省燃費性と快適性。目指すところを咀嚼し、最低限の変更と巧みな協調制御で実現。満を持して登場したスバルのアイドリングストップは独特なアプローチから生まれた。

TEXT:高橋一平(TAKAHASHI Ippey)

*本記事は2012年3月に執筆したものです

「アイドリングストップというと、再始動の“速さ勝負”になりがちですが、我々は少し違った切り口で開発しました」。スバルのアイドリングストップシステム(以下ISS)について、開発担当の大堀勇二氏は開口一番にこう語った。



スバルのISSが目指したのは、ブレーキペダルから足を離すところから、実際にクルマが動き出すまでの時間。クルマの動き出しをドライバーが認識できるだけのG(加速度)が立ち上がるまでの時間を短く、それでいて自然に感じられるタイミングに仕上げることに力が注がれたという。

大堀氏によれば、その結果に過ぎないというエンジン再始動までの時間はわずか0.35秒。このレベルを達成するためには、停止時のクランク位置を正確に把握したうえでの始動制御が一般的なところだが、スバルではクランキング開始時のみ一時的に非同期の全気筒同時噴射を行なうという独特の制御で、前記のような複雑でコストが掛かる手法に頼ることなく素早い再始動を実現。そして、この再始動時の主役となるスターターには、ドライバーの「心変わり」に対応したタンデムソレノイドスターターを採用。クランクの完全停止を待たずに再始動が可能となったことで、市街地走行で現実的に起きうる事象をより広い範囲に渡ってカバーすることに成功している。

上のグラフと図はドライバーの「心変わり(=チェンジマインド)」に対応したISSの作動を表したもの。ISSは車両停止後0.5秒で燃料をカットするが、慣性によりクランクはそれから1秒近く回転を続ける(グラフ中黄色で囲まれた領域)。



従来型のスターターではクランクの完全停止まで待たないと再始動が出来ないため、車両停止後からアイドリングストップまでの時間を長めに取るなどの考慮が必要だが、完全停止前の再始動が可能なタンデムソレノイドスターター(TSスターター)の採用により、ISSの作動領域を広い範囲で確保することが可能となった。

デンソーとの共同開発で生まれたTSスタータ。モーターに通電せずにピニオンギヤを押し出せるため、停止間際に起きやすいクランク逆転にも対応。音質にもこだわりギヤのモジュールも変更し、噛み合い率を向上させている。

大堀勇二氏 : スバル技術本部HEV 設計部システム設計課 担当(取材当時)

「メーカーのエゴをユーザーに押しつけるべきではない」(大堀氏)。むやみに背伸びすることなく、コストや実際の使い勝手まで考えた真摯な作り込み。モノ造りのあるべき姿が窺える。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | スバルのアイドリングストップ制御:ドライバーの心変わりに対応するために