2018年2月、新たに電子制御式スロットルを採用したホンダCRF1000Lアフリカツイン アドベンチャースポーツを試乗。890/870mmという高めに設定されたシート高は、ベテランライダーならば難なく乗りこなせるのか? ツアラーとしてはもちろん、日常使いのバイクとしての可能性も探ってみた。


REPORT●近田茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ CRF1000L Africa Twin Adventure Sports……1,551,960円

ホンダ CRF1000L Africa Twin Adventure Sports Type LD……1,551,960円

 2016年の2月、ホンダから復活の狼煙を上げてデビューしたCRF1000Lアフリカツイン。年間1000台の販売計画を打ち出すも発売僅か1週間でそれを上回る受注を達成する人気でも話題に登ったモデルだ。ホンダではアドベンチャーモデルと謳い、全て新開発のリバイバルブランドに多くの注目が集まった。




 デビュー2年目の今年2月には、マイナーチェンジを実施。電子制御のスロットル・バイ・ワイヤーシステムを採用。車両重量の軽量化も図られ、最新のアドベンチャーモデルに進化した。そして今回の試乗車は4月に投入されたアドベンチャースポーツ。昔はバハというネーミングが使われていたのを思い出したが、24ℓ容量のビッグタンクを搭載。大型スクリーンや各種ガードの装備等ヘビーデューティーな仕上がり。さらにストロークを増した前後専用のサスペンションで武装。アドベンチャーモデルとしてより強化した内容を誇っている。


 ちなみに6速MT 標準モデルの価格は税込みで138万2400円。アドベンチャースポーツは155万1960円。DCT モデルは169万9960円になる。なお アドベンチャースポーツには60mmローダウン仕様も選択可能とされている。

体重50kgではサスはそれほど沈まず……

山田カメラマンにマッチ棒の様と言われてしまったバレリーナ状態。シート高は890mmの標準状態で足着き性をチェックした。シートを低くセットすれば標準車と同じ870mmになる。

両足の爪先は接地しているが、バイクを支える踏ん張りには乏しい状態。平静を装うも、失敗をしないよう実はかなり緊張している。

 試乗車を手にするとやはり大きい。やせ型身長170㎝ の筆者がそれを取り回す時、ハンドルは胸の高い位置に来るし、車重230 ㎏の手応えはズッシリと重い。失敗すると自分では支えきれないという思いが頭に浮かび、おのずと扱いは慎重になる。意識して平地を選んで跨がると完全にバレリーナ状態。両足をピーンと真っ直ぐに下ろしてかろうじて両足の爪先が地面を捉える状態だ。2段式のシート高は低い方で870mm 。それなりの体重があればサスペンションが沈んでいくらか楽にはなると思うが約50㎏の筆者ではそれも期待できず、市街地走行で停車する時は、できる限り歩道の縁石(踏み台)のある所を探して停止する感じ。それも叶わぬ時は慎重にバイクを垂直に保って止まるが横風でも拭かれたらと思うと少々不安。まあ、身長180㎝ 以上の体格に恵まれた人ならそこまで神経質にならなくてもよいだろうが。

悠然とおおらかな乗り味がもたらす安定感はとても快適。

 そんな訳でストップ&ゴーの多い首都圏で生活している筆者にとって、アフリカツインを気軽(足代わり)に乗りたいとは思えなかった。でもね正直本音を吐露すると、この手のバイクは大好きだ。旅情、それも冒険心がくすぐられる。ツーリングに出かけるにも、ひとつ気分が異なる領域に入る。ごく簡単に説明するといつもと違うワクワク感が楽しめるのだ。


 背の高いシートに跨がると前面に広がる視界の広さと高さがまた気持ち良い。堂々と背筋を伸ばし、気持ちの良い風を浴びて走る様はまさにアドベンチャーの世界に入り込める様な感じ。しかも本格的なオフロードをカバーする贅沢な前後サスペンションは初期の作動特性に優れロードホールディングは抜群。フロント21インチサイズの細めのタイヤから発揮される直進安定性も含めて長距離を一気に走れる快適な乗り心地も魅力的だ。

秀逸な電子制御システム

左のスイッチで各種制御モードの切り替えができる。左端の小さなスイッチはグリップヒーター用。ホーンボタンよりも下にウインカースイッチを配置。DCT仕様ではクラッチレバーの代わりにパーキングブレーキが装備される。

 7段階の選択可能なトルクコントロールシステムも導入され、ライディングモード選択はツアー、アーバン、グラベル、ユーザーの4モード選択ができる。


柔軟かつ頼り甲斐のある図太い出力特性も心地よくジェントルな気分で快適にツーリングできる。パニアケースをフル装備して泊まり掛けのツーリングにも最適。時に舗装路を外れる機会があっても安心にかつ楽しく走破できるところに大きなそして確かな魅力がある。




 なお、今回は100㎞ 程度の試乗で走行条件も悪かったが燃費率は15.2㎞/ℓだった。ざっくり満タンで360㎞以上は後続走行できる計算。知らぬ土地を行くアドベンチャーツアーでも心強い。

ディテール解説

ビッグタンクと各種ガード類の標準装備がより本格的なヘビーデューティ仕様であることを主張する。

270度位相クランクの並列ツインエンジンはトラクションに優れる駆動力を発揮する。燃料タンク容量は標準より6ℓも多い24 ℓ大容量を誇っている。

フルアジャスタブルのφ45mm倒立式フロントフォークは標準よりも長い約250mm のストロークを誇り、270mm のロードクリアランスが稼ぎだされた。ラジアルマウントされた対向4ポットダブルディスクブレーキのキャリパーはNISSIN製。

リヤもホイールトラベルを約20mm増やしている。プロリンク式のモノショックサスペンションで構成部品にはアルミ鍛造品を使用。ダイヤル式のプリロード調節と減衰力は伸び圧ともに調節できる。

右サイドに撥ね上げられたマフラーは3室構造を採用。シート脇の2点とピリオンステップステー部でパニアの装着に対応。脱着は簡単に扱える。

テーパーパイプを使用したハンドル位置は高く、堂々たるライディングポジションが楽しめる。立ち気味のスクリーンはウインドプロテクション効果も高い。

デザインが一新された大きな縦型液晶ディスプレーを活用するメーターまわり。電子制御の設定状況等、多くの情報がわかりやすく表示される。

フルアジャスタブルのフロントフォークは左側が伸び側の減衰調節、圧側の減衰調節は右側のフォークで行う。

ほぼフラットにつながる前後シート。スエード調のシートはグリップも良く乗り心地も快適だ。キー操作で前シートが脱着でき、取り付け位置は20mm下げることもできる。

特に収納スペースは無いが、フロントシート下にはETCユニットが綺麗に納められていた。

CRF1000L Africa Twin 主要諸元

CRF1000L Africa Twin Adventure Sports ※〔 〕内はType LD


車名・型式 ホンダ・2BL-SD04


全長(mm) 2,340〔2,310〕


全幅(mm) 930


全高(mm) 1,570〔1,510〕


軸距(mm) 1,580〔1,560〕


最低地上高(mm) 270〔210〕


シート高(mm) 890(ローポジションは870)〔830(ローポジションは810)〕


車両重量(kg) 243〔242〕


乗車定員(人) 2


燃料消費率(km/ℓ) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 32.0(60)〈2名乗車時〉


WMTCモード値(クラス) 21.1(クラス 3-2)〈1名乗車時〉


最小回転半径(m) 2.6


エンジン型式 SD04E


エンジン種類 水冷4ストロークOHC(ユニカム)4バルブ直列2気筒


総排気量(cm3) 998


内径×行程(mm) 92.0×75.1


圧縮比 10.0


最高出力(kW[PS]/rpm) 70[95]/7,500


最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 99[10.1]/6,000


燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉


始動方式 セルフ式


点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火


潤滑方式 圧送飛沫併用式


燃料タンク容量(ℓ) 24


クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式


変速機形式 常時噛合式6段リターン


変速比 1速 2.866


2速 1.888


3速 1.480


4速 1.230


5速 1.100


6速 0.968


減速比(1次/2次) 1.733/2.625


キャスター角(度) 27゜30′


トレール量(mm) 113


タイヤ 前 90/90-21 M/C 54H(チューブタイプ)


後 150/70R18 M/C 70H(チューブタイプ)


ブレーキ形式 前 油圧式ダブルディスク


後 油圧式ディスク


懸架方式 前 テレスコピック式


後 スイングアーム式(プロリンク)


フレーム形式 セミダブルクレードル
情報提供元: MotorFan
記事名:「 足つきチェック!……身長170cmの場合/ CRF1000Lアフリカツイン アドベンチャースポーツ試乗レポ