テレビの天気予報を見ていると、衛星画像や雨雲の動きなどが多く使われるようになった代わりに、天気図の出番は以前に比べて少なくなったように感じます。これからの時代、動かない天気図は不要なのでしょうか。いいえ、そうではありません。実は、一枚の天気図からは、いろいろな情報を得ることができるのです。山を愛する全ての人に、登山に役立つ天気図のポイントをご紹介します。


天気図から読み解ける空気の流れ

山では、最寄りの街の天気予報が当たらないことが少なくありません。山地は、そもそも県境に広がっている場合が多く、周辺の地域の天気の影響を受けています。どの地域の影響がより大きいかは、風向きによって変わるケースが多く、おおまかにでも風の流れを把握することはとても大切なことです。
実は、風の流れは、天気図から読み取ることができます。天気図上には等圧線が引かれ、等圧線が閉じている所が高気圧、または低気圧です。このうち、高気圧からは時計回りに風が吹きだし、低気圧には反時計回りに風が吹き込んでいます。さらに、等圧線の間隔が狭いほど強い風が吹きやすいという特徴も覚えておくと、風向きや風の強さの傾向が天気図からざっくりと把握できるようになります。
等圧線の形は、温度の情報も含んでいます。例えば、冷たい空気は圧縮されて、周囲に比べて気圧が高まります。冬のロシア極東に出現するシベリア高気圧はとても冷たい空気をため込んでいるので、ときに1060hPaという気圧の高い高気圧になることもあるほどです。
また、次の項目で紹介するオホーツク海高気圧も、冷たい空気を持った高気圧です。高気圧の勢力が強まると、気圧の高いエリアが関東付近に張りだしてきて、等圧線の形がゆがみます。このとき、周囲に比べてヒンヤリとした空気が、高気圧から吹きだす風の流れに乗って関東に吹き付けます。


雲海に期待!オホーツク海高気圧の張りだし

中心がオホーツク海や千島列島付近にあり、しばらく同じような場所に停滞する高気圧をオホーツク海高気圧といいます。この高気圧が勢力を増すと、東北地方の太平洋側や関東地方には、冷たい空気が流れ込みます。このような状態になると、周囲に比べて気温の低い所は気圧が高くなり、天気図上では等圧線が南に張りだしているように描かれます。
オホーツク海高気圧は、日本の梅雨の時期に現れることが多い高気圧です。上図のような気圧配置になると、東北の太平洋側や関東地方は低い雲に覆われてシトシトとした弱い雨が降りやすく、気温もなかなか上がりません。いわゆる梅雨寒の天気になることが多い気圧配置です。ただ、雲の頭の高さは低いので、高い山を雨雲が越えられないケースがよく見られます。衛星画像では、雲が太平洋側にせき止められ、日本海側はスッキリ晴れている様子がうかがえます。日本アルプスのような高い山では晴れて、雲海が期待できる気圧配置でもあるのです。


THE DAYから嵐へ 日本海の小さな低気圧

冬季には、ときおり、日本海にぽつんと小さな低気圧が発生します。このとき、低気圧に向かって南から風が吹き込むので、日本海側の山岳では、晴れにくい冬場であっても雲が消えてスッキリと晴れることが多いようです。等圧線が込んだ冬型の気圧配置が緩むため、風もおさまり、ときには、THE DAYと呼ばれるようなスキー日和・登山日和に恵まれることがあります。
ただ、この晴天は長続きしません。低気圧が日本海を進み、沿岸部に近づくと、山の天気は急激に崩れ、雨や雪が降り出します。また、風も強まって嵐になることがあり、山にとどまっていると遭難のリスクがある天気変化です。

また、日本海と太平洋にそれぞれ低気圧があり、挟まれるような形になると、本州付近は周囲に比べて気圧の高いエリアになるため、一時的に天気が回復することがあります。ただ、低気圧が移動すると、急激に天気が悪化します。知らずに山中でのんびりしていると遭難リスクが高まります。
こうした「嵐の前の静かな天気」は疑似好天と呼ばれ、過去に遭難事故も発生しています。現在の天気がどれほど良くても、それが長続きするものなのか、それとも疑似好天なのかを天気図から見極めるようにしましょう。


天気を知って安全な登山を!

登山に大いに役立つ天気図。来シーズンの登山に、ぜひ活用してみてください。ただし、今回紹介したのはあくまで地上の天気図です。天気の変化は、上空の気圧の谷や尾根とも複雑に作用しあっているので、地上の天気図だけを追っていても天気がわからなくなる場合があります。
それでも、天気図を確認してから天気予報を見ると、天気マークの納得度も段違いのはずです。天気の理由を知ることは、とても大切なことなのです。ぜひ、日常的に天気図を活用してほしいと思います。天気ひとつで、楽しい思い出が一瞬で辛く苦い思い出に変わってしまうこともあります。天気をよく把握して、安全に登山を楽しんでくださいね。