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ホテル宿泊助成と県外者入店拒否という真逆 in 秋田県由利本荘市【はんつ遠藤のホテル探検】




Go To トラベルキャンペーン真っただ中の昨今、自治体独自でもキャンペーンを行っているところがある。



特に有名だったのは札幌市。「さぁ!サッポロ夏割&さぁ!サッポロ泊まってスマイルクーポン〜札幌市宿泊促進キャンペーン〜」と称して、新型コロナウイルス感染症により観光客が激減したことを受け、観光産業の支援と旅行需要の喚起を図るため、宿泊代金の割引と宿泊施設などで利用できるクーポン券を配布した(7月23日~8月30日)。サッポロ夏割とは、市内の対象施設の宿泊料金を1人1泊あたり5,000円割引する札幌市の宿泊割引キャンペーン(1泊6,000円以上に限る)で、Go To トラベルキャンペーンの35%割引とも併用可、しかも「サッポロ泊まってスマイルクーポン」の対象ホテルであれば1人につき3,000円分のクーポン進呈され、泊まれば儲かってしまうという事態も起きた。


由利本荘のホテル宿泊で3,000円の助成


現在でも自治体独自のキャンペーンは数多く、県民限定のほか全国の居住者が誰でも使用できるタイプも見受けられる。そのうちのつが秋田県由利本荘市のホテル宿泊助成だ。これは市内のホテルや旅館を現地決済で利用した人が対象で、料金の支払時に3,000円を割り引く。期間は8月1日から12月31日まで(予算額に達し次第、事業終了)。



そこで僕はちょうど秋田に仕事で行く用事があったため、9月30日に由利本荘市に宿泊する事にした。ちょうど、50才以上で「大人の休日倶楽部」に入会している人は、4日間15,270円でJR東日本全線乗り放題となる「大人の休日倶楽部パス」が使用できる期間だ。上野駅から秋田駅まで秋田新幹線こまち、秋田駅から羽後本荘駅まで特急いなほで向かうと、正規料金だと片道でも18,760円かかってしまう。そこで僕も1966年生まれゆえ、恩恵に預かることにした。(大人の休日倶楽部パスについては、いずれまた書かせていただこうと思う)


本荘ステーションホテルに宿泊してみた




由利本荘市の玄関口はJR羽後本荘駅だ。上野駅から片道約4時間半。昨年からの駅改良工事により、仮駅舎となっていた。





今回、宿泊するのは、羽後本荘駅前にある、「本荘ステーションホテル」。1泊シングル素泊まりで5,500円(税込)程度の、一般的な中級ビジネスホテルだ。羽後本荘駅から2キロ圏内には「ホテルアイリス」「本荘グランドホテル」「ホテルルートイン由利本荘」もあり、価格的には同様だが、電車の利便性という観点からは「本荘ステーションホテル」が一番。しかも駐車場無料。徒歩1分のところにコンビニ「ローソン」もある。本館と別館があり、今回は本館に宿泊した。



チェックインは16時からだった(最終22時)。フロントの方はとても対応が良かった。もちろんこの時期ゆえに除菌スプレーも完備され、フロントはビニールで覆われている。



1泊シングル素泊まりで5,500円(税込)。楽天トラベルで予約したが、3,000円のホテル宿泊助成を受けるには現地決済が条件ゆえ、ネット決済ではなく、現金払いを選択した(現地でクレジットカード払いでもOK)。よって、宿泊代は2,500円。9月30日だったゆえ、東京都民の僕は利用できなかったが、Go To トラベルキャンペーンの35%引きとも併用できるので、それを利用すれば575円(税込)で宿泊可能。





1階にはコピー機(有料)も設置されているほどのビジネスホテル。エレベーターで6階の部屋へ向かえば、助成を受けた部屋だから汚いということは全くなく、通常どおり。





きちんとメイキングされたベッドの上には浴衣もある。テレビ、冷蔵庫、ドライヤー、簡易型ではあるが湯沸かし器も。バスルームにはシャワーの他、浴槽もあり、ウォシュレット付きトイレも。その他、アメニティは部屋には歯ブラシくらいしかないが、フロントにかみそりやブラシなどが置いてあり、無料でいただくことができる。





それと、無料のWi-Fiも使用でき、YouTubeを視聴するくらいなら何の問題もないレベル。強いて挙げれば、スリッパが常設タイプなので、衛生面をより考慮して使い捨てがあると嬉しいのと、ハンガーが2本だったので、できれば3本欲しいといったところだが、満額を支払ったとしても、5,500円という価格であれば、僕としては問題ない。


宿泊助成と入店拒否という真逆


通常であれば、由利本荘、最高♪みたいな話である。しかし、ここからが問題。



これほど、市をあげて旅行客などにアピールしているので、感謝の意味もこめて、夜は地元の居酒屋に行くことにした。幸い、僕は地元に友人(M氏)がおり、毎年のように伺っている。そこで、今回も彼に連絡を取り「一緒に、呑もう」と伝えた。



「もちろん!」とM氏。「ただ、お店をどこにしよう…」



待ち合わせは17時半。フロントに来てくれたM氏と久々の再会である。



翌日は朝が早いので近場が良いと思い、以前に連れて行ってくれた、ホテルから100メートルほど、ホテルから見える距離のやきとり店はどうかと尋ねる。



とてもアットホームな、古くから続く、地元でも評判のやきとり店。



「いや、それが、ダメなんだ」



という彼に連れられて店舗の前に来て、彼が店舗選定に悩んでいることがよく分かった。





「県外からのお客様にお願い。コロナ感染防止のため、入店をお断りしております。本当に申し訳ありません。」



なるほど!



そしてM氏が言った「これは僕が撮ってきた写真だけれど」。見せてもらうと、3軒とも同様の張り紙があった。





由利本荘市のウェブサイトによると、由利本荘保健所管内の新型コロナ感染者数は6名(人口は2020年8月31日現在で30,705名)。僕が住む東京都葛飾区の600人超(人口約46万人)から見たら割合はずっと少ないが、これが地方都市の難しさだ。



M氏曰く「数は少ないけれど、ひとたび新型コロナに感染したら、まさに村八分状態」。個人攻撃になるので聞いた話は敢えて書かないが、大変な事態になってしまう。





特に秋田県は、佐竹敬久知事が8月31日に、9月以降も首都圏など感染拡大地域との不要不急の往来を控えるよう県民へ呼び掛けたほど(県独自の警戒レベルは「2(強い注意喚起)」)。その後、10月1日以降の首都圏などとの往来制限は緩和されたものの、県民、特に由利本荘市民の新型コロナ感染に対する負の意識は、非常に高い。



さまざまな意見があることは承知しているが、僕は「入店拒否」に賛成派だ。実は僕も高齢の両親と同居ゆえ、感染対策にかなり力を入れているつもりだ。東京では全てクルマ移動。飲食店の取材&撮影も営業時間外でご主人くらいとしか会わない。仕事は自宅で、いわゆるテレワーク。全国取材の時も、新幹線の最寄り駅や羽田空港、成田空港までクルマ往復。



ゆえに、その飲食店の気持ちがとてもよく分かる。


徹底した新型コロナ対策の居酒屋へ




とはいえ、経済も回さないといけない。フードジャーナリストとして、各地の飲食店を盛り上げるべき立場だ。そこで、県外者でもOK、個室がある、衛生面も徹底している居酒屋ということで、M氏が選んだ1軒に向かった。





由利本荘では老舗や大御所クラスの居酒屋が多いなか、こちらはオープンしてまだ1年くらいだそう。外観からして、洒落ている。店内に入れば、季節の飾りもあり、まるで料亭のような雰囲気をも醸し出していた。



もちろん除菌スプレーがあり、接触せずともアルコールが噴射される自動型を採用。入口右側には、こだわりの日本酒がずらりと並んだ冷蔵庫が見える素敵なカウンターもあるものの、メインはずらりと配置された個室だ。そして、オーダーはタッチパネル。これらにも衛生面での配慮も伺える。







せっかくなので、今日、地元で釣れたばかりの「真サバの刺身」や、「ニギス(沖キス)の塩焼き」などを堪能。もちろん鮮度が良い。さすが由利本荘。





ほかにも地元の親鶏を用いた硬さが特徴の噛み応えのある「ひね肉」(地元の言い方では、しね肉)」なども堪能した。



呑みながら食べながら友人と語らいながら、僕はコロナ禍における地方都市の縮図を見た気がした。経済活性化のために宿泊助成を行う公共機関、県外者に来てほしくない入店拒否の飲食店たち、衛生面を徹底してお客を受け入れる飲食店たち。



M氏によれば「市民も以前のようには、まだまだ出歩いたりしない」そうだ。特に高齢者の動きがとても少ないそう。確かに今回伺った居酒屋も、客層は20代~30代ばかりであった。



とても難しい問題だ。正直なところ、僕自身、現在に全国の飲食店を紹介し続けていて、それが良い事なのか悪い事なのか、判断できないまま、日々の経済活動をおこなっている。


由利本荘で“はしご酒”企画スタート!




そんな中、10月1日から31日までの期間限定で、「ドリンク&フード ゆっくり由利本荘2020」と称して、飲んで!食べて!5軒ハシゴして!由利本荘を盛り上げよう、という地域の活性化を目指したプロジェクトがスタートした。



市内31軒の飲食店が参加し、参加店舗にて3,800円でチケットを購入すれば、5軒で指定の料理&ドリンクが味わえるという、いわゆる“5軒はしご酒”のような企画だ。



これで、由利本荘がどのくらい活性化するかは未知数だが、県外者は、この参加店を参考にするのも良さそうだ。



■プロフィール

はんつ遠藤



1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「Ontrip JAL」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊。

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