はじめに


日本の鉄道路線をプライベートで全て乗車した鉄旅タレント・木村裕子が、鉄道初心者さんでも楽しめる「おもしろ鉄旅プラン」をご提案。今回は、“サプライズ演出”ができる一風変わった路線を紹介します!

Text&Photo:木村裕子

旅の楽しさが全部叶っちゃう欲張り路線


鹿児島県の薩摩半島を鹿児島湾に沿って走るJR九州の指宿枕崎線は、この路線1本だけで「観光」「食べもの」「温泉」「景色」の全てを満たしてくれる欲張り路線。鹿児島中央駅から、有名な温泉地である指宿を通り枕崎駅を結んでいます。鹿児島県の端っこと聞くとなんとなく遠いイメージがありますが、鹿児島中央駅は新幹線の駅もあり、鹿児島空港からも連絡バスで40分ほど。そのため、陸からも空からも比較的アクセスのしやすい路線なんです。

それでは、JRの最南端を走るこの路線ならではの「楽しい!」をご紹介しましょう。

まさかの演出! 突然立つ煙は列車故障じゃありません



白と黒がはっきりと顔の真ん中で分かれたインパクト絶大の車両は、観光列車「指宿のたまて箱」です。この沿線は浦島太郎伝説の発祥地であることから、浦島太郎が竜宮城で玉手箱を開ける前の髪が黒かったときと、開けた後のおじいさんに変身した白髪をイメージした外観となっているんです。列車到着時には、乗降ドアの上部からプシューと真っ白なミストが降りかかります。首都圏を走る通勤列車なら車両故障かと思ってしまいますが、玉手箱の煙に見立てた演出とのこと。お客さんを驚かせてくれる素敵な演出ですよね。もちろんこの煙を受けても変身はしないので、安心して全身で浴びてみてくださいね。

大切な人へのサプライズ演出にピッタリ!


指宿のたまて箱、通称「いぶたま」の車内はまるで竜宮城のよう。海側の窓に面した座席や指宿に関する本棚のあるソファー席、子供用のキッズチェアなんかもあります。そしてぜひ探して欲しいのが、車両のどこかにある玉手箱! 玉手箱の中にメッセージを書いて入れると、なんと、車掌さんが読み上げてくれるんです。 一緒に乗った人へのサプライズ告白なんて素敵じゃないですか? 直接言うのはちょっと恥ずかしい「ありがとう」や「好き」の気持ちをこの手紙に託してみて下さい。きっと、送った側も受け取った側も心が温かくなる、最高の思い出になると思いますよ。

JR日本最南端の駅で“幸せ”を投函



鹿児島中央駅から「いぶたま」の終点指宿駅に到着。有名な温泉地であることから、駅前には大きな足湯が設置されています。ここで旅の疲れを癒したら、普通列車に乗り換えて西大山駅へ向かいましょう。ここは“JR日本最南端の駅”として鉄道ファンに人気のある駅なんです。その人気の理由は、ホームからの絶景! 駅周辺は畑に囲まれているため視界を遮るものがなく、ドーンとそびえ立つ開聞岳を望めます。また、駅前には、指宿市の花に指定されている菜の花にちなんで「幸せの黄色いポスト」が設置されています。駅前の漬物屋「かいもん市場久太郎」では絵葉書と切手を販売しているので、開聞岳を眺めながら思いを綴って“幸せ”を投函してくださいね。

コラーゲンたっぷりな豪快すぎる郷土料理


この鉄旅の〆にぜひ味わってほしい郷土料理は、終点枕崎駅周辺で食べられる「ビンタ料理」です。枕崎市は鰹節の産地として有名で、さまざまなカツオ料理が食べられます。そのなかでもとっておきの料理が、「カツオのビンタ」。“ビンタ”とは鹿児島の方言で“頭”という意味。つまり、カツオの頭料理なんです! 味噌でじっくり煮込んだ頭は見た目が衝撃的ですが、臭みもなくトロットロで、目の裏にはプルンとした食感のコラーゲンがたっぷり。この地方では、歓迎会などで出す縁起の良い料理として愛され続けているそうですよ。

最後に木村ポイント!


JR最南端の西大山駅から車で約15分ほどの場所には、乙姫さまを祀る竜宮神社があります。浦島太郎が竜宮城へ旅立った地とされていて、周辺の砂浜には夏になるとウミガメが産卵にやってきます。ここは浦島太郎と乙姫にちなんだ出会いの神様ということで、貝殻に願い事を書いて、かめ壺に奉納する“おもしろ神社”でもあります。鉄旅と一緒に、素敵な縁の引き寄せパワーも受け取ってきてくださいね。
 



情報提供元: 旅色プラス