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「父上、朝っぱらから姉上と何をしているのですか!?」 オスの直観?息子の異変に気づく父……息子が目撃した衝撃の現場 ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~



オスの直観?息子の異変に気づく父


台風のおかげで絶世の美女・紫の上をチラ見出来た源氏の息子・夕霧は、すっかり彼女に魅せられてうわの空。翌日も、まだ夜も明けないうちからそそくさと六条院へやってきました。「夕霧が来たようだ。ずいぶん早い時間なのに」。源氏の言葉に紫の上が何か返答していますが、内容は聞こえません。わかるのは、2人がうらやましいラブラブ夫婦だということだけ。


源氏は昨日、秋好中宮の方には何も気を回さなかったことを反省し、夕霧に手紙を持たせます。帰って来て夕霧は「中宮様はとても怯えていらしたそうですが、お見舞を頂いてやっと人心地がつきました、とのことです」。


源氏は「繊細なお方だからね。気が利かなくて申し訳なかった。今からでもご挨拶に行こう」と、着替えのために部屋の中に引き返します。


源氏がめくった御簾の奥には、美しい衣の袖口がチラリ。几帳を立ててあるのでハッキリわかりませんが、夕霧の心は(あれは紫の上さま!)とドキドキ。(い、いけない!!これ以上見ちゃダメだ)とわざと視線をそらしたりして、ひとりで大騒ぎです。カワイイ。


念入りに支度をした源氏が出てきても、夕霧の眼差しは父の方ではなく、めくられた御簾の奥にピタリと合っています。おや?


鋭い源氏はそれを見て不審に思い、再び室内に引き返して「昨日、夕霧に姿を見られたんじゃないか?あっちの戸口が空いていただろう」。紫の上は顔を赤らめながら「まさか。渡り廊下の方からは何も聞こえませんでしたわ」と否定します。


「そうだろうか、おかしいな」。源氏は納得が行かないまま、夕霧をお供に秋の御殿へ移動。夕霧から紫の上を最初から遠ざけておいた周到さもさることながら、ここでもオスの直観とも言うべきものが働いていて、ちょっと怖いくらいです。


「父娘で一体何を!?」息子が目撃した衝撃の現場


中宮を見舞ったあと、源氏はそのまま冬の御殿へ。明石の上は台風一過にもののあはれを感じ、しっとりと箏の琴などを演奏していましたが、源氏のお出ましと聞いて素早く身支度します。リラックスした部屋着の上に一枚上着を来て、きちんとみせる。こういうときにも常に気配りを欠かさないソツのなさです。


ところが、源氏は通りいっぺんのお見舞を言ったあと、すぐに席を立ちます。(せっかく来てくださったと思ったら、それだけ?)明石の上はがっかり。どうも、こちらはちょっとご無沙汰のようですね。


源氏が明石の上もそこそこに来たかったのは、もちろん玉鬘のところです。風の音で眠れず、明け方ようやくうとうとした彼女は、今やっと起きて朝のメイク中。源氏はひっそりと部屋に入ります。


風のために屏風や几帳も片付けられていたところに、朝日が差して玉鬘の美貌が輝きます。ふっくらした薔薇色の頬はつやつや、こぼれかかった黒髪に映える白い肌。


ついでに、目元がくっきりしていてちょっと品がなく見える、とも表現されていますが、今で言う目力美人なのでしょう。


源氏は近々と玉鬘に寄っていき、朝っぱらから口説き文句を連発。玉鬘はプイッとして「また困ったお話。私、昨日の風に吹かれてどこかへ飛んでいってしまえばよかったですわ」


源氏は面白がって「おや、風に吹かれて誰のところへ行くつもり?」。玉鬘も思いがけず本音を言ってしまったのがおかしくて、自分で吹き出してしまいます。笑った顔がまた可愛い!


夕霧は外で待っていましたが、父がなかなか出てこないのと、前から評判の玉鬘を見たい好奇心にかられて、覗きを実行。片付いた室内と朝日のおかげで、彼がハッキリと見たのは、父と姉がイチャイチャしている姿でした。まだ午前中ですよ!


(どうなっているんだ。小さな子でもあるまいし、あんなにくっついて…あ!)玉鬘は柱に隠れるようにしながら源氏に抱き寄せられていく。困った風ではあるけれど、抵抗する様子もなく、2人は恋人同士のように抱き合っているのです!しかも、昨日今日に始まった関係ではなさそう。


(ああ!なんておぞましい!実の親子じゃないか!!美人は見逃さない父上のこと、きっとこんな下心もあって、玉鬘の姉上を引き取られたのだろう。由々しきことだ、うわあ……)。夕霧は玉鬘の出生を知らないために、実の父と娘が愛し合っていると早合点し、大ショック。まあ、そりゃびっくりするよね。


身内のインモラルな関係にゾッとしつつも、一方で(紫の上さまには負けるけど、玉鬘の姉上も本当に綺麗だ。華やかで愛らしくて。夕日に照らされた八重山吹みたい。母違いなんだもの、もし姉弟でなかったら僕だって……)とも思う夕霧。男心は複雑だ。


女房たちも来ない中、2人はイチャイチャを続けていましたが、源氏は真面目な顔で立ち上がります。その後に続くやり取りも色っぽく、夕霧はさらに嫌悪感がつのります。でも、嫌だと思いつつなかなか目が離せないこの不思議。


夕霧はしばし佇んでいましたが、源氏が出てくるとマズいと思い、昨日と同様さっとその場を離れます。それにしても、女房達ははこの間一体何をしてたんでしょう?


生活感溢れる会話、愛欲に振り回されずに生きる道


源氏はその足で同じ夏の御殿の花散里の元へ。朝晩冷えるようになったので、花散里は秋冬物の衣装を仕立てている最中です。


「この台風で宮中での秋の庭の宴も中止になりそうだ。全くつまらない秋になりそうだよ。……どれも綺麗に出来ているね。若い人向けの色だから、夕霧用に仕立ててやって下さい」。


花散里のところでは、源氏の言うことも生活感のある、事務的かつ家庭的な内容。色ごとの多いこの物語の中では、ある意味異色です。


男女のことを自分から諦めた一抹の寂しさはあるものの、得意分野で実力を発揮し、やることもいろいろある花散里の充実ぶり。紫の上や玉鬘などと違い、源氏の愛欲に振り回されず、趣味に打ち込む人生も案外にさっぱりしていていいのかも。


頭はいいのにセンスは皆無!夕霧のラブレター事情


夕霧は朝からドキドキすることだらけで気疲れし、すっかりくたびれてしまいました。スッキリしない気分のまま、ちい姫の部屋へ。「姫様はまだお母さま(紫の上)のお部屋に行かれたままですのよ。風を大層怖がられて、今朝はお布団から出て来られなかったのです」と、乳母。


「大変な荒れ模様だったからね。こちらに詰めていようかと思ったんだけど、お祖母様がとにかく心配だったので。お人形の御殿は無事でしたか」。女房たちは笑って「それはもう!扇の風でも大騒ぎですのに、本当に大変でしたわ」


こんな冗談を言いながら、夕霧は「ちょっと手紙を書きたいので、紙と硯を貸してください。ありきたりなのでいいよ」。女房は薄紫の綺麗な色紙を一巻出してきます。「ずいぶんいいのを出してくれたね」と言いつつ、夕霧は丁寧に墨をすり、筆使いに気をつけながら書き進めます。


女房たちは誰に宛てた手紙なのか興味津々。それは雲居雁への台風見舞いでした。きれいな字ですが、内容は「風騒ぎむら雲迷ふ夕べにも 忘るるまなく忘られぬ君」。うーん、恋人に贈るにはちょっと味気ない内容です。


夕霧は手紙をそのへんに落ちていた刈萱(かるかや・ススキのような細長い葉)に結びつけます。大切な人への手紙は花や紅葉の枝など、季節感のあるものや、手紙の内容とリンクしているものにつけて渡すのがおしゃれ。なにもわざわざその辺の、単子葉植物の草きれにくっつけんでも、という感じです。


ちい姫の女房たちも見ていられなかったのか、「あら、せっかくですから、紙の色に合うお花などにされては?」とツッコミ。紙を提供した方としても口を出す権利はあるでしょう。お兄さん、それでいいの?


「ああ、そっか……僕はどうもこういうのが苦手で。どういう花ならいいんだろう」。言いながら夕霧はもう一通手紙を書き、使いの者に渡します。もう一通は藤典侍宛でしょうか。


かように、夕霧は真面目で頭がよく、ただの女房たちにも礼儀正しく振る舞う誠実な貴公子なのですが、こういう気配りセンスや感性を活かしたコーディネートが無理。どうしても頭でっかちに考えがちです。この点は父の源氏にまったく似ておらず、四角四面でお硬かった母・葵の上のDNAなんだろうな、と思わせます。


妹の顔も見れない?一流レディの英才教育


にわかに女房たちがざわめきだし「姫さまのお戻りです」と声が。夕霧はこっそりちい姫を覗こうと物陰に隠れます。というのも、ちい姫のレディとしての英才教育も本格化して、最近ではめっきり顔を見る機会もなくなったからなのです。風呂の覗きでもあるまいし、わざわざ物陰から妹を見るのは現代人からするとなんとも変な感じですね。


大人の女房たちに埋もれて、ちい姫はなかなか見つけられません。が、よく見るとほっそりと華奢な体つきの、可憐な少女の姿が見えます。まだ髪は背丈には届いておらず、裾が広がっているのが可愛らしいです。


少し見ない間に大きくなって、一層可愛くなった!年頃になったらどんなに美人になるだろう。紫の上さまが桜、玉鬘の姉上が山吹だとすると、ちい姫はさながら藤の花といったところだな。僕も毎日、こんな美人ばかり見て暮らしたい!!


血のつながりはなくても家族なんだから、もっと親しくお付き合いさせて頂いたっていいはずなのに。父上が厳しくするのが恨めしい……)。


台風のおかげでよりどりみどりの美女を見ることが出来、心の中が乱れに乱れた少年・夕霧。異母や異父の姉弟姉妹が当たり前だった時代は、そういった所から過ちが起こったりもしたのでしょう。なんとなく、ヘタに隠すから余計そうなるのでは?という気もするのですが…。


源氏は夕霧の妻や娘への接触を厳重に制限する一方で、自らは(実際は血のつながりのない)養女に迫っています。今回、夕霧は父の矛盾を目撃してしまい、余計に気持ちの整理がつかなくなって、最後まで落ち着かないままでした。それにしても、恋人からの手紙が何の面白みもない葉っぱと一緒に贈られてきたらちょっとガッカリですよね。


簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html

源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/


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(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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