■中長期の成長戦略

2. 国内事業
日本国内の自動車流通事業は、少子高齢化の上、環境対応や安全対策により車両価格が上がっており、国内の新車及び中古車販売市場の台数ベースの成長が見込みづらい。市場のパイが拡大しないなか、各社はお互いの周辺事業に領域を拡大する成長戦略を取っている。中古車買取業者は小売業に、中古車販売業者は外車新車ディーラーや買取専門店を展開している。

(1) 周辺事業への進出
アップルインターナショナル<2788>は、既存事業者同士の競争激化やインターネトを活用した新サービスの登場など将来に想定される事業環境の変化への対応する施策を講じている。単に量的拡大を追求するのではなく、レンタカーやカーリース事業などでフランチャイズビジネス用のスキームを開発し、現有の同社グループ機能との相乗効果により収益源を多様化することを目指している。2017年12月期に入って、4月に「アップルレンタカー」第1号店を沖縄県那覇市にオープンした。また、9月からは直営店において割安感を出したカーリース事業を開始した。

a) レンタカー事業に領域を拡大へ
若者の消費スタイルにおいて、『モノからコトへ』、また『所有(独占)からシェア(共有)へ』という変化が起こっている。クラウド時代では、ITに関わるリソースを所有から利用へ移行している。米国の音楽業界では、定額制音楽配信サービスの利用がCDやダウンロード販売を上回っている。若者のクルマ離れから、クルマを「所有する」から「利用する」にシフトするとみている。

同社グループは、シェアリング・エコノミーの進展に対応するため、レンタカー事業のパッケージ化を進めている。同事業でも、アップルの看板を掲げ、フランチャイズチェーン展開を計画している。レンタカーは通常、新車を用いるが、同社は中古車も活用する。中古車を使ったレンタカー事業は、既にタイでは調査済みである。インバウンド効果により訪日観光客が増加している沖縄で、2017年4月に加盟店による「アップルレンタカー那覇店」が第1号店として開設された。第2号店は、インバウンド需要が見込まれる北海道札幌市で計画している。ただし、降雪がある冬季に需要が激減するため、所有車両の季節に応じた機敏な調整が求められる。

b) カーリース事業に参入
2017年4月に、個人向けに自社で所有する中古車のマイカーリース事業を開始した。さらに、9月には新車をメニューに加えた。同社の本社所在地である三重県四日市市や鈴鹿市、伊勢市のほか、千葉市や神奈川県藤沢市の直営店10店で開始した。全国の約200店のフランチャイズ店舗に広げることを計画している。初年度は2,000台、5年後には全国で1万台のリースを目指す。

同社の新車リースは、東南アジアを中心とする海外市場で人気の車種を選び、契約終了後に高く買い取ることを前提にリース料金を抑えたことが差別化ポイントとなる。一般的な料金よりも3割安くできる例があるという。リース対象車は、トヨタ自動車の高級ミニバン「アルファード」、「ヴェルファイア」、小型ミニバン「シエンタ」、日産自動車の「セレナ」、ホンダの「ヴェゼル」など約10車種となる。5年リースの場合、「ヴェルファイア」の月間リース料は38,000円、「シエンタ」なら同25,000円になる。輸出向けに装着したオプションを残存価値に反映させることができるか、リース会社と折衝している。リース料には、自動車税、取得税、重量税、自賠責保険、車検費用、諸費用が含まれる。利用者の追加負担は5年分の任意保険になる。同社には、任意保険の取扱手数料が収入として入る。

(2) FC加盟店の増加
中古車買取・販売事業は、グループ直営店を含むアップル加盟店が2015年12月期に前期比13店舗増加した。2016年12月期は当初13店舗の増加を計画したものの、横ばいにとどまり、2017年12月期には純減してしまった。現在は、2019年12月期の目標を260店舗としている。2018年12月期に入り、3店舗の新店が開設され239店舗になった。全国約200店舗のCS(カーライフステーション)を展開するエネクスフリート(株)(エネフリ)が、3月にアップル岐阜羽島インター店(岐阜県)を、4月にアップル上尾店(埼玉県)をオープンした。買取専門店をガソリンスタンドに併設する。同社が、中古車買取販売に限定せず、事業領域を拡大していることが評価された。

(3) いすゞ自動車との業務提携
いすゞ自動車販売の100%子会社、(株)いすゞユーマックスは、トラック中古車の売買事業や会員制のトラック専門オークション事業とインターネットによる中古トラック売買斡旋事業を行っている。いすゞモーターオークション会場は、千葉県の幕張会場、兵庫県の神戸会場、福岡県の九州会場の3ヶ所で運営されている。同社グループのフランチャイズチェーンは、乗用車の取扱いが多く、トラックの取扱いに関しては経験が乏しいことから、商用車を中心に協業を進める。

3. ネット事業者との協業
同社の従来のビジネスはBtoCであるが、個人間の中古車売買のCtoCが普及する可能性は否定できない。そのような事態に備えて、GMOグループと協業してフリーマーケットでの取引にかかわる。同社の役割は、クルマの点検・査定と名義変更に伴う手続き、車両の搬送などの手数料ビジネスになる。所有者が県を跨いで変われば、ナンバープレートの変更も必要になる。


■株主還元策
8期ぶりに復配を実現
同社は単体の利益剰余金のマイナスを相殺して復配のための財務的基盤を整え、2017年12月期に1株当たり5円の配当金で8期ぶりの復配を果たした。配当性向は32.5%であった。2018年12月期の配当金は、1株当たり5円で据え置く計画でいる。親会社株主に帰属する当期純利益が前期比5.7倍を予想していることから、予想配当性向は6.0%に低下する。予想営業利益577百万円に対し、営業外収益にそれを上回る650百万円の為替差益を見込んでいるが一過性の収益となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 アップル Research Memo(7):国内外で、ネットを活用した事業の展開を図る(2)