■中長期の成長戦略

三城ホールディングス<7455>は持株会社(グループ)としては正式には中期経営計画等を発表していないが、内部的には、今後数年間で店舗の整理(退店、統廃合、移転、業態変更等)を押し進め、新しいコンセプトの店舗(メゾン、ロッジ、ベルエポック、サロン)を増やすことで従来の顧客層に加え、新規でファミリー層の獲得を目指し、同業他社によるメガネのファストファッションとの差別化を訴求することで、業績の更なる回復を図る計画だ。三城、金鳳堂、海外事業では主に以下のような施策を実行していく予定だ。

1. プロモーション
(1) 創業90周年関連
同社は2020年に創業90周年を迎える。これに合わせた様々なプロモーション施策を実行する。

a) 「創業90周年祭」
創業90周年を迎えるにあたって、「創業90周年祭」として様々なプロモーション(販売促進)策を打つ計画だ。具体的には、以前から行ってきた女優の波留を起用した「MADE IN JAPAN project」の推進、補聴器の販売・レンタル促進のための「らくみみ貸出特別クーポン」や「90周年祭SALE(期間限定フレーム最大70%OFF)」の実施などが挙げられる。

b) 創業90周年事業
創業90周年事業の目玉の1つとして、同社グループの旗艦店である「パリ オペラ店」の大改装を行う。

(2) ブランディング
ブランド認知度を向上させるため、顧客層や年代別に広告チャネルを分散させる。(CM、DM、コラボ、SNS、店頭認知、クチコミなど)

(3) デジタルマーケティング
今までの同社の販売促進は、どちらかと言うとリアル店舗向け中心であったが、今後はデジタルマーケティングも強化する。これにより、アナログとデジタルを融合させた「アナログ+デジタルアプローチ」を推進する。

(4) ECサイトの独自性強化
エンターテイメント商材が度付き対応可能になっているが、これらの商品を中心にシームレスな購入体験をすべての顧客に提供する。そのために、ECサイトの独自性を強化する。

(5) ビジュアルライフケア(カウンセリング型ビジュアル測定)
同社には700名の上級視力測定技術者が在籍しており、彼らの経験・技術を生かすことで、視力ニーズカウンセリング、シーンごとの機能性レンズの提案等を積極的に進める。例えば、仕事での環境(パソコンの距離)、生活での環境(読書、テレビの距離)、趣味での環境(楽譜・スコアカード等)に合わせた最適な度数や、必要に応じて特殊な機能を持ったレンズを提案する。同社で測定できる(あるいは行うことができる)のは、「カウンセリング」「一般測定屈折検査」「調節力チェック」「両眼視チェック」「環境距離チェック」「プリズム測定」「動体視力チェック」「夜間視力チェック」「瞬間視力チェック」「深視力チェック」「レンズサポート」「モニターサポート」などであるが、これらの検査と様々な環境に合わせた検査を組み合わせることで、最適な提案が可能となっている。今後は、これらの提案能力をより活かす方針だ。

2. 店舗施策
(1) コンセプト別店舗改装
同社では、通常のレギュラー店に加えて、2019年3月期までは新しいコンセプトの店舗として「エンターテインメント」「パリのベルエポック」「サーカス」「サロン」の4つの要素で店舗展開を図ってきた。しかし「サロン」がやや不振で思うような成果が上がらなかったことから、2020年3月期には「サロン」より「ロッジ」と「メゾン」を新たに派生させて店舗展開を行うこととした。「ロッジ」は居心地の良い空間をコンセプトとした地域密着型店舗を、「メゾン」は年齢層を広げ、団塊ジュニア世代にも来店してもらえる店舗を目指している。この結果、今後はレギュラー店を「エンターテインメント」「サーカス」「パリのベルエポック「ロッジ」「サロン」「メゾン」の6つの要素へ改装を行いながら店舗展開を進める方針で、これら6つの店舗の特色と位置付け(ポジショニング=価格帯と目標年齢層)は以下のようになっている。

a) エンターテインメント
音楽とファッションをテーマに、100万人都市を中心に出店展開する。20代~30代後半向けにECへの誘致やトレンド牽引店舗としてのコマーシャル効果を担う。

b) パリのベルエポック
華やかな時代の古き良き文化の魅力を店舗に詰め込み、女性やファミリーが入店しやすい店装をショッピングモール、ビルイン型で展開する。わかりやすく購入しやすい商品と価格設定で、30代からのファミリー層へアプローチする。

c) メゾン
地域密着店の中でもニューファミリー世帯の利用が多い郊外店舗をフランスのメゾン風にリニューアルする。サロンの定義を継承しながらもカフェコーナーや待合スペースを充実させてコミュニティが広がるスペースを確保する。

d) サーカス
まるでサーカスに迷い込んだような楽しい店舗で、上質なPB商品を主力とする。若者だけにとどまらず少年の心を持った都会の大人達がメガネで遊べるよう、レンズの品ぞろえも充実させたエンタメ系の店舗を目指す。

e) ロッジ
三城の次世代店舗として、地域の旗艦店舗を木の香りが漂うログハウス店舗にリニューアルする。既存客からニューファミリーまで幅広い層を意識し、店内ではカフェコーナーとキッズスペースを取り入れている。NBとPBをバランス良く構成し選ぶ楽しさを提供する。

f) サロン
コミュニティに密着した店舗としてメガネや補聴器の困りごとをゆっくりと相談できるスペースが用意されている。団塊世代を意識したビジュアルライフケア視力測定に注力、目の健康や安心を提供する。

(2) 店舗数計画
また今後4年間(2024年3月期末)の新コンセプト店舗数は、「パリのベルエポック」128店(2020年3月期末98店)、「ロッジ」35店(同11店)、「メゾン」29店(同6店)、「サロン」70店(同51店)と大幅増を計画しているが、「エンターテインメント」と「サーカス」は広告宣伝の意味もあるので、今後は店舗数は増やさず2024年3月期末は2020年3月期末と変わらず、それぞれ25店、3店を予定している。なおこの間に、レギュラー店舗(既存型店舗)は2020年3月期末の487店から295店へ減少する見込みだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




<EY>

情報提供元: FISCO
記事名:「 三城HD Research Memo(5):認知度回復、新コンセプト店舗の拡充により業績の回復を図る(1)