陽が落ちると虫の音が響き、梨や栗、秋刀魚など秋の味覚が美味しい季節になりました。なかでも、新米、新酒、新蕎麦など秋が深まるにつれ出まわる「新物」は、ひときわ待ち遠しい特別な味覚です。

日本の食卓に欠かせない調味料である味噌にも、新物があるのをご存知でしょうか。四季の移り変わりに即した仕込みの知恵を紐解きながら、この時期にぜひ味わいたい「新味噌」のならでは魅力と、ぜひ試してみたい手作り味噌についてご紹介します。


麹の香りが残る、今だけの風味!新味噌が食べ頃

今年も、「新味噌」の季節がやってきました。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、お酒でいえば「新酒」にあたります。昔ながらの味噌作りは「寒仕込みの土用越し」といわれ、冬の寒い時期に仕込んで暑い夏を越して発酵が進んだら食べ頃となるのです。

年が明けて1月から2月は、味噌作りに最適の季節。その理由は、気温が低いのでゆっくりじっくり発酵させることができるから。寒い時期は雑菌が少ないのでカビの繁殖を抑えることもできます。秋に収穫されたばかりの新米と大豆を使えることも理由のひとつ。最も発酵が進む夏を越して、秋から新味噌のシーズンを迎え、11月から12月にはより熟成が深まりどんどん風味が増してきます。

この時期の新味噌は、色も淡くやさしい味わいが特徴。 酵母のはたらきが活発なので、若々しい麹の香りとフレッシュな酸味を楽しむことができます。


ぜひ挑戦してみたい手作り味噌。材料は「大豆、麹、塩」のみ

手作り味噌はむずかしそうに思われるかもしれませんが、手順はとってもシンプル。一度仕込んでおけば、味や香りの変化を楽しみながら、この時期から一年間楽しめます。

味噌の材料は「大豆、麹、塩」のみ。調味料といえるものは塩のみで、麹の発酵の力が大豆を味噌にしてくれるのです。そのため、一つひとつの手順を大切に行ないます。大豆は水を変えて何度もよく洗う、指でつぶせるくらいなるまで柔らかく煮る、豆の粗熱がとれて冷めてから麹と混ぜる(熱で麹菌が死んでしまうため)、材料を合わせる時はまんべんなくしっかり混ぜる、といった要所をおさえて作業することが大切です。

ポイントは、麹と塩をまんべんなく混ぜ合わせる「塩切り麹」という作業を経てから、つぶした大豆に加えること。この行程を行なわないと失敗の原因に。すでに「塩切り麹」になったキットも販売されているので、はじめて手作り味噌に挑戦する場合にはおすすめです。

基本の中辛味噌の配合の一例は、大豆1.3kg、麹2kg、塩800g。約6kgの味噌ができます。大豆に対して麹の量を増やしていくと「甘口味噌」に。大豆、麹、塩の基本の配合を知ったら、それをベースに自分だけのオリジナル味噌をつくるのも楽しみのひとつです。


酵母が生きている! 変化する味わいと多彩な種類を楽しんで

味噌は、醤油と並んで日本の食卓に欠かせない調味料。「手前味噌を並べる」という言葉もあるように、かつては各家庭で仕込む習慣があり買ってくるものではありませんでした。そのため、土地ならではの食材や味の好みといった地域性も色濃く反映されているのです。

熟成期間や麹の割合、材料によって味噌の味わいはさまざま。米味噌、麦味噌、豆味噌など麹の違いによっても、いくつか種類があります。新味噌の季節に、あらためて多彩な味噌ならではの味わいを楽しみたいものですね。年明けには、季節を経るごとに変化する風味を楽しめる手作り味噌に挑戦してみてはいかがでしょうか。

参考サイト

「マルカワみそ」ホームページ

参考文献

『バイヤー厳選の人気調味料&スーパーフード手帖606』主婦の友社 2017

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 「新味噌」の季節です!知られざる味わいと、手作り味噌の魅力