「自動車用バッテリー」として、長年に渡って使い続けられてきた鉛バッテリー。もはや技術的には枯れ切った製品とのイメージがあるかもしれない。しかし、鉛バッテリーは時代ごとの要求に応えて、今も進化を続けているのだ。

TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

鉛蓄電池は、基本的に満充電状態で使われ、しかも従来の自動車では、電力の「出入り」があまり多くなかった。オルタネーターは、通常運行状態で必要な電力量を発生できるだけの能力を持っている、だから始動時を除けば、基本的にバッテリーの電力には頼らなかった。バッテリーが蓄えている電力は、消費電力がオルタネーターの発電能力を超えた時だけ補助的に使うもので、バッテリー全体の容量でいうと、せいぜい2%程度の出入りがたまに起こる、というものだった。



回生やアイドリングストップが入ってきても、基本的にその使われ方は変わらない。頻度こそ多くなるが、出入りが5%程度に増えたか?という程度だという。ただし、燃費性能の向上を目指してクルマ側の仕組みが変わってきたことで、バッテリーにはより高い「充電受入性」が求められるようになった。

エンジンを始動してから、各種装備類を作動させた際に起こる電圧変動の過程をプロットした図。エンジンスターターがいかに大電力を消費するかが理解できる。オルタネーターが発電すると電圧は12V以上をキープするが、エアコンのスイッチを入れた瞬間には12V近辺まで低下してしまう。ヘッドライトやウインカーの使用開始直後も明確な電圧降下が発生していることが見て取れる。

具体的には「充電制御車」の登場だ。かつてのクルマはオルタネーターが常にエンジン回転数に応じた発電を行なっていた。しかし、省燃費性能をより高めるため、電力消費が少ない状態ではオルタネーターを休止させ、エンジン負荷を減らす機構が採用されるようになってきた。なにしろ、オルタネーターの発電負荷は最大でエンジン出力の5%程度とも言われる。その分の負荷を減らし、また、充電はなるべく回生によって補うことで、燃費向上を図るものが充電制御車である。



エネルギー回生効率を高めるためには、減速状態(えてして短時間である)で発電した電力のうち、どれだけをバッテリーに蓄えられるかが問題となる。そこで発電した電気をなるべく短時間の間に効率よく蓄えられる、充電受入性の高いデザインが要求されるようになってきたわけだ。言葉を換えれば、「燃費向上に貢献できるバッテリー」である。



さらにアイドリングストップが加わると、電力の出入り頻度はますます高まる。始動性(大電流を一気に放出できる性能)を高めるだけでなく、電力の出入りを繰り返しても寿命への影響が少ない「充放電耐久性」の高度化が求められる、という流れである。

バッテリーは放電量に比例して電解液の比重が低下する。上のグラフはその一例をイメージ化したものだ。比重の低下は直線的に起こるため、放電状態は比重によって判断できる。

また、その値は計算式によって求めることができる。ここに示す式がそれだ(補正のための温度換算式は省略)。また、比重を測定することで、そのセルの電圧は比重値+0.84によって求めることができる。

バッテリーは外部につないでいなくても、徐々に電気エネルギーを失っていく「自己放電特性」を持っている。保水時にバッテリー用の精製水を使用しなかったり、異物を混入させてしまうと、それらに含まれる異金属が極板表面に付着して反応し、「局部電池」を形成することで自己放電が起こる。グラフは極格子の合金にアンチモンとカルシウムを使ったハイブリッドタイプの、温度条件ごとの自己放電特性を示している。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | 12V鉛バッテリーの長寿命化技術:頻繁な充放電制御への対処