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小惑星に「巨大な日傘」をつなげて地球への太陽光を遮る計画!


真夏の太陽の下では「日傘」が欠かせないという方も多いでしょう。

しかし今、天文学者たちはより大きなものに日傘をさそうと考えています。

米ハワイ大学天文学研究所(UHIfA)は先日、温暖化を緩和するために、地球に巨大な日傘をさして日射量を減らす計画を発表しました。

果たして、この計画はどれほど現実味のあるものなのでしょうか?

研究の詳細は、2023年7月31日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

目次

  • 地球に日傘をさして日射量を減らす
  • 日傘を地球の前に固定する方法とは?

地球に日傘をさして日射量を減らす

日射量を減らす突拍子もないアイデアとは?
Credit: canva

過去100年間で地球の平均気温は上昇し続けており、温暖化を食い止めることは喫緊の課題です。

科学者たちは考えられる全ての選択肢を真剣に検討していますが、新たに提案されたアイデアは突拍子もないものでした。

発案者の一人であるUHIfAの天文学者イシュトヴァン・サプディ(István Szapudi)氏は、そのアイデアを一言でこう話します。

「小惑星を捉えて地球の前に駐在させ、そこに日傘をつないで太陽光の一部を遮る」

まるで子供が自由な発想で思いついたような方法ですが、これは専門的に「太陽放射管理(ソーラージオエンジニアリング)」と呼ばれ、工学的アプローチで地球に当たる日射量を減らすことを目的とする研究分野です。

サプディ氏は「日中のハワイでは多くの人が日傘をさして歩いている」のを見て「地球にも同じことができるのではないかと考えた」と言います。

では、具体的にどんな方法を構想しているのでしょうか?

太陽風に吹き飛ばされないためには?

地球に日傘をさすための主な課題は「太陽風や放射圧に吹き飛ばされないようにすること」です。

海辺の強風で無惨に飛んでいくパラソルのようになっては困りますから。

そこでこの難点をクリアするには、必然的に日傘の重量を大きくする必要があります。

しかし、地球への日射量に影響を与える巨大な日傘を宇宙空間に打ち上げるのは莫大なコストがかかりますし、技術的にも現実的ではありません。

そこでサプディ氏らが提唱するのは、近場の小惑星を捕獲して、そこに日傘を結びつける方法です。

小惑星を錘(おもり)にすれば、地球から持ち運ぶ日傘の重量を大幅に軽量化できます。

現時点の試算によると、日傘が太陽風に吹き飛ばされないためには約350万トンの総重量が必要ですが、小惑星を錘として使えば、日傘自体の重量はその100分の1の約3万5000トンで済むという。

小惑星に日傘を結びつけるイメージ図
Credit: UHIfA –Sun ‘umbrella’ tethered to asteroid might help mitigate climate change(2023)

しかしその軽量化に成功したとしても、現時点でのロケットの最大積載量は約130トン程度で、3万5000トンには遠く及びません。

この課題についてサプディ氏は、日傘に用いる材料を軽量なものに変えて、重量をさらに減らす方法を考えています。

あるいは部品ごとに地球から運び出し、宇宙空間で日傘を組み立てる方法も有効かもしれません。

では、この問題が解決できたとして、日傘を同じ位置に安定して駐在させるにはどうすればいいのでしょうか?

日傘を地球の前に固定する方法とは?

この計画では地球に日傘をつなげるわけではありませんから、太陽風と関係なく、小惑星がどこかに浮遊していってしまう可能性があります。

そこでサプディ氏が考えているのは、地球と太陽の「ラグランジュ点」に日傘を置くことです。

地球の公転軌道上には、太陽と地球の重力バランスがつり合う特殊なポイントが5つあります。

これをラグランジュ点と呼び、このポイントに天体があると、太陽と地球との相対的な位置関係が変わることなく、安定して留まることができるのです。

2つの天体の重力バランスがつり合う5つのポイント(L1〜L5)
Credit: ESA – The five Lagrange points(2021)

ここに人工衛星を置けば、太陽と地球との位置関係が変わらないので天体の観測がしやすくなる上に、軌道上の位置を維持するためのエネルギーも最小化できて運用も効率的です。

サプディ氏は日傘を置く最適なポイントとして、地球と太陽の間に位置するラグランジュ点1(L1)を想定しています。

このポイントであれば、安定して地球に当たる日射量を減らすことが可能でしょう。

ラグランジュ点に置けば同じ位置に留まることが可能
Credit: UHIfA –Sun ‘umbrella’ tethered to asteroid might help mitigate climate change(2023)

サプディ氏は、こうしたアプローチについて「温暖化の絶対的な解決策とはならないまでも、気候変動の影響を一時的に緩和する方法にはなり得る」と指摘します。

これは現在のテクノロジーでは完全に荒唐無稽なアイデアではないと研究者は語りますが、最大の問題は係留ケーブル(テザー)を作る技術です。

このアイデアは軌道エレベーターの建設とコンセプトが近いため、桁違いに長く堅牢なテザーを開発する必要があります。

軌道エレベーターは地上と軌道上の静止衛星をテザーでつなぎ、それを基礎として地上と宇宙を繋ぐエレベーターを作るというアイデアです。

宇宙の日傘を小惑星に長期間安定して繋ぎ止めるには、軌道エレベーターを支えるテザーと同レベルのものを用意する必要があるのです。

これはすぐには開発できないでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Giant Umbrella Tied to Asteroid Can Help Fight Climate Change, Scientist Says https://www.sciencealert.com/giant-umbrella-tied-to-asteroid-can-help-fight-climate-change-scientist-says Sun ‘umbrella’ tethered to asteroid might help mitigate climate change https://www.hawaii.edu/news/2023/07/31/sun-umbrella-tethered-asteroid/

元論文

Solar radiation management with a tethered sun shield https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2307434120
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