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マクラーレン・アルトゥーラの新型V6エンジンのVバンクが120度である理由


マクラーレンはニューモデルのアルトゥーラ(Artura)を発表した。新しいシャシー、新しいエンジン、新しいトランスミッションを採用したハイパフォーマンス・ハイブリッド・スーパーカーである。車両本体価格は2965万円(税込)だ。アルトゥーラのチーフエンジニアを務めるジェフ・グロース(Geoff Grose)氏がMotor-Fan.jpの質問にオンラインで答えてくれた。


TEXT◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎McLaren Automotive

Q&Aのパートに移る前に、アルトゥーラの概要を説明しておこう。

全長×全幅×全高:4539mm×1976mm×1193mm ホイールベース:2640mm

車重:1498kg(DIN) サスペンション:F ダブルウィッシュボーン式/R マルチリンク式 独立式アダプティブダンパー、プロアクティブダンピングコントロール(PDC)
全幅はミラーtoミラーで2080mm、ミラーを畳んだ状態で1976mm トレッド:F1650mm/R1613mm

アルトゥーラは完全新設計のハイパフォーマンス・ハイブリッド・スーパーカーだ。マクラーレン初のシリーズ生産「ハイパフォーマンス・ハイブリッド」という触れ込みである。シリーズ生産するのは初だが、ハイブリッド車を限定生産した実績はあり、2013年に限定生産されたP1がそうだ。3.8ℓV8ツインターボエンジン(最高出力737ps/最大トルク720NM)に最高出力179psのモーター(最大トルクは260Nm)を組み合わせた。搭載するトランスミッションは7速DCTである。

荷室容量:160ℓ バッテリー容量は7.4kWh(5個のリチウムイオン電池モジュールから成る。2時間半で80%充電できる)

アルトゥーラは新開発した3.0ℓV6ツインターボエンジンを車両ミッドに搭載し、後輪を駆動する。最高出力は680ps/7500rpm、最大トルクは720Nm/2250-7000rpmだ。エンジンのバンク角は120度。バンクの内側に排気系をレイアウトする、いわゆる「ホットV」を採用している。これに新開発の8速DCTを組み合わせる。マクラーレン初の電子制御デファレンシャル(Eデフ)を搭載するのもニュースだ。




モーターは量産ロードカーとして初めてアキシャル型を採用した。ローターとステーターを同心円状に配置するラジアル型を適用するのが一般的だが、アキシャル型は円盤状のローターとステーターが向かい合わせになっているのが特徴で、その形状からパンケーキ型とも呼ばれる。アキシャル型はラジアル型より容積トルク密度を高めやすいのが利点だ。モーターの最高出力/最大トルクは95ps/225Nm。アルトゥーラは後退時にモーターを逆回転させることでリバースギヤを廃し、トランスミッションの小型・軽量化を図った。

コックピットには身長193cmのドライバーでも余裕で座れる

バッテリーの使用可能電力量(ユーザブルエナジー)は7.4kWhで、モーターのみの航続距離は30kmと発表している。最高速度は330km/h。モーター走行時の最高速度は130km/h。0-100km/h加速は3.0秒。0-400m加速は10.7秒、WLTPモードのCO2排出量は129g、乾燥重量は1395kgだ。

バッテリー容量は7.4kWh(5個のリチウムイオン電池モジュールから成る。2時間半で80%充電できる) モーターのみの航続距離は30km 最高速度:130km

マクラーレン製ロードゴーイングカーの伝統にのっとり、アルトゥーラもカーボンモノコックを採用するが、これも完全新設計した。マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー(MCLA)をコアに採用した初のモデルで、イギリス・シェフィールド地方に新設されたマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンター(MCTC)で設計・開発・生産が行なわれる。




上記の概要を頭に入れたうえで、ジェフ・グロース氏の説明に耳を傾けてみよう。

モーターはスロットルへの入力に対して、まるで自然吸気エンジンのように瞬時に反応する

──なぜ、ハイブリッドシステムを採用したのでしょうか。




「P1でハイブリッドシステムを採用して以来、ハイブリッドパワートレーンの可能性についてリサーチしてきた。P1は限られた数しか作らなかったが、アルトゥーラはメインのプロダクトラインなのでたくさん作りたい。ハイブリッドパワートレーンの次のステップとして開発に臨んだ」

エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ+モーター エンジン型式:M630V6 排気量:2993cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:-- 最高出力:585ps(430kW)/7500rpm 最大トルク:585Nm/2250-7000rpm 過給機:ツインターボ 燃料供給:DI 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:72ℓ コンパクトなシングルスクロールターボは左右対称レイアウト。ターボは、ボールベアリング式。 ウェイストゲートは電動式。システム全体の最大トルクは720Nm

──P1とアルトゥーラのハイブリッドパワートレーンについて、最大の違いは何でしょう。




「アルトゥーラではEV走行レンジの拡大をターゲットに据えた。また、エキサイティングなパフォーマンスとドライバーエンゲージメント(走る歓び)を追求した。モーターはスロットルへの入力に対して、まるで自然吸気エンジンのように瞬時に反応する。アルトゥーラは効率を高めるために小排気量のV6を選択した。総合性能の観点からだ」

──90度や60度ではなく120度のVバンク角を選択した理由を教えてください。




「車両ミッドに搭載するエンジンなので、パッケージをタイトにしたかった。120度にすることでエンジンを短くできる。なぜなら、向かい合うシリンダーのクランクピンを共有することができるからだ(等間隔で爆発させる場合、向かい合うシリンダーのクランクピンを別にし、60度の場合は60度、90度の場合は30度オフセットさせる必要がある)。ダブルコンロッドのクランクシャフトにできるのが、120度を選択した理由だ。カムシャフトの駆動チェーンはフロントに配置するのが一般的だが、このエンジンはリヤに配置している。ミッドエンジンアーキテクチャーのパッケージングを最適化する観点では、そのほうが有利だからだ」

──84.0mm×90.0mmのボア×ストロークはどのような理由で決めたのでしょうか。




「最高回転数のターゲットに対して実現可能なストロークを導き出した。ピストンスピードの都合上、高回転まで回そうと思ったらあまり長いストロークにはできない。もちろん、燃焼効率も考慮した。世界中の排ガス規制にミートすると同時にエキサイティングなパフォーマンスを求めた。その結果として、この諸元になった。(84.0mm径のボアは)タイトなパッケージングのためでもある。私たちはミリ単位で最適化に取り組んだ」

──アキシャルモーターを採用した理由について教えてください。




「効率の良さだ。ブレーキディスクのような形をしており、とてもコンパクトだ。ローターは空気で冷却。ステーターは液冷だ。モーターの直径は大きくするほどトルクは出しやすくなる。だが、(同軸上に配置する場合)直径を大きくするほどパワートレーンの重心は高くなってしまう。パッケージングとパフォーマンスの面でトレードオフが存在することになる。アキシャルフラックスモーターはコンパクトながら95psの最高出力を発生する。トランスミッションアッセンブリーに統合されているのが特徴だ」

──モーターの位置はどこですか?




「トランスミッションは油圧多板のデュアルクラッチを備えている。そのトランスミッションとV6エンジンの間にモーターがあり、モーターとエンジンの間には乾式クラッチがあって、エンジンとモーターを切り離すことができる。そのおかげでリバースギヤをなくすことができた。モーターを逆回転させることでリバースにする」

ハイブリッドコンポーネントの重量はわずか130kg(うちバッテリーが88kg、Eモーターが15.4kg)トランスミッションに後退ギヤなく、Eモーターの逆転で対応する。 8速DCTノ変速タイムは200ミリ秒に迫る。

──電子制御デファレンシャルについて教えてください。




「デフハウジングの中にモーター駆動のクラッチがあり、トルクベクタリングができる。従来の(マクラーレンの)クルマではブレーキステアのアレンジメント(によるヨーコントロール制御)しかできなかったが、Eデフを使うことでとても軽量なパッケージでブレーキステアと同様の効果を発揮することができる。車両運動性能の観点で、とても興味深いツールだ。ドライバーエンゲージメントを改善する役割を果たすことになる」

──カーボンモノコックは従来どおりRTM(レジン・トランスファー・モールディング:炭素繊維を配した型に樹脂を注入し硬化させる工法)で製造しているのでしょうか。




「MP4-12Cの時代からRTMで製造している。従来は外部に製造を委託していたが、アルトゥーラからインハウス(MCTC)で製造している。そのため、開発と製造のプロセスを効率的にコントロールできるようになった。構造設計を最適化する場合、クラッシャブル構造と剛性の両立が必要になる。カーボンファイバーはモノコック全体の特性を考慮しながらチューニングできるのが特徴だ。




私たちは製造プロセスの効率化にも取り組んだ。カーボンファイバーのシートをプリフォーミングすることによってストラクチャーを作り、それをジグソーパズルのピースを組み合わせるようにしてひとつの大きなモールド(型)に入れる。そして、樹脂を流し込む。従来はプリフォーミングの工程に多くの工数を必要とした。ディテールのカッティングがたくさん必要だからだ。MCTCではレーザーコントロールのウォータージェットカッティングを使用することで、プリフォーミングを自動化した。そのためレイアップ(型への貼り付け)も正確になった」

新しいCFRPモノコックとアルミ合金製のクラッシュビームとリヤサブフレーム。MCLAモノコックの寸法はストラクチャー全体で+0.75mm、企画加工の許容誤差はもっとも厳しい部分で±0.25mmだという。バッテリー・コンパートメント、エアロ・サーフェス、Bピラー、ドアヒンジ取付部品を含めて、重量はわずか82kg

──最後に、アルトゥーラの車体表面を流れる空気の使い方ついて教えてください。




「空力はとても重要だ。パフォーマンスは必要だが、同時に見た目も重要。アルトゥーラではピュアなデザインを心がけた。そのために外板に金属のシングルピースを採用した。例えば、ドアはスーパーフォームド・アルミニウム(加熱したアルミニウムシートをガス圧によって型に押し付けて成形)を採用した。冷却のための深いダクトを設けるためだ。




パワートレーンのメインクーリングを行なうラジエーターはミッドマウントされている。フロントには(インタークーラーで加圧した)チャージエアの温度を低くするための低温クーリングを配置しており。エアコンとバッテリー冷却のためのコンデンサーもフロントに置く。




リヤスポイラーはクラム(ドアと同様にスーパーフォーミングで成形したクラムシェル形状のパネル)にインテグレートされている。ダウンフォースは最大化を狙うのではなく、必要な量を求めた。エキゾーストシステムはエンジンの上にあるので、熱はストレートにトップから外に出てくる。そのため、複雑な流れにならない利点がある(ディフューザーの邪魔をしない)」




──興味深い技術ばかりです。ご説明いただき、ありがとうございました。

リヤサスペンションは、上部のアッパーウィッシュボーンと2本のロワーリンク、ホイールセンター前方のタイロッドが組み合わされている。

ホイール:F19×9J、リヤ20×11J フロントが235/35ZR19 リヤが295/35R20 ブレーキは、カーボンセラミックディスクを採用。ローター径はF 390mm/R 380mm
フルLEDヘッドライトハ左右それぞれ21個のLEDを備え、4個がメインビーム、5個がロービーム、残り12個がマクラーレンのスタティック・アダプティブ機能に使われる。これは、ヘッドライトのロービームをステアリングに合わせて動かし、旋回中に前方の道路とその周囲の両方を照らし出す。
タイヤはピレリCyber Tyreテクノロジーの次世代ピレリ P ZERO CORSAを履く 

ステアリングは、マクラーレンの伝統に則って、電動パワーステアリングではなく、電動油圧アシストをとる。

0-100km/h加速3.0秒 0-200km/h加速8.3byou 0-400m:10.7秒 最高速度:330km/h 200-0km/h制動距離 126m 100-0km/h制動距離 31m

新開発の3.0ℓV6ターボは、これまでのマクラーレンV8エンジンより50kgも軽いという。

McLaren Artura




全長×全幅×全高:4539mm×1976mm×1193mm


ホイールベース:2640mm


車重:1498kg(DIN)


サスペンション:F ダブルウィッシュボーン式/R マルチリンク式 独立式アダプティブダンパー、プロアクティブダンピングコントロール(PDC)


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ+モーター


エンジン型式:M630V6


排気量:2993cc


ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm


圧縮比:--


最高出力:585ps(430kW)/7500rpm


最大トルク:585Nm/2250-7000rpm


過給機:ツインターボ


燃料供給:DI


使用燃料:プレミアム


燃料タンク容量:72ℓ


モーター:アキシャルフラックス型永久磁石モーター


モーター型式:


最高出力:95ps(70kW)定常走行時は50ps(37kW)


トルク:225Nm


システム最高出力:680ps(577kW)/7500rpm


システム最大トルク:720Nm/2250-7000rpm




トランスミッション:8速DCT(SSG)


駆動方式:RWD


WLTP(EU)でのCO2排出量:129g/km

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