デビュー以来、これまでのアストンマーティンにはない斬新なデザインとともに完成度の高さが話題となっている新型「ヴァンテージ」。ここでは、このヴァンテージに展開されたエンジニアリングを中心にその魅力と実力に迫る。




REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

斬新なデザインには理由がある。

その進化は想像をはるかに超えていた。これまでのトラディショナルなスタイルから一転、きわめて斬新なボディデザインを採用した、アストンマーティンの新型「ヴァンテージ」。そのボディに包み込まれるメカニズムもまた、アストンマーティンに新時代が訪れたことを象徴するものばかりだ。




新型ヴァンテージのテストドライブ・プログラムは、ポルトガルのアルガルヴェ・インターナショナル・サーキットで始まった。それはこの新型ヴァンテージが、あくまでもピュアスポーツとして生を受け、開発時には運動性能のベンチマークをポルシェ911に定めていたとアストンマーティンが公言していることを考えれば当然の選択ともいえる。




デビュー時には賛否両論があった新型ヴァンテージのボディデザインだが、改めてサーキットで見るそのディテールは、実に魅力的なものだった。もちろんこれらの造形は、デザインとして斬新であるばかりではなく、エアロダイナミクスを最適化することを目的としたもの。実際にサーキットドライブで感じたスタビリティは素晴らしいものだった。

新型ヴァンテージには、最新世代のボンド接着製法によるアルミニウム製のシャシーが与えられた。それはDB11にも採用されている技術だが、新型ヴァンテージとDB11で共通するコンポーネントは30%程度だ。参考までに捻じり剛性は、先代ヴァンテージの23000Nm/degから32000Nm/degへと飛躍的に向上。その効果はコーナリングで感じるナチュラルな動きのみならず、オンロードスポーツカーとして十分に快適な乗り心地が実現されていることにも表れている。




サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リヤはマルチリンクというデザインで、これにアダプティブ・ダンピングシステムを組み合わせているのが特長だ。ステアリングに備わるスイッチで、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「トラック」の各モードを選択可能とし、それにリンクしてスタビリティコントロールや電動パワーステアリングの制御も変化する。一方でパワートレーンも独立してこのモード選択ができるから、ドライバーはシチュエーションに応じてさまざまなキャラクターを楽しむことができる。




フロントに搭載されるエンジンは、メルセデスAMG製の4リッターV型8気筒ツインターボエンジンをベースに、ウエットサンプの潤滑システムなど、アストンマーティンによる独自のエンジニアリングが展開されている。最高出力&最大トルクは510ps&685Nmと発表されており、これにリヤにマウントされるZF製の8速ATを組み合わせる。アストンマーティンとしては初となる電子制御デファレンシャルを搭載しているのも大きな話題だ。

魅力的なトルクを発揮する、AMG製V8ツインターボエンジン。

サーキットドライブでまず印象的だったのは、このパワートレーン一式が重量配分を最適化するためにベストなレイアウトで搭載されていること。50:50の前後重量配分はもちろんだが、低く設定されたエンジンの搭載位置が新型ヴァンテージのコーナリングを大いに魅力的なものにしているのだ。




電子制御デファレンシャルが生み出すトラクション性能も感動的だ。トラックモードを選択すると、スタビリティコントロールが介入するタイミングは遅くなるが、ドライバーがここから新型ヴァンテージをダイナミックにコントロールすることは難しくない。フロントに255/40ZR20、リヤは295/35ZR20サイズとなる専用開発されたピレリ製のタイヤは、常に正確なインフォメーションを伝えてくれるし、滑り出しもスムーズだからだ。




メルセデスAMGによる最新世代のV型8気筒ツインターボエンジンは、ツインターボのシステム一式をVバンク間の中央にレイアウトし、それによって優れたレスポンス性を実現しているのが大きな特長だが、それはこの新型ヴァンテージでも同様に感じられる。先代モデルで使用されていた自然吸気エンジンとは異なり、どのようなエンジンスピードからでもほぼフラットな感覚で魅力的なトルクが発揮される。そのフィーリングは、古典的な趣をエンジンに求めるカスタマーにはやや物足りなく思えるのかもしれないが個人的にはそれによる扱いやすさを高く評価したい。

気になるのはスポーツカーには必要不可欠ともいえるエグゾーストサウンドだろうか。残念ながらそれは官能的な響きというわけではなく、またサーキットドライブの翌日に用意されていたオンロードでは、ロードノイズとともに、その音量が過剰な演出となっていることに気づかされることになった。




フロントに400㎜、リヤに360㎜径のスチールディスクを備えるブレーキのフィーリングも素晴らしかった。ABSはもちろんのこと、EBD=エレクトリック・ブレーキフォース・デストリビューション、EBA=エレクトリック・ブレーキ・アシストなどの機能が備わり、それにDSC=ダイナミック・スタビリティ・コントロール、TC=トラクション・コントロール、PTC=ポジティブ・トルク・コントロール、DTV=ダイナミック・トルク・ベクタリングといった最先端のデバイスが組み合わされ、新型ヴァンテージはサーキットでも常に安定方向に導かれるから、そのドライビングにはおよそ精神的な負担はない。それぞれのデバイスが実にナチュラルに、言葉を変えるのならば特に存在感を主張することもなく機能していることを、サーキットドライブを楽しむカスタマーは誰もが感じるはずだ。

インテリアもピュアスポーツらしく機能的なデザインだ。オプションではスポーツステアリングホイールや、スポーツプラスシートで構成されるスポーツ・プラス・コレクションも用意され、それを選ぶとコクピットはさらにスパルタンなテイストになる。8インチの液晶スクリーンによるインフォテインメントシステムや、スマートフォンとの連携を可能としていることなど、装備レベルもまた先代モデルからは大きく向上した。




間もなくデリバリーがスタートするアストンマーティンの新型ヴァンテージ。その最先端のエンジニアリングが演出する走りは大いに魅力的なものであったと、まずは報告しておこう。

ASTON MARTIN VANTAGE

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情報提供元: MotorFan
記事名:「 【初試乗】新型ヴァンテージをエンジニアリングから見る。