将棋の王座戦を制し、史上初の8冠全冠制覇を達成した藤井聡太名人（21）が、対局から一夜明けた12日朝、京都市内のホテルで記者会見し、「まだ実感が湧かない。うれしい気持ちとともに、これまで以上に将棋の内容に高いレベルが求められると思っている」と語った。
藤井名人は王座戦五番勝負で11日に同ホテルで行われた第4局に勝ち、3勝1敗で永瀬拓矢王座（31）からタイトルを奪取した。会見に先立ち、対局場のホテルスタッフから祝福の花束を贈られた後、写真撮影の求めに応じた。8冠獲得にちなんで両手の指を8本立ててみせ、前夜よりも柔らかな表情を浮かべた。
大逆転で制した対局後、ホテルの部屋に戻ってから「いろいろ対局を振り返ってしまったが、普段通りには眠れた」という藤井名人。「家族から祝福のメッセージをもらった。師匠（杉本昌隆八段）は忙しいかと思うので、こちらから報告できれば」と話した。8冠達成について「プロデビューからタイトル戦初挑戦までは時間がかかったが、以降のタイトル戦では自分の実力以上の結果が出た」と振り返り、「10代の頃と違って、意識的に取り組まないと棋力を伸ばすのは難しいと思う。どうすれば実力を高められるか考えていきたい」と決意を述べた。
苦しい将棋に勝ったことを「幸運だった」としながら、「相手玉に少しでも迫る形をつくって、何とか（局面を）複雑にすることを考えて指していた」と明かす藤井名人。全タイトルで追われる立場になったことも「盤を挟んでしまえば違いは全くない。これまでと変わらない気持ちでいいのかなと思っている」と自然体だった。【最上聡】
