ってきた。しかし冷戦終結後の中東情勢が複雑になる中、ロシアはシリア政策でイスラエルと協調することなども増えている。【山衛守剛】
