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いよいよ年の瀬。続々到来する冬の使者、カモウォッチングを楽しもう《前編》


今年も早くも年の瀬が近づいてまいりました。12月は和風月名では師走。報道などで頻繁に使われるためにメジャーな呼称ですが、その意味はわかっていません。詳細はこちら
今回は12月になると全国で目立ち出す北からのかわいらしい訪問者、カモについて取り上げたいと思います。

さまざまな種が群れ集う冬の水辺。種類を見分けられれば親しみもぐっと増します

さまざまな種が群れ集う冬の水辺。種類を見分けられれば親しみもぐっと増します


冬の水辺はカモたちの恋の舞台。まずは代表選手「マガモ」

シベリア・オホーツクから飛来してくるガンカモ類の越冬地は主に東北南部以南の暖地で、冬から春のはじめにかけて、多くの水鳥たちが水辺を賑わせます。
留鳥であるカルガモ、国内で短距離の渡りにとどまる漂鳥のオシドリをのぞけば、すべて北方の大陸からの渡り鳥です。秋の終わりごろ、渡ってきたばかりのカモたちを見ると、おしなべて地味な羽色をしていて、一瞬「あれ?メスばかりなのかな」と錯覚しそうになります。多くの鳥たちは春から夏にかけて繁殖行動に入るため、オス鳥のきれいな婚姻色の羽色は夏前後に見られ、冬は地味な羽色になるのが普通です。
ところがカモの場合は北方の繁殖地で繁殖期が終わる夏ごろに地味な非婚姻色の羽衣(エクリプス eclipse)をまとい、その姿で旅立って日本にたどり着き、その直後から婚姻色の羽毛へと換毛がはじまるのです。カモ類は冬の時期に毎年雌雄のペアリングを形成する習性があり、冬が婚活期にあたるため、冬の到来とともに婚姻色に生え変わるのです。また婚姻色への換毛は、飛翔に不可欠な風切羽根もごっそりと入れ替わるので一時的に飛べなくなり、このため旅を終えた後に換毛するわけです。
ですから私たちは、日本ではカモたちのほとんどが繁殖しないにもかかわらず、オスのきれいな婚姻色姿を楽しめるのです。
さて、そんなカモたちの中で、毎年常に飛来数が多く、もっともよく見られるのがマガモ(真鴨 Anas platyrhynchos)です。カモ類の中ではやや大型の部類で、肉質も最上級のために古くから狩猟対象となり、また肉や卵を得るための家畜化も進められてきました。マガモが人間に飼われるようになり、飛翔能力をほぼ失くして羽色にも変化が生じたのがアヒルです。
マガモのオスの婚姻色は、メタリックグリーンの頭部に白い首輪、胴体はチャコールブラウンとオイスターホワイトにくっきり色分けされ、華やかでありながら落ち着いた雰囲気を醸し出し、ハイセンスなおしゃれ感は抜群です。アヒルにも受け継がれた明瞭な黄色い嘴はワンポイントでキュートさを加味します。

マガモ雄。何ともほれぼれする配色です

マガモ雄。何ともほれぼれする配色です


海にも川にも湖にも大進出。近年存在感を増す緋色のカモ「ヒドリガモ」

昭和の頃よりも、近年になって急激に飛来数が増しているのがヒドリガモ(緋鳥鴨 Anas penelope)です。日本には安定して16万羽以上が飛来し、湖沼にも海辺にも、よく見られる小型のカモです。オスの婚姻色は頭部はレンガのような緋色で、頭頂から額にかけてクリーム色の太いラインが入ります。かつてはその緋色から「緋鳥」と呼ばれていて、そのままそれが種名となりました。
別名で「息長」とも呼ばれますが、これは長く潜水できるからではなく、オスの独特のピュー、ピューと聞こえる高い鳴き声が、古式神道の「息長」と呼ばれる特殊な呼吸方式を連想させるからだと思われます。
日の出の太陽に向かい、清浄な空気を取り込む息長を考案・実践していた古代日本、ヤマトタケルノミコトの時代の伝説の忠臣・武内宿禰(たけしうちのすくね)は300歳前後まで生きたという伝説があります。ヒドリガモの緋色の羽色も、太陽を連想させたのでしょう。
首が短く、全体に華奢なヒドリガモは動きもチャカチャカしていてかわいらしい印象を受けますが、なかなか向こうっ気の強い性格をしています。

ヒドリガモの群れ

ヒドリガモの群れ


ひよこのような愛らしいシルエット。水辺の活発なアイドルキャラ「コガモ」

コガモ(小鴨 Anas crecca)は、その名のとおり、日本に飛来するカモの中でもっとも小型で、ハトよりわずかに大きい程度のカモです。
頭頂部と頬にかけては明るい茶色、そして両目の周辺から後頭部に向かって、翡翠色の勾玉のような模様が入ります。喉もとから胸元は白地にグレーのドットがちりばめられた水玉模様。体の側面と後背部は青みがかったグレーに、細かく波状の白い斑紋が入り、非常に美しい模様をなします。
体と比べて大きめの丸い頭、短い脚と首、短めの嘴というシルエットは、成鳥でありながらまるでヒヨコのような愛らしさです。オスは活発な性格で、つがいを形成するまでの12月から1月ごろにかけて盛んにメスにむかってディスプレイ行動をします。ピュルルッと小鳥のような声を出しながら、嘴で水面をしゃくってメスに水を浴びせ、あごを上げて伸び上がり、続いてお尻と尾羽を突き立てます。翼鏡(カモの翼の特徴である光り輝く次列風切り羽)の緑がよく目立つメスも上半身を反りあがらせながらあごをあげてオスのアピールに応じます。
こうして冬の終わりごろにはカップルが出来あがるのですが、おとなしいメスに比べてオスは飛び回るのが好きな性質で、単独で出かけてしまい、ぽつんとメスが一羽で帰りを待っているのをしばしば見かけます。
食性は植物食で、このため肉質はマガモに勝るともいわれますが、体格が小さくあまり狩猟されてこなかったためか、人への警戒心は薄く、池などではすいすいと近寄ってくるのもかわいいものです。

コガモ(雄)。かわいらしい外見とは裏腹になかなかやんちゃです

コガモ(雄)。かわいらしい外見とは裏腹になかなかやんちゃです


カモの貴族?ひときわ目立つ大型種「オナガガモ」

オナガガモ(尾長鴨 Anas acuta)は、オスは全長75cmにもなる大型のカモで、翼長も1m近くになります。オスの婚姻色は、頭部と後背部がつやのあるチョコレート色、後頭部に黒いラインがきりっと入り、耳元から胸にかけては純白、側面は銀色にも見えるグレーで、細かな波模様が入ります。嘴は美しいブルーグレー、背から尾羽の上尾筒には流線型の黒い模様が入り、その流れの先端に尾翼が10cm以上もしゅっと伸び、尾長鴨という名の由来になっています。首が他のカモ類よりも長く、全体のカラーリングからも、礼服をびしっと決めた青年貴族のように見えます。
メスは他の多くのカモ類と同様、色は地味な茶褐色ですが、胸から背にかけて、細かくてくっきりとした繊細なキジ模様が広がり、やはりちょっと高貴な雰囲気が漂います。
都市部の湖沼に相性がいいのか、1990年代ごろから顕著に皇居の壕や上野の不忍池などで大集団が見られるようになり始め、近年では都市郊外の住宅地の公園の池や川でも常連の顔になっています。肉質はマガモと比べて劣るため、あまり活発に狩猟されてこなかったようで、そのせいか人のこともあまり恐れないので、是非間近でカッコいいオナガガモをごらんください。
後編では、さらに身近に見られるカモの仲間を紹介していきます。

※外出の際は、手洗い、咳エチケット等の感染対策や、『3つの密』の回避を心掛けましょう。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出の自粛を呼び掛けている自治体がある場合は、各自治体の指示に従いましょう。

参照
山渓カラー名鑑 日本の野鳥  山と渓谷社

オナガガモのカップル。こんなに美しい野鳥を身近に見られる僥倖をかみ締めたい

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