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日本で飼い猫として人々の身近な存在になったのは、平安時代前後のことだそうです。また時を同じくして、平安時代初期の頃に書かれた最古の説話集「日本霊異記」には化け猫としての記録もあり、猫は不思議な力を持つ動物というようにも捉えられていたことが伺えます。さらに時代が進み、江戸時代のこと。東京都にある今戸神社の近隣住民であった老婆の愛猫が夢枕に立ち、自分(猫)の形を人形にすると福が来ると言ったそうです。実際に、貧しかった老婆は猫の言う通りに人形を作り売ると、それが評判を呼んで裕福になったことが「招き猫」の始まりと言われています。また、同じく東京都の豪徳寺にも、招き猫発祥の伝説があります。こちらも同様に江戸時代。時の彦根藩主・井伊直孝が豪徳寺の飼い猫の手招きで寺院に入ったところ、その直前に立っていた場所に雷が落ち、命拾いしたと言われています。その後、豪徳寺は井伊家の菩提寺となり栄えるようになったそうです。
國學院大学神道文化学部教授の茂木貞純氏によると、神社に動物などの神使の像が置かれるのは、そもそも日本の神々が人前に姿を現さないことから、神々に近くゆかりのある動物が代理でその意思を伝えてくれると考えたからなんだそうです。豊かでありながら時に厳しい自然に身を置いてきた我々の祖先は、豊作、豊漁、豊猟を山や川、海の神に祈願しご利益に感謝を捧げ、その信仰は様々な祭りとして行われてきました。神々は人の目に見えないため、自然に棲息する動物が神と人とを仲立ちすると考え神聖視し、動物の行動や鳴き声などの些細な変化を読み取り、神の意志を感じ取ったそうです。古くから神聖視されてきた動物の種類は、陸の生き物20種、水辺の生き物11種、空の生き物14種、霊的な生き物(龍や天狗など)9種、全て合わせると54種も!改めて、日本人の自然への信仰の深さを思い知ります。この秋、神社を訪れる際には、その神社にまつわる神使の歴史や像にも触れてみてはいかがでしょうか?
【出典】監修/茂木貞純「神社のどうぶつ図鑑」(2018)二見書房