スマートフォン用のAR開発を行うZapparが4億円の資金を獲得

コカ・コーラのARキャンペーン

UploadVRがARを扱うZapparによる資金調達の成功を報じた。その金額は375万ドル（4.2億円）だという。

Zappar

Zapparは、ARを利用した広告の制作を手がける企業である。これまでに、コカ・コーラのような有名ブランドや日本でも人気のバンド、One DirectionのためにARコンテンツを提供している。

雑誌やフライヤーのような印刷に埋め込まれた二次元コード（バーコードやQRコードのようなもの）に反応し、スマートフォンの画面上に3Dのオブジェクトが登場する。内容はポスターが動き出すものや関連情報が表示されるもの、ちょっとしたゲームができるものまで様々だ。

見た目のインパクトがあることはもちろん、一枚の広告では盛り込めないような情報量で消費者に商品やブランドをPRすることができるのが特徴となっている。イメージとしては、商品に印刷されたQRコードからメーカーのホームページにアクセスするのと近い。こちらの方がビジュアルが未来的なだけである。

スマートフォンの画面内で絵が動くだけではすぐに消費者が飽きてしまうが、操作に反応するようにすれば注目を得られる時間は長くなる。長く広告を見てもらえれば、それだけブランドに親しみを感じるようになる効果が期待できる。

Zapperは自社でARコンテンツを制作して提供している企業だが、それだけではない。2016年にはZapWorksと呼ばれるARのための開発ツールをリリースした。

ZapWorksは、ARアプリの作成にも使える一般的なゲームエンジンといった位置づけのソフトウェアではない。AR開発に使うことを前提に設計された専用ツールである。

開発者はZapWorksで3Dモデルを作成し、スマートフォンのカメラを使って現実を拡張できる。プラットフォームの扱いに習熟すれば、これまでにZapparが行ってきたようなAR広告をオリジナルで作成することもできるはずだ。

ZapparはARを商品やブランドのPRに使用してきたが、ZapWorksの機能は広告の作成にとどまらない。インタラクティブなARアプリケーションの作成が可能なので、ゲームや実用ツールの制作に使うこともできる。

ZapWorksの紹介ページに挙げられている例としては、動きのあるダイレクトメールがある。

普通のチラシをポストに入れてもすぐに捨てられてしまう可能性が高いが、こんなダイレクトメールならば内容を見てくれるかもしれない。

今回の投資によって、広告企業としてのZapparがより国際的な大企業へと成長していくことが考えられる。サイト上で公開されている過去の作品を見れば分かるように、Zapparの広告が利用されているのは主にアメリカとヨーロッパである。今後はアジア圏、特に中国への進出が進みそうだ。

企業が持つ資本力も重要だが、ZapparはスマートフォンのアプリケーションとしてAR開発を行っている。そのため、スマートフォンの進化も見逃せない。

現在、一般的なスマートフォンには立体感を検知できるようなセンサーが無い。しかし、Google Tango対応スマートフォンが増えれば奥行きを認識できるカメラが普通になるだろう。そうなれば、スマートフォン用のARアプリケーションは今以上に高性能になる。

スマートフォンでAR開発を行うことには、利用できるユーザの多さという大きなメリットがある。それに加えて、ユーザの持つ端末の性能が比較的早く向上していくこともメリットだ。

多くのユーザは、スマートフォンを数年おきに買い換える。頻繁にスマートフォンのアプリを利用するならば長くても2年程度で買い替えているのではないだろうか。バッテリーの劣化や相対的な処理速度の低下が起きるため、気に入った機種だとしても5年10年と使い続けることはできないだろう。

スマートフォンならば、誰もが自然に買い替えを行う。これで新しい技術が広まってくれるのは、コンテンツを作る側にとっての選択肢を広げることになる。

スマートフォン向けコンテンツでは、「最新ヘッドセットが持つ機能を利用したコンテンツを作りたいが、まだ買い替えが進んでいないから利用できるユーザが少ない」といった状態に陥ることが少ないはずだ。

技術と資金を揃えたZapparは、今後どのような広告を作ってくれるのだろうか。また、ZapWorksを利用した他の開発者によるアプリケーションの増加も楽しみだ。

参照元サイト名：Zappar

URL：https://www.zappar.com/

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