映画を見始めて少し経って、ん?この感覚は何かに似てるな、と思ったら一人旅をしている時の感覚だった。

少なくとも自分は一人旅をすると、誰かと旅をする時以上に、世界の光、色、音、動きを、細やかに敏感に新鮮に自分の五感が受け取っているような感覚を覚える

それは誰かとの共同作業ではなく、自分一人で外の世界と向き合うからかもしれない。

このアニメ映画は一切のセリフを廃することで観る者をその世界にシンプルに向き合わせ、その美しさを語り始める世界の饒舌な声に耳を傾けさせる。

もちろんこの映画で描かれる主人公の体験は、自分の一人旅なんかとは比べ物にならないレベルの美しい非日常だ。

飛行機事故で生き残った主人公の少年は、発見したバイクで島の縦断を試みる。

当初から彼をゆっくり追いかけ続ける巨大で不穏な黒い影、旅をともにすることになる飛べない黄色い小鳥、変化に富んだ美しい島の景色、時折現れる純朴な小動物たち――

どこかぎこちないアニメーションは逆に物語の世界観への没入度を高め、少年の表情や感情の乏しさはむしろ観る者が少年に自己投影することをより可能にしている。

唯一の相棒とも言うべき小鳥の存在も大きい。その可愛らしい仕草と小さな宝物のような変身願望。

既に世界中で絶賛され多くの映画賞にも輝いてる本作は、8歳からアニメ制作を始めていたというラトビアのギンツ・ジルバロディス監督が制作した。

驚くべきは、ギンツ監督は22歳から3年半をかけて本作をたったひとりで完成させたという事実。

少年が孤独に世界と向き合い勇気をもって島を駆け抜けたように、監督もまた並々ならぬ孤独をそれを超える勇気で何度も乗り越えたのだろうか。

監督の側にも「黄色い小鳥」がいたのか少し気になったが、きっといたはずだと思うと何だかこの映画がまた少し好きになった。

 

『Away』 あらすじ

飛行機事故で、たった一人生きのびた。少年は森で地図を見つけ、オートバイで島を駆け抜ける。黒い影から逃れて、小鳥とともに。

■監督・制作・編集・音楽: ギンツ・ジルバロディス
■配給:キングレコード
■配給協力:エスピーオー 

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記事名:「【レビュー】静かな饒舌さで描かれる美しき世界と、生きることの孤独と勇気―驚異のアニメーション映画『Away』