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内燃機関超基礎講座 | インホイールモーターとは何か:究極の車両制御も可能か?


ホイールを駆動するのが自動車の目的。エンジンから変速機を経てシャフトを通じホイールを回転させ——というプロセスを一気に短縮するのがインホイールモーターという手段である。


TEXT:髙橋一平(TAKAHASHI Ippey)


*本記事は2011年4月に執筆したものです

インホイールモーターを使うEVは、車両ダイナミクスの制御を考える時、ひとつの究極形ともいえる。コンピューター制御技術が花盛りの現在、車両ダイナミクスの制御はさまざまな手法でアプローチが試みられ、それなりの結果も得ることに成功しているわけだが、内燃機関をベースに行なわれている現在のそれは、燃料の燃焼からエンジン出力、トランスミッション、そしてドライブシャフトなどを経たうえで、最終的に作用すべきタイヤと路面の接点に辿り着くという、実に遠回りなプロセスのうえに成り立っている。




むしろ、これで“車両ダイナミクスの制御”がある程度成立しているというのが、現在の制御技術の素晴らしさでもあるものだが、さまざまな制約にとらわれずに、この類の制御の意味を追い求める時、最終的に作用すべき、タイヤと路面にもっとも近いところで制御を行なうというのが正論のひとつであることに間違いはない。そして、一番近い解がホイールの内側で動力を発生させるインホイールモーターというわけだが、正論ゆえに実現は難しいとされてきた。そしてその最たる理由が、ダイナミクスの追求とは背反する要素となる、ばね下重量の増加だ。

ケースの減速機部分にあたる部分がナックルも兼ねているため、組み立てられた状態を見ると、そのコンパクトさがよくわかる。ホイールの内側を占領するという、インホイールモーターの従来イメージとは大きく異なる。

ハブまで含む一輪あたりのユニット重量は約30kg。開発過程においては水冷化されていた時期もあったが、効率を追求していった結果、ケーシングに溝を刻んだ程度の空冷で成立が可能となり、軽量化にも大きく寄与している。

このユニットのカギとなるのが、サイクロイド式減速機構の採用。偏心カムを利用した内接転動と呼ばれる機構を用いることで、EVに必要とされるトルク容量と、30万kmの耐久性を確保しながら、同軸で11:1の減速比を実現している。

しかし、NTNが開発したインホイールモーターは、そういった先入観を変えるかもしれない。全重量は約30キロ。大層な重さのようだが、これはハブからナックルまでを含む重量。ポイントはユニットに組み込まれた減速機構で、これによって小さなモーターを高回転化、パワーを確保している。聞けば高度なハイテク技術というよりは、組み合わせの巧みさがポイントとのこと。EV、いや自動車に新たな局面が訪れる日は、そう遠くはないのかもと考えを改めると同時に、現場でモノ造りを真剣に考えている人たちの凄さを実感したのだった。

走行性能を検証すべく製作されたプロトタイプ。現在はパイプフレームを用いているため狭いが、実際にはさらなる容積効率の追求が可能。薄型のモーターがもたらす恩恵は、現状でも見て取ることができる。

すっぽりとホイールの内側に収まるレイアウトは、インホイールモーターならではの特徴を充分に活かしたもの。駆動はインバーターを用いる3相交流によるもので、出力は1輪あたり数kWとなっている。

小径ホイールに収まるように、薄型に設計されたモーターユニット。ユニット全体でナックル部を形成。出力こそ小さいが上に示したユニットと同様に減速機構(詳細は未発表)も備える。

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