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理化学研究所:均一温度環境における熱電発電を可能にするメタマテリアル熱電変換素子を提案


理化学研究所は、均一温度環境における熱電発電を可能にするメタマテリアル熱電変換素子を提案した。

 東京農工大学大学院工学研究院の久保若奈准教授、工学府産業技術専攻博士前期過程の勝俣翔平氏(当時)、理化学研究所開拓研究本部田中メタマテリアル研究室の田中拓男主任研究員らは、均一な温度環境下でも熱電発電をするメタマテリアル熱電変換素子を提案した。周囲環境が放出する赤外線(熱輻射)を吸収するメタマテリアルを熱電変換素子に装着するだけで、動作原理上不可能であった均一温度環境下における熱電発電が可能であることを、計算機シミュレーションにより検証した。




 将来は、車のエンジンやエアコンなどから排出される、未利用熱を電気エネルギーとして再利用できる熱電変換素子の実現を通して、よりエネルギー利用効率の高い社会の構築が期待される。

現状と成果

 我々の周囲には、たとえば、車のエンジンやエアコン、パソコンから排出される熱エネルギーなど、利用可能であるにもかかわらず廃棄されている未利用熱があふれている。この未利用熱は、日本が輸入した石油や天然ガスなどの一次エネルギーの約6割を占めており、我々は本来のエネルギーの4割しか利用していないことになる。さらにこの未利用熱の70%は、比較的温度の低い500K(摂氏227度)以下の物体からの排熱と言われている。もしこの未利用熱を回収してエネルギーとして再利用できれば、よりエネルギー利用効率の高い社会を実現できる。




 未利用熱の再利用に活用できると期待されているのが、熱を電気に変換する熱電変換素子であり、素子内の温度勾配を電気に変換する。熱電発電の原理は熱電素子内の温度勾配が電圧に変換されるゼーベック効果に基づいているため、熱電変換素子内の温度分布が均一で温度勾配がゼロになるような環境では熱電変換素子は機能しないという課題があり、これが熱電変換素子の普及の障害となっていた。




 今回、赤外光(熱輻射)を効率良く吸収して発熱する人工材料(メタマテリアル吸収体)を熱電変換デバイスの片面に形成すると、均一な温度環境下でも熱電発電を行えることを、研究グループは計算シミュレーションにより明らかにした。このような周囲環境が放出する熱輻射を利用して均一な温度環境下でも熱電変換が行えるメタマテリアル熱電変換素子の提案は世界初の成果。




 これまでの常識は、熱電変換素子を温度分布が均一な温度環境に長時間放置すると、熱電素子の温度も均一になって温度勾配が失われるため熱電発電は行えないというものだった。そこで研究グループは赤外光(熱輻射)を吸収して発熱するメタマテリアルをビスマステルル(Bi₂Te₃)熱電変換素子の片側のみに形成した「メタマテリアル熱電変換素子」を提案した(図1)。




 Bi₂Te₃熱電変換素子の一端に形成したメタマテリアルは、周囲の環境から赤外線(熱輻射)エネルギーを吸収して発熱し、その熱はBi₂Te₃熱電変換素子の片面の温度を上昇させる。すると、Bi₂Te₃熱電変換素子の一端の温度が上昇し、熱電変換素子内に新たな温度勾配が生じるため、均一な温度環境下でも熱電発電が可能となる。研究グループは227度(500K)の均一な温度環境下に設置したメタマテリアル熱電変換素子が、最大1.09mW/cm²の出力電圧密度を得ることを数値シミュレーションに明らかにした。




 今回発表した成果は数値シミュレーションによる検証であり、現在実験的な検証を行っている。すでに計算結果と同様の傾向を示すデータが得られており、近い将来、実験結果についても発表できる見込み。今回の研究成果は、温水中や均一な温度炉内などで発電できる熱電変換素子の実現につながり、将来は熱電変換素子が利用できる機会を増やすとともに、未利用熱を効率良くリサイクルできる熱電変換素子に展開できると期待される。

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