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その多汗、治療で治るかもしれないの知ってた? 「ワキ汗・多汗症 疾患啓発セミナー」に行ってきた


4月4日、科研製薬が「ワキ汗・多汗症 疾患啓発セミナー2023」を開催した。手汗が凄い、ワキ汗が凄い。体質だと片付けられがちなその症状は実は治療で治るものかもしれない。保険適用される治療法もある事実がまだまだ認識されていない現状を憂いての啓発セミナーである。

ワキ汗・多汗症の実態

池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長・藤本智子先生はこの道18年のベテランであり、これまでの医療現場での所感を踏まえて、現状を語った。「哺乳類の多くは汗をかけず、全身に汗をかくのはウマ。そしてサルや人間といった一部の動物だけ」と汗トリビアを披露しながら、汗について語っていく。

汗には「温熱性発汗」と呼ばれる体温調整の為の汗と、「精神性発汗」と呼ばれる精神的緊張によって起きる汗がある。多汗症は後者の汗であり、まだまだ原因は不明だが、脳や脊髄、自律神経を介して発汗する。

生活に困難になるかどうかが大事で、汗の量はさほど重要視はされない。ワキ汗であれば少量であっても目立つ。こうした多汗症で日本の10人に1人が困った経験があるのが統計でわかっている。

手足の汗は握手ができない、スマートフォンの指紋認証ができない、そうした困りごとを発生させる。ワキ汗は洋服の変色や匂いが気になる。頭部や顔面の汗は隠せないので人に会うのが嫌になる。部位によって違う困難が発生している。

これらはQOL(生活の質)に影響しており、人と会うことを億劫がらせて、対処法にお金や時間が費やされ、パフォーマンスがどうしても落ちてしまう現状がある。

ワキ汗の多汗症に関する「親子の認識調査」の報告

今回のセミナーでは2022年9月21日から9月26日の期間で、腋窩多汗症重症患者に該当する中高生214名とその母親215名に対して、インターネット調査を実施した。そこで見えてきた親子の認識の実態も報告された。

ワキ汗の多汗で、患者の中高生は「気にしていることや経験したこと」、その母親には「気にしていると思うこと」をアンケートした。患者の中高生が79.9%が恥ずかしく思っているが、その母親がそれを理解している人は51.2%。他の結果からもギャップが大きく開いているケースが多いことがわかった。

「ワキ汗の多汗についてその原因は何だと考えるか」のアンケートの結果は、今の実態そのものだ。患者の中高生の1.9%、その母親の3.3%しか原因が「病気」であるとの回答は得られなかった。圧倒的多数は、患者の中高生の67.8%、その母親の67%が「体質」であると考えていた。治療できるものではないと諦めている傾向がまだまだ多いのがわかる。

核心である「ワキ汗改善のために医療機関を受診しない理由」のアンケートもされた。そもそも「医療機関で治療できることを知らなかった」は患者の中高生の20.5%、その母親も27.5%もあった。ここで親子のギャップがもっとも大きかったのは「お金がかかるので親に言い出しにくいから」は患者の中高生が46.8%、その母親は19.2%である。

「医療機関で治療を受けるきっかけ」には、母親の79%が「子供からの訴えがあれば」と考えており、患者の中高生の56.8%が「治療費が安ければ」と応えている。ワキ汗多汗症が病気であることの周知、保険治療が可能である事実を伝える必要性が見えてきた。

更に必要とされるのは親子のコミュニケーションであるようだ。恥ずかしいので言い出しづらいのもあるだろう。勇気を持った一歩を子供が踏み出せるか、踏み出しやすい状況を作れるかが課題になりそうだ。

10代患者の山形さんと保護者のお母さんを交えた本音トーク座談会

セミナーでは、引き続き藤本先生と、NPO法人多汗症サポートグループの代表理事であり実際に多汗症患者である黒沢希さん、そして実際に重症患者である高校二年生の山形想さんとその母親を交えた本音トークが繰り広げられた。

想さんが多汗症を意識したのは小学校の時に同級生から指摘をされたことがきっかけ。インターネットで「汗が多い」「病気」などのキーワードで検索した結果、多汗症という病気であることを知った。病気だと知ったことで「体質だったら治らないかもと不安だったけど、治るかも」と受け入れるきっかけになったそうだ。

学生生活で実際に支障を感じたこととして「体育の時間で手をつなぐ時に手汗を拭いてみたり、今は無理と伝えること」「テストの時に用紙を破いてしまうこと」「夏場に塗った日焼け止めが落ちてしまったり、髪を結ってもすぐほどけてしまう」など、日常の中で小さなストレスを感じていたエピソードを伝えた。

想さんの母は「一歳のときには夏に床に座らせていたら床が濡れていたので汗っかきだと思っていた」と語り、小学校の時に想さんから多汗症について困ってると言われて、「汗で濡れて鉛筆が持てない」や「プリントが汗でよれている」のを見て、普通の汗っかきではないと気付いたそうだ。

最初は体質だと思っていたが、想さんが「裁縫をしようとするも針が滑って握れないし、布も濡れて針が通らない」のを見て、彼女から多汗症という病気があることを伝えられて、病気として認識していった。

ここで黒沢さんが「針が錆びるんですよね。どんなに針を拭いてもダメなんです」と多汗症あるあるを付け足した。

多汗症の悩み〇×エピソードトーク

多汗症の悩みを問いかけて、座談会のメンバーがマルバツを提示してからマルの人がエピソードを語っていく時間もあった。

想さんと黒沢さんに「新生活の時期でワキ汗などが原因で憂鬱に感じることはありましたか」との問いが投げられる。これには双方マルの回答。

想さんは「人前で喋る機会が増えて緊張する場面が増えると汗をかいてしまって嫌だなってなる」「初対面の友達が増えると多汗症であることを打ち明けるのが怖かったり、どう思われているんだろうって思って憂鬱になる」と学生としての経験を語った。

黒沢さんからは「OLをしていた時に初めて制服を着たら汗吸ってくれないし、しょっちゅう洗えるものでもない。新しい服装で緊張もするので、負の悪循環に陥ってしまう」と社会人としての経験を伝えた。

続いての質問として「多汗症の悩みについて、親との認識のギャップを感じたことはありますか」が、第一問と同じく想さんと黒沢さんに問いかけられた。

想さんは「保護者の方にすごく汗をかくと打ち明けても、保護者の方が思っている以上の汗をかいてます。でもそのギャップは仕方ないとも思っています」と汗の量についての認識の違いを語った。想さんの母は、自身は多汗症ではなく、最初はわからなかったと頷く。

黒沢さんもNPO法人として活動しはじめた40歳過ぎで、はじめて母親が多汗症であることを知って「気付いてあげられなくてごめんね」と謝られた話を明かす。「毎日毎日悩んでいても、意外と気が付かないものだな」と思ったことを話した。

藤本先生からは「ピアノを習わせるがピアノの鍵盤が濡れてしまって、理解のないピアノの先生からどうにかしてほしいと苦情を言われた」と多汗症患者が傷ついているエピソードが話された。これを聞いた想さんは「奇跡みたいな環境だったんですが、30分のレッスンで鍵盤をビショビショにしてたけど、いいよ拭いてあげるからと言ってくれる先生だった」と、理解ある先生の話を語った。

司会から「親子のギャップはどのように埋めていけばいいとおもうか」との質問が想さんにされた。想さんはNPOの活動で知り合った他の多汗症の若者たちの話も踏まえて「どうしても勇気を出して保護者に多汗症の相談をするステップは必要」と答えた。

実際に幼少期に想さんから相談された想さんの母は「ピアノを頑張りたいのに滑ってうまくいかない。チアをやっても裸足の時に滑ってうまくいかない。それを見ていたので、すぐに受け入れました」と、多汗症をすぐに受け入れた経緯を語る。

黒沢さんから「頭が固い保護者もいらっしゃいます。その中でもお二人は理想的な関係だと思います」と穏やかなほほ笑みを浮かべた。

「初めて病院での診察を検討しているとき、大げさかなとハードルを感じたか」との問いかけが、想さんとその母、そして黒沢さんにされた。想さんはバツを、他の二方はマルをあげた。

想さんは「最初に体質じゃなくて病気なんだとわかった時に、病気なら治したいなと考えたので、抵抗なく診察を検討しました」と、そもそも多汗症が病気である認識していたことを伝えた。

想さんの母は「一番最初は多汗症の認識がなくて、受診していいのかなと思っていました。ただ、娘の困っている状況を見ていて受診する必要を強めていきました」と認識の移り変わりを語る。

想さんは高校の自分のマイノリティをテーマにして社会にアプローチする探究学習の時間で多汗症をテーマにした。それで、より知識を得ることができ、NPO法人とも繋がって黒沢さんとも繋がったそうだ。

「皮膚科で適切な診断と保険治療が受けられることを事前に知っていましたか」の問いかけがされると、これには黒沢さんも山形親子もバツ。

想さんは探究学習の際に知り、想さんの母は最初に受診した皮膚科で断れたので高額治療の必要性を感じていたそうだ。黒沢さんは他の治療でかかっていた医師から教えられて驚いたエピソードを明かした。

藤本先生は「肌感としてようやく知られているなと感じるところもあるが、ここ3年で変わってきた。これまでは辿り着く人も少なかった」と所感を語り、「ワキ汗の診断は直接ワキを見る必要がなく困ってる状況の聞き取りだけ。男性の医師に見せるかもと躊躇している人も怖がらず診断して欲しい」と続けた。

最後の質問として「どういうきっかけがあれば医療機関で治療を受けると思いますか」が全員に投げかけられた。

想さんは「まずは保険適用の認識が中高生に広まれば費用面の心配はずいぶん少なくなると思います。自分がどれだけ困っているのかが多汗症の治療を受ける一番のポイントになると思うで、親が気付くまで待つより困っているんだと打ち明ける勇気が必要だと思います」と語った。

想さんの母は「打ち明けられてから、ちょっと気をつけてみていると過ごしづらさがわかるので、一番近くにいるおやとして見て気付いてあげることが大事じゃないかと思います」と話した。

黒沢さんは「もし娘が多汗症で私が多汗症じゃなかったら、病院で受診することをイメージできるか、あまり自信がありません。多汗症は病気であることの認知度が上がればいいなと思っています」と啓蒙の必要性を訴える。

そして藤本先生から「病院を受診しても解決されなかったという声を時々聞きます。皮膚科もそうですが、小児科や内科ではまだまだ啓蒙が足りていません。治療へのアプローチがあること、保険適用の治療薬があること、それらの啓蒙活動はこれからも続けていきたいと思います」と、医師であってもまだまだ知られていない現状について明かした。

山形親子からのメッセージ

最後に山形親子からそれぞれ手書きメッセージとそこに込めた想いを語った。

想さんは「1人じゃないよ!」と書き、「マイノリティだと思って始めた探究ですが、実は周りに(多汗に悩む人が)いっぱい居ることを知りました。あなただけじゃないから色んな人に頼ってほしいなって思いを込めました」と多汗症患者への激励を伝えた。

想さんの母からは「子供が大きくなって思春期になるとコミュニケーションを取りづらくなってしまうんですけど、親は身近な存在だと思うので。悩む子供としっかりコミュニケーションをするのが大事だと思います」と親としての目線での想いを明かした。

「多汗症は病気であり、保険適用もされる」事実がより世間に広がることを祈るばかりだ。また多汗症患者の若者はTwitterで繋がることが多く、ハッシュタグ「#多汗症」が多用されているそうだ。気になっている人は一人で悩まず、どんどん繋がっていこう。

データ&写真提供:科研製薬株式会社
取材・文:モトタキ

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