「なんでこんないいクルマが日本で普通に買えないんだ!?」



そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。



そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画、今回はホンダで最も長い十代48年の歴史を持つCセグメントカー「シビック」の、五代目より北米で販売されている「クーペ」をご紹介したい。



TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●本田技研工業

2ドアクーペというボディ形態は、スーパースポーツの世界でこそ今なお旺盛であるものの、プレミアムブランドではやや後退局面。大衆車ブランドでは風前の灯火であり、ラインアップから消滅したケースも珍しくない。



ホンダもその例外ではなく、北米ではプレミアムブランド「アキュラ」のスーパースポーツとして販売されている「NSX」を除けば、ホンダブランドの2ドアクーペは今や、今回ご紹介する「シビッククーペ」のみとなってしまった。

ホンダ・シビッククーペ(2016年モデル)のフロントまわり

そんなシビッククーペであるが、現行十代目クーペは4ドア「セダン」より約4ヵ月遅れて2016年2月に北米デビュー。十代目シビックはセダンとクーペ、後に追加された5ドア「ハッチバック」と、その5ドアをベースにしたホットバージョン「タイプR」とも、新開発のCセグメント車用プラットフォームを採用している。

(左より)ホンダ・シビックセダン、タイプR、ハッチバック。いずれも日本仕様前期型

ただし、「セダン」と「クーペ」、「ハッチバック」と「タイプR」でデザインの方向性が異なっている。「セダン」と「クーペ」が比較的流麗かつ落ち着いた雰囲気なのに対し、「ハッチバック」と「タイプR」はマッシブで角張った、三菱車のお株を奪うガンダムルックだ。

ホンダ・シビッククーペ(2016年モデル)のリヤまわり

ホンダ・シビッククーペ(2016年モデル)の運転席まわり

「シビッククーペ」はデザイン自由度が高く空力とボディ剛性の面でも有利な、独立したトランクを持つノッチバックの2ドアクーペボディを採用しているが、「シビッククーペ」にその有利を活かして「セダン」と同様の伸びやかなフォルムを与えたことを、筆者は大いに歓迎したい。

ホンダ・シビッククーペ(2016年モデル)のリヤシート
ホンダ・シビッククーペ(2016年モデル)のトランクルーム

「シビッククーペ」のデビュー当初のボディサイズは、全長×全幅×全高=4493×1798×1394mmと、低全高な「セダン」よりもさらに20mm低く、全長も137mm短い。なお、ホイールベースは2700mmで他のモデルと変わらず。荷室容量は「ハッチバック」(タイプR含む)の639~728L、「セダン」の416~428Lに対し、「クーペ」は337~343Lとやや小ぶりだ。しかし、6:4分割可倒式リヤシートを備えるうえ、トランクスルー開口部も大きいため、日常の買い物などで困ることはまずないだろう。そのうえ「クーペ」の後席は3人掛けだ。

ホンダ・シビックSiクーペ(2017年モデル)のフロントまわり

ホンダ・シビックSiクーペ(2017年モデル)のリヤまわり

だが、「ハッチバックやタイプRのようにマッシブなデザインにした方が、2ドアクーペのスポーティさを分かりやすく表現できるのでは?」という考えもまた、決して否定できるものではない。むしろ理に適っているとさえ言えよう。



そうした声もあったのか定かではないが、2017年5月に追加された高性能モデル「Siクーペ」には、同時発売された「Siセダン」ともども、「ハッチバック」と共通のフロントマスクが与えられた。

ホンダ・シビックSiクーペ(2017年モデル)の運転席まわり

ホンダ・シビックSiクーペ(2017年モデル)のセミバケットシート

なお、この「Si」には、専用チューンの1.5L直4ターボエンジンに6速MTのほか、電子制御ダンパーを備えた強化サスペンション、ヘリカルLSD、235/40R18タイヤ、大径ブレーキローター、リヤウィング、セミバケットシートなどが装着され、走行性能が大幅に引き上げられている。

ホンダ・シビックスポーツクーペ(2019年モデル)のフロントまわり

ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)のフロントまわり

その後2018年9月には「クーペ」、約1年遅れて2019年8月には「Siクーペ」のマイナーチェンジが行われ、より一層アグレッシブなフロントマスクに変更されているが、パワートレインの構成は基本的に変わっていない。

ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)の6速MT

「クーペ」には160ps/6500rpmと187Nm/4200rpmを発する2.0L直4NAエンジンにCVTまたは6速MTの組み合わせと、日本仕様の「セダン」とほぼ同じ176ps/6000rpmと220Nm/1700-5500rpmを発する1.5L直4ターボ+CVTがある。「Siクーペ」は、「クーペ」よりブーストアップされ208ps/5700rpmと260Nm/2100-5000rpmになった1.5L直4ターボと6速MTのみだ。

ホンダ・シビックスポーツクーペ(2019年モデル)のリヤまわり

ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)のリヤまわり

なお、「クーペ」で6速MTが選べるのは、マイナーチェンジ前は2.0L直4NAを搭載する廉価グレード「LX」のみだったが、マイナーチェンジ後は「Siクーペ」と同様のセンター出しエキゾーストが装着される2.0L直4NAの新グレード「スポーツ」のみに変更された。また「Siクーペ」はマイナーチェンジの際、6速MTの最終減速比が従来の4.105から4.350に低められ、加速性能重視のセッティングとなっている。

ホンダ・シビックスポーツクーペ(2019年モデル)の運転席まわり

ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)の運転席まわり

そして、このクーペの大きな魅力は、最も高価な「Siクーペ」(6速MT)でも2万5000ドル(約266万円)、「スポーツ」の6速MT車は2万1850ドル(約232万円)、最も安価な2.0L直4NAの「LX」(CVT)では2万1050ドル(約224万円)と、極めて安価なことだ。

ホンダ・シビックスポーツクーペ(2019年モデル)のフロントシート
ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)のセミバケットシート

例えば「Siクーペ」を日本に導入したとしても、ハッチバックの294万8000円を若干上回る程度の価格に抑えられるはず。「タイプR」がマイナーチェンジ前でも458万3700円(消費税10%)と、最早若者には手の届かない存在になっていることを考えても、手頃にワインディングやサーキットでスポーツ走行を楽しめる、程良く高性能かつスタイリッシュで実用的な2ドアクーペは、是非とも日本でも販売してほしいところだ。



「タイプR」のマイナーチェンジを10月、シビック自体のフルモデルチェンジも2022年に予定しているとなると、現実的にはこれからの日本導入は難しいことだろう。だが、次の11代目シビックは、「ハッチバック」とその「タイプR」のみとなる可能性が高い。だからこそ、今この「シビッククーペ」が欲しい!

■ホンダ・シビックSiクーペ(FF)*アメリカ仕様

全長×全幅×全高:4998×1863×1490mm

ホイールベース:2700mm

車両重量:1310kg

エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリンターボ

総排気量:1498cc

最高出力:153kW(208ps)/5700rpm

最大トルク:260Nm/2100-5000rpm

トランスミッション:6速MT

サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク

ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク

タイヤサイズ 前後:235/40R18 95Y

乗車定員:5名

車両価格:2万5000ドル(約266万円)
ホンダ・シビックSiクーペ(2020年モデル)

情報提供元:MotorFan
記事名:「 高性能モデル「Siクーペ」は208ps&260Nmの1.5L直4ターボ+6速MT、専用スポーツサスペンションやヘリカルLSDを採用