英国で「外来種」のリスの増加により、樹木が荒らされる被害が相次いでいる。政府は個体数を減らすため、リスの餌に繁殖を防ぐ薬を混入するなどの対策に乗り出している。
英紙ガーディアンなどによると、問題になっているのは19世紀ごろに北米大陸から持ち込まれたトウブハイイロリス。繁殖力が強く、現在は英全土で270万匹が生息している。一方、英国の在来種のキタリスは14万匹程度で、保護団体は絶滅を懸念している。
リスは樹皮を剥ぎ、木を枯らしてしまうため、木材業者らの脅威となっている。慈善団体・英王立林業協会は2021年、リスによる被害額について、木材価値の損失などで年間3700万ポンド(約63億円)に上ると発表した。英政府は19年、トウブハイイロリスを「侵略的外来種」に指定し、捕まえた場合は再び野生に放すことを違法化した。
こうした中、英動植物衛生庁は22年、リスの餌が入った箱を森に設置する実験を行った。AFP通信によると、その結果、多くのトウブハイイロリスが餌箱を使った。今後はこの餌に繁殖を防ぐ薬を入れることで、直接リスを殺すことなく、徐々に個体数を減らすことを検討しているという。【ロンドン篠田航一】