何故日本人は「千羽鶴」を送るのか?実際送った人を参考に考えてみた。
西日本を襲った記録的な豪雨による被害状況が新聞やテレビ、ラジオなどで伝えられていますが、その状況はあまりにも悲惨で心が痛みます。今や、日本中、いえ世界中の人々がこの状況に関心を持ち、一刻も早く元の穏やかな生活が取り戻されることを願っていることでしょう。そんな中、ネット上では被災地へ千羽鶴を送ることについて多くの意見が飛び交っています。
-千羽鶴の意味するもの
知人が病気になったりすると千羽鶴を折って贈ることがあります。また、何か願い事があるときなどにもそれが叶えられるようにという気持ちを込めて千羽鶴を折ることもあります。なぜ、日本人は折に触れて千羽鶴を折るのでしょうか。日本では、”鶴”は昔から縁起の良い鳥とされていました。また、折り鶴を折るたびに寿命が延びるとも考えられていました。
広島市に佐々木貞子さんという女の子がいました。彼女は白血病のためにわずか12歳という年齢で亡くなってしまいました。彼女は2歳の時に原爆の投下により被爆したのでした。10年ほど運動の得意な女の子として成長しましたが、12歳の時に突然に体調をくずし病院で検査をしたところ、白血病と診断され闘病生活を余儀なくされました。
お見舞いに贈られた千羽鶴を見て、千羽鶴を折れば病気が治ると信じて鶴を折り始めました。彼女は千羽の鶴を折り上げた後も鶴を折り続けたのですが、病気が治ることはなく亡くなってしまいました。闘病生活を始めてから8か月後のことでした。
彼女が亡くなった後、彼女の同級生たちが、「原爆で亡くなったすべての子どもたちのために慰霊碑をつくろう」と全国へ呼びかけ、完成したのが「原爆の子の像」です。この像の完成とともに、千羽鶴は平和のシンボルという意味合いも持つこととなり、毎日多くの鶴が献納されるようになりました。
日本人にとって、千羽鶴は、”縁起の良いもの”、”願いが叶うもの”、”平和のシンボル”といった意味を持つものなのではないでしょうか。当然ながら、千羽鶴をどの意味でとらえるかは、それぞれの人にとって異なるでしょう。しかし、受け取る人のことを思って折っているということに変わりはないでしょう。
-被災地に千羽鶴を送るのはどうなのか
ネット上では、被災地に千羽鶴を送ることに対する意見が飛び交っています。被災された地域、そこに住んでおられる方々の現状や心情を考える時、何か自分あるいは自分たちにできることはないだろうかと考えるのは極々普通のことでしょう。ボランティアとして参加したい、支援物資を送りたい、千羽鶴を送りたいなど色々な考えが頭の中に浮かんできます。どの人の考えも善意から生まれてくるものでしょう。
でもここで忘れてならないのは、これらの善意を受け取る側(県・市・町・個人)の状況を理解することです。受け取る側は、善意を有難く思っているでしょう。でも、すべてのものを受け取ることは可能なのでしょうか。あなたのところにいきなり色々な物が送られてきたらどうでしょうか。いきなり大勢の人が、「何かお手伝いしますよ。」といって現れたらどうでしょうか。
あらかじめわかっていれば、スムーズに好意を受け取ることができますが、そうでない場合はとても困った状態になります。それは被災地の側でも同じことではないでしょうか。ましてや被災地は個人ではありませんから、送られてくる物の量は大量です。また、必要なものは日々変わって来るでしょう。受け取る側は、全体を見通して整理していかなければなりません。送る側はそのことを十分に考慮する必要があります。
では千羽鶴を送ることについては、どのように考えたらよいでしょうか。送ろうと考える人は、被災地の方々を励ましたい、1日も早くいつもの生活に戻れるようにという願いを伝えたいと考えているのでしょう。確かに願いの込められた千羽鶴を見ることによって、慰められ励まされる人はいるでしょう。そのことは決して否定しません。
しかし、今は、現状回復に必死になっているときです。浸水被害のために泥まみれになった家屋・家財を炎天下の中で必死に片づけている人々の姿で一杯です。洗って再度使用できるのならばまだしも、再利用できないのならば処分しなければなりません。処分する場所や費用は計り知れないでしょう。
千羽鶴に込められた気持ちは有難く思うでしょう。しかし、今は、それを受け取るだけの余裕があるのでしょうか。自分の思いだけではなく、受け取る側の状況を理解することも必要だと思うのです。どうしても送りたいという人は、その自治体なりに連絡をして受け取ってもらえるかどうかの確認をしてはどうでしょう。被災にあって心細い思いをしている人の中には、千羽鶴によってかなり癒されるということも考えられます。
西日本豪雨がもたらした災害は甚大なものでしたが、ネット上では、「被災地に送る千羽鶴は善意か無駄か」という議論 が激化しているようです。
(秒刊サンデー:わらびもち)
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