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いずれもスタイリッシュなスポーツオープンクーペだが、その乗り味は驚くほど違っていた【BMW8シリーズカブリオレ/アストンマーティンDB11ヴォランテ試乗記】


ラグジュアリーオープンの筆頭に挙げられるのが今回の2モデルだろう。流麗なデザインと快適なGT性能が魅力のアストンマーティンDB11ヴォランテ。そして最新の技術の粋を集めた豪華なBMW M850i xドライブ・カブリオレ。対照的な性格の2台の魅力を初秋の伊豆半島で味わってきた。




REPORT●吉田拓生(YOSHIDA Takuo)


PHOTO●小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)




※本記事は『GENROQ』2019年11月号の記事を再編集・再構成したものです。

 自動車メーカーで計算機をはじいている人からすれば、オープンカーは1粒で2度おいしいから造る、そんなクルマである。スポーツカーを設計したら、クローズとオープンを造り分ける。そもそも2ドアのスポーツカーは数が売れないので、その派生モデルの存在は欠かせない。




 一方カスタマー目線で観察してみると、まったく別の感情が湧き上がってくるから不思議だ。それはベースとなったスポーツカーに輪をかけて贅沢な乗り物なのである。クーペのメリットも享受できるが、ここぞという時にはフルオープンの解放感を味わえる。先ほどとは違った意味で、1粒で2度楽しめる。




 スペックから追っていけば、今回の2台、BMW M850ⅰカブリオレとアストンマーティンDB11ヴォランテのどちらを手に入れようかと迷う人がいてもおかしくはない。どちらも洗練されたV8ターボを搭載する2+2シーター、フルサイズのオープンモデルだからである。




 M850ⅰカブリオレは、デビューから割と日が浅い1台であり、BMWを代表するラグジュアリーモデルである。クルマを借りて早々、走りながら屋根を開け、銀座の街を闊歩してみる。ボディカラーが地味なので悪目立ちはしないが、それでもスマートフォンを向けてくる人はそれなりにいる。これもオープンカーのひとつの価値だろう。だが首都高に入ると、排気ガスの臭いに辟易とさせられる。オープンカーの本質は、やはり空気がきれいな場所にこそあるのだ。




 今回はM850iとDB11で伊豆半島の先端を目指す。目的地は海っぺりだが、そこに向かう道程はハイスピードワインディングが続く。暑い街中や高速道路では屋根を閉めてエアコンを利かせ、音楽を楽しみ、そしてACC(アクティブクルーズコントロール)に運転を任せる。M850iカブリオレは、オープンカーである以前に、至れり尽くせりの最新BMWなのである。今回の2台で東京から伊豆へ向かう贅沢に出くわしたのなら、退屈な前半部分はBMWを選ばない手はない。




 箱根の山に分け入り、外気温が下がってきたのを確認し、おもむろにトップを開ける。杉林を抜けてくる冷涼な空気が襟元をくすぐり、頭上で木々の緑や空の青が入り混じる。これぞオープンカーだけの愉悦だ。




 だが純粋なドライバビリティに関して、M850ⅰは少しイヤラシイ。コーナーへのアプローチでは一瞬大柄のボディに緊張が走るのだが、そこから先は期待したほどロールが深まらない。にもかかわらず十分な旋回が始まっているではないか。こちらとしては「気分爽快!」というより、今何が起きているの? という疑問符で頭が一杯になる。




 ターンインの瞬間にアクティブスタビライザーが締結を強め、賢い4駆システムがフロントの駆動力を絞り、さらには後輪操舵がさらなる旋回をグイグイと手助けする。色々と考え過ぎなければM850ⅰは実に賢い乗り物であり、約2.1tにもなる重量もなかったことにしてくれるのだが……。ネットの格闘ゲームでババリア人と対戦しているような、手応えの乏しさが気になった。

BMW M850i xDrive Cabriolet

BMW M850i xドライブ・カブリオレ


■ボディスペック


全長(㎜):4855


全幅(㎜):1900


全高(㎜):1345


ホイールベース(㎜):2820


車両重量(kg):2120


■パワートレーン


エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ


総排気量(cc):4394


最高出力:390kW(530㎰)/5500rpm


最大トルク:750Nm(76.5㎏m)/1800~4600rpm


■トランスミッション


タイプ:8速AT


■シャシー


駆動方式:AWD


サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン


サスペンション リヤ:マルチリンク


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:245/35R20


リヤ:275/30R20


■環境性能


燃費消費率:8.2㎞/ℓ(WLTCモード)


■車両本体価格(万円):1873万円(消費税10%)

 それに比べると、山道でステアリングを握ったDB11ヴォランテは、あらゆる意味でリアルなクルマだった。「至れり尽くせり」がないおかげでM850ⅰより250㎏も軽く、その重量差がそのまま走りの軽快さに効いている。M850ⅰは速度を上げるごとに未来に向かってワープしているような気になったが、DB11は20世紀に逆戻りしたように物理の法則に忠実だ。だからソフトトップを下ろと、重心が下がり、リヤに掛かる重量が増したことがはっきりと感じ取れる。




 オーバーハングが軽く、コーナーでは思った通りにハナが入り、ロールの深さを自在にコントロールでき「いよいよ」という限界点では電子制御がオーバーステアを止めてくれる。これがM850ⅰだとアンダーステアをDSCが止めるかたちになる。M850ⅰ単体で乗っていると「手応えの乏しさ」という表現は思いつかなかったはずだが……。




 しかもコンボイで走った今回は、両者の走る姿を様々な角度から見る機会があり、ここでもDB11が際立っていた。低くシャープなヴォランテは、嫉妬心を掻き立てるのに十分な美しさを秘めていたのである。




 とはいえ華々しいパーティのような山道が終わり、日常と言うべきハンパに混み合った小田原厚木道路に合流すると、我に返らざるを得ない。DB11にはアダプティブではない普通のクルーズコントロールしか備えていない。一度贅沢を知ってしまうと、こういうシチュエーションは辛い。




 ここぞ!という瞬間に屋根を開け、彼女に本物のプラネタリウムをプレゼントできる豪奢なオープンカーという世界観こそ同じだが、それ以外は対照的なアプローチをとる2台。M850ⅰは、最新のギミックを駆使して物理の法則を越えようとしているが、DB11は、シンプルに徹して乗り手との距離を縮めるという英国スポーツカーのセオリーに忠実なのだ。




 オープンとクローズを頻繁に使い分け、1年中、24時間普段着で乗れるM850ⅰに対し、ガレージでも屋根は開けっ放し、バイカーズ的な革のブルゾンを着込んで、早朝と深夜に存在を主張するDB11。その選択は「ヴィッツかフィットか?」というほど軽いものではない。乗り手の人生を左右する、と言っても大げさではないと思うのだが。

Aston Martin DB11 Volante

アストンマーティンDB11ヴォランテ


■ボディスペック


全長(㎜):4750


全幅(㎜):1950


全高(㎜):1300


ホイールベース(㎜):2805


車両重量(kg):1870


■パワートレーン


エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ


総排気量(cc):3982


最高出力:375kW(510㎰)/6000rpm


最大トルク:675Nm(68.8㎏m)/2000~5000rpm


■トランスミッション


タイプ:8速AT


■シャシー


駆動方式:RWD


サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン


サスペンション リヤ:マルチリンク


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:255/40ZR20


リヤ:295/35ZR20


■環境性能


燃費消費率:10ℓ/100㎞(EU複合モード)


■車両本体価格(万円):2423万2276円(消費税8%)

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