スクーターといえばベスパ、ベスパといえばスクーター……要するに世界一有名なスクーター、それがこのベスパです。ただ有名なだけでなく、イタリアのピアッジオ社が1946年から変わらず生産を続ける、長い歴史と伝統を誇るバイクでもあります。



メーカー希望小売車両本体価格

LX 125 i-GET ¥396,000(消費税10%込)



REPORT●村上菜つみ(MURAKAMI Natsumi)

PHOTO●高橋克也(TAKAHSHI Katsuya)

全長1770mm、車両重量114kg。空冷4ストローク単気筒SOHC 3バルブ124ccエンジンは、最高出力10.2HPを発揮します。

スクーターといえばベスパ、ベスパといえばスクーター……要するに世界一有名なスクーター、それがこのベスパです。ただ有名なだけでなく、イタリアのピアッジョ社が1946年から変わらず生産を続ける、長い歴史と伝統を誇るバイクでもあります。

映画『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーン扮するアン王女が乗っていたのもやっぱりベスパ。愛くるしいお姫様にふさわしい高品位なデザインが印象的です。

「ベスパ」はイタリア語でスズメバチのこと。もともとは、元気な2ストロークエンジンのサウンドを、ぶんぶん飛び回るハチの羽音にたとえてつけられた名ですが、2000年代以降はエンジンが4ストロークになり、ぐっと静かな羽音をもつエレガントなスズメバチに生まれ変わっています。

ヘッドライトはLED。オプションの透明フライスクリーンは、スタイルを整えるだけでなく、ライダープロテクション効果ばっちりです。

その可愛いルックスを一目見ればわかるとおり、ベスパLX125はガンガン走りを楽しむためのバイクではありません。このマシンには、フロントを振り上げるハイパワーも、目のくらむような最高速もありません。でもそのかわり、堅牢で美しいスチール製モノコック構造のボディにも、さまざまな装備品にも、すみずみにまで極上のデザインがゆき渡っています。

いってみればベスパLX125は、美を楽しむためのバイクなのです。

スピードはアナログ式、その他がデジタル式になったコンビネーションメーター。ブルーの照明がよく映えてきれいです。

スピードはアナログ式、その他がデジタル式になったコンビネーションメーター。ブルーの照明がよく映えてきれいです。

折り畳み式のクローム・リアラックは、古くからベスパユーザーに人気の定番オプション。

エンジンのパフォーマンスはゆとりたっぷり。ハードな峠道も、さらっと流すオトナの走りがお似合いです。

エンジンには、タウンユースでもワインディングでも十分なパワーがありますが、かといってとくにパンチを感じるタイプではありません。どの回転域からでも滑らかにトルクが出て、どの回転域からでもするすると加速します。

エンジン音や振動も、あくまでジェントル。ふわんと優しい音と、まったり穏やかなパワーフィールが、このエンジン最大の持ち味です。

ディスク径200mmの油圧式フロントディスクブレーキ。ABSは非装備です。

右サイドから見たフロントホイール。5本スポークの新デザインがかっこいいですね。

ブレーキには十分な制動力があり、かつコントローラブルです。でもABSがついていないのでロックにだけは要注意。

きれいな舗装路でふつうに走り、ふつうにブレーキングしているかぎり、とくに神経質になる必要はありませんが、緊急時などにハードブレーキングすると、レバー入力が一線をこえたとたん、突然タイヤが鳴き出してロックしてしまいます。不意の転倒を避けるためにも急制動は慎重に、そして何より、急制動をせずにすむ運転を心がけましょう。

フロントはディスク、リアはドラム。前後ブレーキの利き味は大きく違います。

ベスパLX125のフロントブレーキとリアブレーキには、利き味に大きな違いがあります。フロントはタッチが硬く、握り込み初期から制動がかかりますが、リアはタッチが柔らかく、かなり奥まで握らないと利きはじめません。

どちらかといえば、スポーツライディングになじみのないライダーでも、左右のレバーを自然に握ればロックせず安全に止まれる設定になっていますが、ふだんスポーツバイクに乗り慣れているライダーだと、勝手が違ってちょっと戸惑うかもしれません。

可愛い見た目に反してサスはきっちり硬め。シャキッとした走りが楽しめます。

サスペンションは硬くてストロークが短く、小さなギャップにも敏感に反応します。そのぶん乗り味がシャープで、楽しく心地よく走れます。ただ動作感がリジットに近く、サスのキャパシティはそれほど高くなさそうです。よほど路面がきれいでないかぎり、ハードコーナリングは控えたほうがいいかもしれません。



ただ、サスがちょっと神経質なわりには、ベスパLX125のコーナリング特性は、どんな速度域でも、どんな乗車姿勢でもぴたりとニュートラルです。おおらかな操縦性のおかげで、いつでもリラックスして走れるのが嬉しいですね。

ベスパはただ走るためのバイクではなく、美しい暮らしのためのバイク。長くつきあうほどにライダーの日々にとけこみ、ライダーの暮らしを豊かに彩ってくれます。

ベスパを楽しむのに、特別なテクニックは要りません。好きなバイクに乗って、好きなところに出かけ、好きな服を着て、好きなものを食べ、好きなことをすればいいだけ。ベスパのライダーにとって、走りよりもずっと大切なことは、可愛いベスパと、ベスパのある暮らしを愛すること。

世界が認めたイタリアのおしゃれ番長は、誕生から70余年を経た今でも、やっぱり世界の女子たちあこがれのバイクなのです。

身長164cmの私だと、両足のかかとがほんの少し浮くくらい。日本の女子にはちょっと腰高ですが、シート形状がよく、乗りにくさは感じません。

でもそんなベスパを語るとき、見逃せないことが、じつはあともうひとつ。

世界中の女子のあこがれ、超キュートなベスパの愛用者の中には、じつは意外と「走れる男子」が多いのです。私の知人の中にも何人か熱心な男性ベスパファンがいますが、なぜか彼らのほとんどは、走りを愛するハードな腕自慢のライダーたちです。

ベスパの可愛いボディには、骨太のメカニズムと走りの情熱が隠されています。

そうそう、ベスパLX125のフロントタイヤは片持ち式のサスに支えられていますよね? じつはこれ、もとは飛行機のランディング・ギア(着陸用車輪)のメカニズムなのだそう。かつて飛行機メーカーだったピアッジョのプライドの名残ともいえるでしょうか。



もしかするとベスパを愛する無骨な男たちは、この可愛いスクーターの奥深くに、今もひっそり息づく熱い走りのスピリットを感じとっているのかもしれませんね。

全長 (mm) 1770

全幅 (mm) 705

ホイールベース (mm) 1280

シート高 (mm) 785

車両重量 (kg) 114

乗車定員(名) 2

原動機種類 4ストローク

気筒数 1

シリンダ配列 単気筒

排気量 (cc) 124

カム・バルブ駆動方式 OHC(SOHC)

気筒あたりバルブ数 3

内径(シリンダーボア)(mm) 52

行程(ピストンストローク)(mm) 58.6

最高出力(kW) 7.6

最高出力(HP) 10.2

最高出力回転数(rpm) 7600

最大トルク(N・m) 10.2

最大トルク回転数(rpm) 6000

燃料供給方式 フューエルインジェクション

燃料タンク容量 (L) 7

エンジン始動方式 セルフスターター式

変速機形式 CVT・無段変速

フレーム型式 スチール製モノコック

ブレーキ形式(前) 油圧式ディスク

ブレーキ形式(後) 機械式リーディングトレーリング

懸架方式(前) リンク式フォーク

懸架方式(後) ユニットスイング式

ショックアブソーバ本数(後) 1

タイヤ(前) 110/70-12

タイヤ(前)構造名 バイアス

タイヤ(前)タイプ チューブレス

タイヤ(後) 120/70-10

タイヤ(後)構造名 バイアス

タイヤ(後)タイプ チューブレス

ヘッドライトタイプ(Hi) LED

スピードメーター表示形式 アナログ

メーター表示:燃料計 有

メーター表示:時計 有

メーター表示:ツイントリップ 有

車両装備:USBポート 有

情報提供元:MotorFan
記事名:「 イタリアからやって来たおしゃれ番長【犬とバイクとツーリング/番外編 ベスパLX125i-get 試乗記】