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映画『山女』福永壮志監督インタビュー「追いつめられた集団が弱い個を責めるという構図は、歴史上何度も繰り返されてきたこと」



『リベリアの白い血』『アイヌシモㇼ』の福永壮志監督の最新作『山女』が、6月30日(金)より公開となります。柳田國男の名著『遠野物語』に着想を得た本作は、18世紀末の寒村を舞台に、過酷な運命に翻弄される17歳の凛(りん)の人生を描いたオリジナルストーリー。 昨年の東京国際映画祭コンペ部門での上映を皮切りに、 香港国際映画祭、ニューヨーク・アジアン映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭への出品も決定し、海外からも注目を集めています。


【ストーリー】18 世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされながらも逞しく生きる凛。彼女の心の救いは、盗人の女神様 が宿ると言われる早池峰山だった。ある日、凛の父親・伊兵衛が村中を揺るがす事件を起こす。家を守るため、村人達から責められる父をかばい、凛は自ら村を去る。決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越え、山の奥深くへと進む凛。狼達から逃げる 凛の前に現れたのは、化け物なのか人間なのかもわからぬ不思議な存在であった…。


本作で監督と脚本を手がけた福永壮志さんにお話を伺いました。



──とても素晴らしい映画をありがとうございます。様々なことを考えさせられる作品ですね。私は『遠野物語』を読んだことが無かったのですが、監督はどの様なきっかけでお読みになったのでしょうか?


ニューヨークで映画の勉強をしていた末時に、日本について、文化をもっと知りたいと思い読んだ本のうちの一つ人です。『遠野物語』は18世紀後半を舞台にした作品ですが、当時の⼈たちが⾃然とどのように関係性を築き⽣活していたのか、⾯⽩いものを垣間⾒ることが出来て。民話群からさまざまな要素を取り入れて、あたらしい物語を考えました。その一方で、凜が語る早池峰山の伝説や、お婆が語る川が氾濫した時の言い伝えは、『遠野物語』でも紹介されている話をそのまま引用しています。


──私の様に日本で暮らしていながら『遠野物語』を読んだことが無かったり、『山女』で描かれている時代について知らなかったので、知ることが出来て純粋に良かったです。本作では男尊女卑、貧困による困窮などが描かれていますが、時代や環境は違えど現代とも通じる部分が多いですよね。


そうですよね。凛という女性を主人公にして男尊女卑の風習を描いていますが、今現在も続いてしまっている問題であると思います。そういった問題を扱っている作品ということで、時代劇であっても間違った女性の描き方があってはならないと考え、できるだけ女性スタッフに参加していただいています。共同脚本家の長田育恵さんは、過去に『遠野物語』についての台本も手掛けられていますし、凛の描き方に関してもたくさん助けていただいています。長田さん、プロデューサー陣のエリック・ニアリさん、三宅はるえさん、家冨未央さんと色々な話し合いを重ねながら、男尊女卑が脈々と続く現代の日本にも通ずる作品にすることを意識しています。


──本作の冒頭では辛い、悲しい気持ちになる方も多いと思います。でも、それが現代にも続いているということが何よりも悲しいですよね。


ここ数年の話で言えば、コロナ禍で起きたこともそうですよね。コロナが流行して不安に満たされていた当初、日本では感染者が過剰に非難される事例が数多く起きて、とても悲しい気持ちになりました。


──地方に東京ナンバーの車で行くとイタズラをされる事象など、今考えても本当に悲しいことが続いていましたよね。


追いつめられた集団が弱い個を責めるという構図は、歴史上何度も繰り返されてきたことです。本作は、2019年か『リベリアの白い血』『アイヌモシリ』から取り組み始め、パンデミックのニュースを見聞きしながら脚本を書いていたので、当時起きていたことが自然と物語の中に反映されていきました。


──その閉塞感が恐ろしいほどに映画から伝わってきました。そんな過酷な環境に抗う凜役の山田杏奈さんも素晴らしかったです。


僕はこれまでプロの俳優ではない方々に出演をお願いして映画を制作してきたので、キャスティングは、プロデューサー陣からの提案、尽力が大きいです。山田さんはこの映画の世界観の中で地に足をつけて生きられる存在感を持っていると思いお願いさせていただきました。本当に素晴らしい、力強い表情を見せてくれました。



──永瀬正敏さん、森山未來さんなど共演の皆さんも凄まじい存在感でした。


伊兵衛が犯す過ちはとても悪いことですし、凛がそれを被るという理不尽さがありますが、伊兵衛もまた被害者であり、永瀬さんがその絶妙なバランスを見事に表してくださって。森山さんは、言葉が無くても圧倒的な存在感と表現力で山男になってくださって。あとは、泰蔵役の二ノ宮さんは、人間くさい弱さがあるが、純粋さを持っていて憎めない泰蔵を演じてくださいました。春役の三浦透子さんは、村の良家に生まれながらも、やはり女性のしがらみを背負う春という役に実在感を持たせ、とても魅力的に演じてくれました。キャストの皆さんには本当に感謝しています。


──皆さん素晴らしかったです。そして、ロケーションもすごいですね。映画さながらの、美しさと恐ろしさを感じました。


早池峰⼭の実景以外は全編⼭形で撮影しています。森での撮影は大変でしたが、樹齢数百年の大木があたり一面にあり感動しました。⼭男が住む洞窟も実際に縄文・弥生⼈が住んでいた洞窟で、そういった特別な場所から感じられるパワーを森山さんや山田さんは演技に活かしてくれていたと思います。


──ぜひ大スクリーンでこの自然も満喫していただきたいと思います。今日は素敵なお話しをありがとうございました。



【STORY】 禁じられた山に入るとき、運命が動き出すー

18 世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされながらも逞しく生きる凛。彼女の心の救いは、盗人の女神様が

宿ると言われる早池峰山だった。ある日、凛の父親・伊兵衛が盗みを働いてしまう。家を守るため、村人達から責められる父をかばい、凛

は自ら村を去る。決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越え、山の奥深くへと進む凛。狼達から逃げる凛の前に現れたの

は、伝説の存在として恐れられる”山男”だった…。


山田杏奈

森山未來 二ノ宮隆太郎 三浦透子 山中崇 川瀬陽太 赤堀雅秋 白川和子 品川徹 でんでん 永瀬正敏

監督:福永壮志 脚本:福永壮志、⻑田育恵


制作プロダクション:シネリック・クリエイティブ ブースタープロジェクト|国際共同制作:NHK|製作:「山女」製作委員会|配給:アニモプロデュース


2022 年/日本・アメリカ/98 分/カラー/シネマスコープ/5.1ch

(C)YAMAONNA FILM COMMITTEE


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