マツダ3、そしてCX-30から搭載が始まるSKYACTIV-Xエンジン。革新的な燃焼技術、SPCCIで高い熱効率を誇るSKYACTIV-Xエンジンのライバルとなるのは、並み居る2.0ℓ直4エンジンか。いや、真のライバルはVWの切り札、EA211evo型1.5ℓTSIエンジンだ。

 マツダ3が搭載する2.0ℓ直4SKYACTIV-Xの最大のウリは燃費性能ではない。走りの良さと燃費性能のバランスにある。伸びのあるガソリンNA的な気持ち良さがあるにもかかわらず、燃費もいい、というのがその立ち位置だ。

 だから、

燃費で SKYACTIV-X<トヨタ・ハイブリッド(THS2)

パワーで SKYACTIV-X<2.0ℓターボ過給エンジン

 となるのは、至極当然なのだ。

 この記事のなかで畑村博士が指摘した

「直6SKYACTIV-Xエンジンのライバルは、2.0ℓ直4ターボエンジンなのだ」という考え方からいけば、



「2.0ℓ直4SKYACTIV-Xエンジンのライバルは、1.2〜1.5ℓダウンサイジングターボなのだ」



 ということになる。



 ご存知の通り、00年代中盤にVWが提唱して世界的トレンドになった「過給ダウンサイジング」は、気筒数・排気量を落として過給することでロスを減らし燃費を改善することが目的だった。したがって

大排気量V8→3.0ℓ程度のV6ターボ

3.0〜3.5ℓV6・直6NA→2.0ℓ直4ターボ

2.0ℓ直4NA→1.2〜1.6ℓ直3・直4ターボ

1.6ℓ直4NA→1.0ℓ直3ターボ

というダウンサイジングの流れとなった。



 こう考えると、マツダのSKYACTIV-Xは

2.0ℓ直4NA→1.2~1.6ℓ直3・直4ターボ→SKYACTIV-X

と考えた方がいいのではないだろうか?



 2.0ℓ直4NAを1.4ℓ直4ターボにダウンサイジングターボ化したら、走りも燃費もよくなった。でも、厳しくなる燃費規制やWLTCモードへの変更、RDE(リアル・ドライビング・エミッション)が導入されるとダウンサイジングターボの伸び代はもうあまりない。ターボ過給は、ターボラグという宿痾(しゅくあ)から逃れられないし、ターボ化にはコストがかかる。



 そこで、マツダが考えたのが、燃焼から見直したSKYACTIV-Xなのだ。

SKYACTIV-X(欧州仕様) 直列4気筒DOHCターボ 排気量:1998cc ボア×ストローク:83.5 mm×91.2mm 圧縮比:16.3 最高出力:180ps(132kW)/6000rpm 最大トルク:224Nm/3000rpm 給気方式:スーパーチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI、トップマウント) カム配置:DOHC 使用燃料:RON95

 だから、図式はこうなる

燃費で SKYACTIV-X≧1.4ℓ前後のダウンサイジングターボ

パワー&トルクで SKYACTIV-X>1.4ℓ前後のダウンサイジングターボ

走りの愉しさ・気持ち良さで SKYACTIV-X>ターボ過給エンジン・トヨタ・ハイブリッド(THS2)

コストで SKYACTIV-X<ターボ過給エンジン・トヨタ・ハイブリッド(THS2)



 SKYACTIV-Xエンジンの当初のコストは高いが将来的には、DIシステム(70MPaのインジェクター、レール、ポンプなど)のコストがこなれれば、ターボ過給エンジンよりもTHSよりも低くできるはず。



 燃費に関して言えば、正確には

THS2>SKYACTIV-X>1.4ℓ前後のダウンサイジングターボ

 となる。



 では、SKYACTIV-Xエンジンにとっての最強のライバルはなにか、次ページで考えてみよう。

1.5TSI(96W) 直列4気筒DOHCターボ 排気量:1498cc ボア×ストローク:74.5×85.9mm 圧縮比:12.5 最高出力:130ps/5000-6000rpm 最大トルク:200Nm/1400-4000rpm 給気方法:ターボチャージャー(VGターボ) 燃料:RON95

 では、SKYACTIV-Xエンジンの最大・最強のライバルとなるのはなんだろう?

 本サイトでは、VWのEA211evoとしたい。



 フォルクワーゲンの最新エンジンにして、今後の主力エンジンとなるEA211evoエンジンは、行きすぎたダウンサイジングの揺り戻しとも言える「ライトサイジング」エンジンだ。ご存知の通り、VWは2.0ℓNAを1.2ℓ、1.4ℓのTSI(直噴ターボ)に代替するダウンサイジングを敢行した。しかし、行きすぎたダウンサイジングは新しい燃費モードではデメリットもあるということで、1.4ℓ→1.5ℓへ排気量を拡大するライトサイジングを行なった。そのエンジンがEA211evoである。

こちらはお馴染みの1.4ℓTSIエンジン 1.4TSI(103kW) 直列4気筒DOHCターボ 排気量:1394cc ボア×ストローク:74.5×80.0mm 圧縮比:10.0 最高出力:140ps/4500-6000rpm 最大トルク:250Nm/1500-3500rpm 給気方法:ターボチャージャー(ターボ) 燃料:RON95

 1.5ℓTSIのEA211evoには150ps(110kW)仕様と130ps(96kW)仕様のふたつがある。燃費により振ったエンジンは130psだ。35MPaの高圧燃料噴射と量産ガソリンエンジンでは世界初のVGターボ(可変ベーンターボ)を使う、いわば現行ダウンサイジング過給エンジンの最先端エンジンである。

VW最新最先端のライトサイジングエンジンのEA211evo 1.5TSI(96kW)の出力特性。

EA211 evo 1.5TSI(110kW) 直列4気筒DOHCターボ 排気量:1498cc ボア×ストローク:74.5×85.9mm 圧縮比:12.5 最高出力:150ps/5000-6000rpm 最大トルク:250Nm/1500-3500rpm 給気方法:ターボチャージャー(ターボ) 燃料:RON95

 VWは、今後ガソリンエンジンを1.0ℓ直3ターボ(1.0TSI)と、この1.5ℓ直4ターボ(1.5TSI)のふたつに収斂していく方針だ。当然、近い将来に登場が期待される次期ゴルフ(ゴルフ8)の主力エンジンはEA211evoの1.5ℓ。しかも48Vマイルドハイブリッドと組み合わせた仕様となるだろう。

マツダ3

Golf 1.5TSI DSG ACT BlueMotion(96kW/130ps)

 マツダ3+SKYACTIV-Xエンジン+24V M-Hybridが挑むのは、こういう図式だ。



燃費でマツダ3+SKYACTIV-Xエンジン+24V M-Hybrid≧ゴルフ+EA211 evo 1.5ℓ130ps仕様

走りでマツダ3+SKYACTIV-Xエンジン+24V M-Hybrid>ゴルフ+EA211 evo 1.5ℓ150ps仕様



 ということだ。かたやグループすべてで使うMQBというモジュラー・アーキテクチャーで膨大な生産量に裏付けられたスケールメリットを有するEA211evo。かたやSPCCI燃焼を実現した最先端エンジン。それぞれCutting EdgeなState of the Artなエンジン技術のカタマリだ。







現状でいえば燃費は



Golf 1.5TSI DSG ACT BlueMotion(96kW/130ps)

urban:16.4km/ℓ extra-urban:24.4km/ℓ combined:20.8km/ℓ



Golf 1.5TSI DSG ACT BlueMotion(110kW/150ps)

urban:16.1km/ℓ extra-urban:22.7km/ℓ combined:19.6km/ℓ

  

Mazda3 HB SKYACTIV-X 6AT FF(18inch)

urban:16.1km/ℓ extra-urban:20.8km/ℓ combined:18.9km/ℓ



 となる。マツダ3SKYACTIV-XがゴルフEA211evoに燃費で負けているじゃないか、と思う人も多いだろうが、このゴルフはBlueMotionとあるように、ゴルフのなかでも「燃費スペシャル・グレード」だ。マツダ3SKYACTIV-Xが走り志向のグレードであるのはまったく違う。本当に競争はここからだ。

  

 いずれにせよ、2020年代初頭のガソリンエンジン競争は、マツダとVWの2機種のエンジンの対決が軸となるのは間違いない。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 マツダ3+SKYACTIV-X vs VWゴルフ+1.5ℓEA211evo 2020年代初頭のエンジン頂上対決