ダイナムジャパンHD Research Memo(4):2022年3月期は営業日数の増加による増収などより2期ぶりに増益
1. 2022年3月期の連結業績
ダイナムジャパンホールディングス<06889>の2022年3月期の連結業績は、営業収入で前期比6.6%増の105,141百万円、営業利益で同58.4%増の10,654百万円、税引前利益で同96.0%増の8,509百万円、当期利益で同111.7%増の4,977百万円と増収増益に転じた。ただ、コロナ禍以前の業績水準(2020年3月期:営業収入142,483百万円、営業利益21,514百万円)と比較すると依然低水準にとどまっており、なお回復途上にある。
営業収入については、パチンコ事業において2020年4月、5月の非常事態宣言に対応した業界を挙げての店舗休業がなく、営業日数の増加が増収要因となった。営業利益は増収効果に加えて、事業費用が前期比2.7%減少したことが増益要因となった。事業費用の減少要因について見ると、パチンコ事業において店舗人件費が1,746百万円減少したことに加え、遊技機の購入額及び減価償却費が合わせて586百万円減少したことが主因となった。その他収入は、店舗の営業日数回復に伴い自販機手数料収入が101百万円増加した一方で、コロナ禍による雇用調整助成金等が3,088百万円減少した。また、その他費用として店舗関連の減損損失2,215百万円を計上した。なお、期末従業員数は13,420人となり、前期末比で2,684人減少した。
(1) パチンコ事業
パチンコ事業の業績は営業収入で前期比6.6%増の103,588百万円、セグメント利益で同32.7%増の13,113百万円と増収増益に転じた。営業収入の内訳を見ると、高貸玉店舗が同7.6%増の51,293百万円、低貸玉店舗が同5.7%増の52,295百万円となり、低貸玉店舗の回復が相対的に鈍かった。これはコロナ禍が続くなかで、低貸玉店舗の客層に比較的多い高齢者の客足の戻りが鈍かったことや、採算の厳しい店舗の整理を進めたことが要因と考えられる。
同社の会員データによれば、コロナ禍以前(2019年2月)に対するコロナ禍以降(2021年9月)の年代別来店復帰率は、20代が80.8%、30~60代が75%前後となっているのに対して、70代は71.9%と最も低くなっており、この傾向が下期に入っても続いたようだ。また、期末店舗数は前期末比で9店舗減少の433店舗となった。
一方で、コロナ禍でも客足の回復に取り組むべく、徹底したコロナ感染対策やサービスの向上等に取り組んだことで、ウイズコロナの環境下でも店舗運営を継続していく体制が整備されてきたことは明るい兆しと言える。実際、2022年3月期は第4四半期に過去最大の感染者数を記録し、主要都市では緊急事態宣言が発出されるなど逆風が強まる格好となったが、パチンコ事業収入への影響は軽微であった。
なお、2022年3月期は風営法改正に伴ってパチンコ機、パチスロ機ともに射幸性を抑えた新規則機への入替を2022年1月末までに行う必要があり、例年よりも入替台数が多くなった。同社の場合、前期末で設置台数の約51%、台数で10.5万台が旧規則機で、これらを2022年1月までにすべて新規則機に入れ替えるか、もしくは撤去だけを行う必要があった。このため、購入額は前期の164億円から400億円超と大幅に増加したが、前述のとおり2年償却による費用計上に変更したことにより、減価償却費も含めて159億円が費用計上され、未償却分289億円が有形固定資産に計上されている。
そのほか主な事業費用の増減項目を見ると、店舗オペレーション改革の実行により店舗人件費を1,746百万円削減したほか、使用権資産の償却費(地代家賃)を621百万円、清掃費を695百万円それぞれ削減した。一方で、広告費は集客施策の再開や入替台数の増加もあり1,056百万円増加したほか、修繕費が530百万円、水道光熱費が429百万円それぞれ増加し、事業費用合計では2,723百万円の減少となった。雇用調整助成金の減少や減損損失の計上があったものの、営業収入の増加と事業費用の減少によって、セグメント利益は3,235百万円の増益となった。
なお、グループの中核を成す(株)ダイナムの業績について見ると、営業収入は前期比7.4%増の97,730百万円、営業利益は5,745百万円(前期は2,521百万円の損失)と増収増益となった。営業外収益に計上していた雇用調整助成金等の減少があったものの、経常利益は同161.7%増の8,749百万円となり、当期利益は同174.5%増の4,892百万円となった。
2022年3月末の店舗数は前期末から5店舗減少の396店舗となり、設置台数も同1.0%減の185,971台と若干減少した。ただ、PB機については同18.5%増の19,840台となり、コストマネジメントとしてPB機の購入比率を引き上げたことが窺える。なお、稼働率についてはパチンコ機が前期比1.8ポイント上昇したものの、パチスロ機については同2.8ポイント低下しており、パチスロ機のヒット機種不在が稼働率にも影響したことが窺える。
(2) 航空機リース事業
航空機リース事業の事業収入は前期比6.3%増の1,553百万円、セグメント利益は同12.5%増の252百万円となった。同社は流動性が高く、需要も安定して見込まれるナローボディ機に絞って展開しており、2020年3月期に購入した3機のリース料収入が継続し、為替が米ドルに対して円安に振れた分、増収増益となった。なお、フリートバリューは3機で17,000百万円となり、年換算表面利回りを計算すると8.8%となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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