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韓国の格差地帯を歩く…ソウルの色街「清凉里588 オーパルパル」解体現場を訪ねて【村田らむ】




大阪の風俗街(ちょんの間)として有名な飛田新地で話を聞くと、最近では中国からのお客さんが急増しているとのことだった。中国人らしく、風俗でも爆買いをしていくらしい。ちょんの間は1プレイ20分と短いのがお約束だ。中国人は、何プレイぶんも一気に買うという。例えば4時間ぶんを買うとすると14万円を超えるが中国のセレブには痛くも痒くもない金額なのである。


訪日客消費は西高東低=関空の格安便増寄与:時事通信 18年4月29日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018042900292&g=eco


僕が大学を卒業して東京にやってきた22〜3年前は、逆に海外に女を買いに出かける人が多かった。オジサンがアジア旅行に行くと言っていると、


「ははん〜、さては海外で売春をしてくるつもりだな」


と疑われたものだった。実際、編集者や著者がニコニコと「海外ゴルフツアー」に行く相談をしているのを聞いたこともある。ゴルフツアーと言いつつ、海外で売春をするわけだ(もちろん少しはゴルフもするんだろうが)。


デビュー前後の僕には当然、売春どころか海外に行くおカネがなかった。諸先輩方が顔を脂でテカらせながらする話を聞いていた。


そんな会話の中に「オーパルパル」という単語が出てきたのを覚えている。


どうやら、韓国の性風俗街のことらしい。その時にアガシという単語も覚えた。朝鮮語で“お嬢さん”という意味だが、風俗嬢という意味合いで使っていた。


チョンニャンニ オーパルパルは、清凉里 588と書く。つまり住所である。


オーパルパルの風俗は日本で言う所のちょんの間のシステムだ。ただし、見た目はオランダの飾り窓に似ている。


一階はガラス戸で、色っぽい格好をしたアガシたちが道行く人にアピールをする。


僕はオーパルパルに行ったことはなかったのだが、韓国の他地域の同じシステムの風俗街は見たことがある。みなスタイルはとても良かったが、顔は分かりやすく整形顔の女性が多かった。どの子も、20センチほどの厚さがある分厚い靴を履いていたのが印象的だった。


直接交渉でアガシを買った後は、別室で本番行為をする。値段は安めだが、ただしプレイ時間は20分ほどと短い。


2016年5月、清凉里駅に降りた。



オーパルパルは5月で再開発のために解体されると聞いていたので、ギリギリ最後の姿を見られるかと思って来たのだが、どうやら一足遅かったようだ。


駅から出た時から、薄く粉塵の臭いがした。かつて風俗街だった場所には布が被せられていた。すでに解体が始まっており、バラバラに壊されている。


奥に進むとまだ解体されていない店舗もあった。店舗の外には『ちょんの間は違法行為だ!!』と落書きがされており、店内には『国家権力で潰すのは違法行為だ!!』と反対の意見が書かれていた。石をぶつけられて砕かれたガラスや鏡も見られた。


数十年続いてきた風俗街ならではの軋轢があったのだろう。


夜は派手なネオンで照らされて怪しい雰囲気を漂わせていた飾り窓も、昼間に見ると、荒く作られたバラック的な建物だ。それでも表通りはまだキレイだが、裏通りに入るとスラムな雰囲気になる。屋根はボロボロで、電線が縦横無尽に走っている。巨大なダクトが建物から飛び出している。




そういう風景は大好物なので、しばらく裏通りを歩いて写真に収めた。すでに立ち退きは終わっているようで、人の姿は一切なかった。


取り壊されるのは風俗施設だけではなかった。同地区にある教会などの建物の取り壊しもすでに始まっていた。この土地には地上50階超の高層ビルが建てられる予定だという。


男たちが精を吐き出し続けた街は、数年後にはどこにでもあるシャレた都市になり、いつしか誰もそこがそういう街だったことを思い出さなくなるのだろう。



歩いていると町外れにまだ営業しているお店を発見した。ギリギリ再開発地域から外れた場所かもしれない。ただ、こんな雰囲気の中営業するとは大した根性だと思った。


店内にいた女性は腕にキレイなタトゥーを入れていた。こちらの視線に気がつくと、ニッと薄く笑った。



 

村田らむ <ライター / 漫画家 / カメラマン / イラストレーター>

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教、富士の樹海などへの体験取材、潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)など多数。

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