■ベネフィット・ワン<2412>の事業概要

4. 各事業の内容
(1) 福利厚生事業
主力の福利厚生事業は、環境の変化が需要拡大につながっている。「ベネフィット・ステーション」は、1万社以上が導入している。就職したい企業の条件について経済産業省が行ったアンケート調査では、「福利厚生が充実している」の回答が44.2%でトップ、次いで「従業員の健康や働き方に配慮している」が43.8%と福利厚生の重要度が高まっている。

(2) パーソナル事業
パーソナル事業は、主に協業企業の顧客向けに「ベネフィット・ステーション」を提供しており、協業先とのレベニューシェアになる。BtoCを実現するためには、月額固定の会費を徴収する機能が必要であるため、そのような機能を有する企業とアライアンスしている。協業先は、携帯キャリアやフィットネスクラブ、不動産仲介会社等になる。パーソナル事業の会員数は、2016年4月に227万人と3年間で3.3倍に増加した。ただ、大口協業先が営業方針を変更したこと等により会員数の減少が続き、2020年4月の会員数は126万人まで縮小した。協業先顧客に応じたセット商品の開発により継続価値の高いサービスを構築する。2021年3月期の会員数は、143万人を見込む。

(3) インセンティブ事業
インセンティブ事業は、企業のロイヤリティ・モチベーション向上施策を支援する。付与されるインセンティブ・ポイントは、多様なニーズに応える約20,000の交換アイテムが用意されている。スケールメリットを生かした、アウトレット価格や特典が利用できる。最近では販促インセンティブ目的のみならず、採用強化や離職率低下及び定着率の向上による採用コストの削減、優秀な人材の確保、評価機会の拡大、従業員のモチベーションアップ、営業力の底上げ、キャンペーン効果の引上げなど活用の範囲が広がっている。パート・アルバイト向けの導入メリットは、時給に代わる効果的なモチベーション向上策として、雇用期間の長期化、職場のコミュニケーションの向上などがある。業界No.1の436社に導入されている。代表的な顧客は、携帯電話通信事業者や生損保、自動車販売関係、医薬品会社、外食企業などである。

(4) ヘルスケア事業
2040年頃まで高齢者人口の増加により、医療費は増加の一途をたどる。2008年度の特定健康診査及び特定保健指導の義務化から始まり、2015年度からデータヘルス計画の義務化、2015年12月からストレスチェックの義務化と続く国策が、ヘルスケア事業の追い風となっている。2018年度から、日本健康会議、厚生労働省、経済産業省が協働して「健康スコアリングレポート」を作成し、約1,400の健保組合と20の国家公務員共済組合に通知する。2021年度からは、事業主単位でレポート作成が実施される予定だ。

従来は、従業員の健康管理と医療費抑制の観点から、健康リスクが高い従業員を対象とする「ハイリスクアプローチ」であった。労働生産性と相関性が高い健康経営では、職場全体の健康及びメンタル管理をする「ポピュレーションアプローチ」になる。経済産業省の「健康経営優良法人2020」では、1,476社が大規模法人部門の認定受けた。同社自身も、3年連続して認定されている。ヘルスケア事業は、健診サービスから特定保健指導、健康ポイント、データヘルス計画支援等、健康関連のサービスをワンストップで提供している。大型の複数年契約を受注しており、健診・保健指導ともに業界のリーディングカンパニーの位置付けとなっている。健診のWeb予約化や保健指導のICT面談などを導入し、オペレーションの効率化を継続する。

(5) HRマネジメントを中核とする他の事業
法人向けでは、福利厚生に加えて、HRマネジメントにおける重点要素を中核に据えた事業展開を行っている。人事データを核として、HRマネジメントの土台となるサービスを、単独ではなく複数を統合的に提供するところに同社の特長と強みがある。重点要素となる福利厚生、健康、教育研修、インセンティブだけでなく、購買精算、給与計算、金融、CRM等を顧客の要望に合わせて組み合わせることができる。

HRマネジメントにおいては、スムーズな出張の手配・精算も重要な課題の1つであり、実現すれば利用企業にとって出張にかかる直接経費の削減だけでなく、間接経費の削減やコンプライアンス強化につながる。キャッシュレスで一括管理を可能とする同社の出張手配・精算業務代行サービス「出張ステーション」は、3つの導入メリットがある。法人契約の特別割引料金を利用して旅費・宿泊費を削減できる「直接経費の削減」、Web手配・個人の立替不要・会社一括精算により業務を大幅に削減する「間接経費の削減」、出張データを一元管理・可視化できるため、カラ出張などの不正を防止する「コンプライアンス強化」である。大手金融機関の導入決定により、大企業に急速に浸透する機運が熟してきた。

2018年11月に、新サービス「接待ステーション」を立ち上げた。出張旅費精算、近距離交通費精算に続く第3の「脱・小口精算」サービスとなる。「接待ステーション」は、接待の申請手続きから精算までワンストップで処理する。飲食店の予約をオンラインで行い、支払いは会社が直接処理するため社員個人の立替払いは発生しない。

通信回線等の精算代行といった管理部門系業務のアウトソーシングも行っており、2019年3月期には大口の支店小口精算受託が開始となった。

(6) 海外事業
海外での事業展開は、2012年に中国と米国に独資の子会社を設立したことから始まった。主に、インセンティブ事業を行っている。2013年には、東南アジア地域に進出し、シンガポール、タイ、インドネシアに拠点を有する。海外事業は2015年3月期から連結決算に組み入れられ始めた。

2017年3月期に、株式を追加取得したシンガポールのREWARDZ PRIVATE LIMITEDを連結対象に含めた。同子会社は、福利厚生、ポイント、ヘルスケアを一体化して提供する先進性を有しており、そのサービス構成は国内事業にも横展開され、2018年11月には「ベネフィット・ステーションNEXT」が誕生、現在のメイン商材である「学トクプラン」に至る流れとなった。海外事業は先行投資フェーズに当たり2020年3月期は売上高が856百万円(前期比148.6%増)、営業損失233百万円(前期は298百万円の損失)を計上した。2021年3月期は、損失額が92百万円に縮小することを計画している。ストック型のビジネスであるため、一度損益分岐を越えれば安定した収益貢献が見込まれる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ベネ・ワン Research Memo(4):統合サービスの重要性の高まりに応じた商品・組織・システムの統合(2)