スポーツカーにとっては現代は冬の時代だ。そんななかでも日産はGT-RとフェアレディZという生粋のスポーツカーを造り続けている。トヨタ86とスバルBRZは、新型へスイッチする直前だし、フェアレディZも次期型のプロトライプがアンベールされている。そんな現在、現行Z34型は、最後の最後に手に入れる価値はあるだろうか? スポーツカーの魅力を維持しているだろうか?

カタログに書かれている燃費向上策は、可変バルブタイミング(VVEL)/発電電圧可変制御のみ。

現行フェアレディZ(Z34型)のデビューは2008年12月だから、もうすでに12年経っている。モデルライフが長いスポーツカーとはいえ、これはかなりの長寿モデルと言える。すでに次期型のプロトタイプが発表されているから、ほどなく新型に切り替わるだろう。



切り替わるまでに、現行フェアレディZに乗ってみようと思って、1週間ほど生活をともにさせてもらった。



グレードはversionSTの7速ATモデルだ。NISMO(ニスモ)モデル(6MTが640万9700円、7ATが651万9700円)を除くとversionSTがトップグレード(530万8600円)になる。



トヨタ86/スバルBRZの新型がデビューするタイミングということもあり、国産スポーツカーの代名詞であるフェアレディZに久しぶりに試乗してみようという寸法だ。

全長×全幅×全高:4260×1845×1315mm ホイールベース:2550mm

トレッド:F1540mm/R1565mm 最小回転半径:5.2m
車両重量:1550kg 前軸軸重860kg 後軸軸重690kg

結論から言うと、Z34型フェアレディZ、良かった。

2021年に新車で買える古典的なスポーツカーとして、とても魅力的だった。

大排気量(3.7ℓ)の自然吸気高回転型V6エンジンをフロントに積む、FRスポーツというフォーマットは、いまや絶滅危惧種。大切にしないと。

上の記事でトップだったスバルWRX STIがカタログから落ちたから、現在「1馬力いくらか選手権」のトップはフェアレディZなのだ。



横浜の日産グローバル本社地下駐車場で対面した真っ赤(カーマインレッド)のボディカラーのフェアレディZは、やっぱりかっこよかった。ちょっと猫背でコンパクトなボディサイズもいい。

コンパクト?

そうなのだ。現行フェアレディZは

全長×全幅×全高:4260×1845×1315mm

ホイールベース:2550mm



新型スバルBRZは、

全長×全幅×全高:4270×1775×1310mm

ホイールベース:2575mm



トヨタ・スープラ

全長×全幅×全高:4380×1865×1295mm

ホイールベース:2470mm



やっぱりZは、いまやコンパクトなのだ。

乗り込んでエンジンをスタート。かなり勇ましいエンジン音がする。ロングノーズ・ショートデッキという古典的スポーツカーの文法に則ったファストバッククーペだが、走り出してもノーズの長さは気にならない。おおっ、なんだかいまやライトウェイとスポーツみたいだぞ。



だが、サイズはともかく車両重量は1550kgあるから、けっしてライトではない。でも355ps/374Nmあるからひとたびアクセルを踏めば、スポーツカーらしい加速をしてくれる。

シート長運転席505mm シート長助手席505mm ヘッドクリアランス:505mm

インテリアから、もう古典的だ。目の前には3眼のメーター。センターコンソール上部には、時計/電圧計/油温計の3つのメーターがドライバーに向けて配置されている。センターディスプレイは小さいし、その下のコントロールパネルのUI(ユーザーインターフェース)も、もはや古い。

エンジン 形式:V型6気筒DOHCターボ 型式:VQ37VHR 排気量:3696cc ボア×ストローク:95.5mm×86.0mm 圧縮比:11.0 最高出力:355ps(261kW)/7400rpm 最大トルク:374Nm/5200rpm 燃料供給方式:PFI 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:72ℓ

エンジンは、福島県いわき工場で組み立てられる日産が誇る「VQ」型。「VHR」の型式が与えられているシリーズきっての「高回転・高応答」のエンジンだ。「レッドゾーンは7500rpmから」なんて書くのも、古典的なエンジンならではだ。最高出力の355psも7400rpmで発生するか、生粋のスポーツエンジンである。



とにかく、すべてが古典的スポーツカーで、自動ブレーキだの、アイドルストップだの、気筒休止だの、ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)だの、といった現代のクルマたちが普通に装備しているアイテムはことごとく付いていない。だから何だ! と古典的なスポーツカーファンは言うだろう。だが、おそらくもうすぐ登場する時期フェアレディZは、ターボエンジンになるし、もしかたら7速ATが9速になるかもしれない(願望含む)。もちろん、自動ブレーキ、プロパイロット(2.0ではないにしても)も付くだろう。というように、一気に2020年代のスポーツカーになる(はずだ)。

だから、いまは、新車で買える古典的スポーツカーとしてフェアレディZを楽しむのが正しい姿勢なのかもしれない。



したがって、燃費が悪いとか、うるさいとか、は言ってはいけない……のかもしれないけれど、一応書いておく。

7M-ATxのギヤ比は 1速:4.923 2速:3.193 3速:2.042 4速:1.411 5速:1.000 6速:0.862 7速:0.771 後退:3.972 最終減速比:3.357
ペダル配置は、やや右にオフセットしているように感じた。

あ、先に美点を記しておくと……。



まずは、ステアリングのフィールが素晴らしい。いまや数少ない「油圧アシスト」のパワーステアリングを使っているから、ということもあるのだろうが、とにかく手応えが自然だし、滑らかだ。最近の電動アシスト式のパワーステアリング(必要な時意外は電気を流さない=モード燃費測定時はステアリングは切らないので、作動しない。対して油圧式は常時油圧ポンプが作動しているからモード燃費的には悪影響がある)の出来はとてもいいからまったく気にならないのだが、こうしてZのステアリングを切ると、そのしっとりしたフィールは、やっぱり電動アシストとは違う。この油圧アシスト式パワステは、次期型では消えてしまうものだろう。Z34のステアリングは、いい。



ボディサイズがいい(これは書いたとおり)。スタイルが美しい(これは好き好きですね)。だから、自分のガレージ(そこが都内の狭小住宅の1階駐車場だとしても)にスポーツカーが収まっているのを見るのは、本当に楽しい。



ステアリングには、マニュアルモード用のシフトパドルが。左が「+」右が「ー」
パドルの素材はマグネシウムだ。

エンジンは、回して楽しいし、自然吸気エンジンだから(当然)ターボラグもない。最近のターボ過給エンジンはトランスミッションとの協調制御が行き届いている関係もあって、これ見よがしな「ターボラグ」を感じることはないが、出来の良い大排気量自然吸気エンジンのクルマに乗ると、「あぁ、こっちの方がキモチイイ」ということになる。だって、どんなときも3.7ℓの排気量があるのだから。



「コクとキレ」を目指したジヤトコ製7速ATも、ライバルたちが8速、9速へと多段化を進めた現在でも、不満を抱かない性能をキープしている。

パーキングブレーキは、いまは少数派となりつつある機械式。いわゆる「サイドブレーキ」だ。

では、「ここはちょっと……」というところはどこか?

まずは、音。走っている間、ずっと室内はかなりの音量のノイズで満たされている。アクセルを踏み込んだときのVQ37VHRエンジンの咆吼を楽しみたいのだから、うるさいとか言うな、という声もあろうかと思いますが、満たしている音の大部分はロードノイズだ。太いスポーツタイヤだからロードノイズは仕方ないのかもしれないけれど、もう少し静か(静かでいたいときくらいは)だとうれしい。



ちなみに100km/h巡航時のエンジン回転数は2000rpm。現代としては低くはないが、とりたてて高いわけでもない。

室内長×幅×高:990mm×1495mm×1090mm

燃費ももう少しいいとうれしい。

今回、東京ー箱根の往復を、ほぼ同じ道程で新型メルセデス・ベンツS500 4MATICと同じペースで走った。かたや2トン超えの4WD大型セダンだ。で、燃費はメルセデス・ベンツS500が12.5km/ℓだったのに対してフェアレディZは9.8km/ℓ。多くは期待しないとしても、12~13km/ℓくらいはいってほしい走行条件だった。



今回は433.2km走って、トータルの燃費は8.4km/ℓだった。



WLTCモード燃費が8.8km/ℓ(6MTモデルは8.5km/ℓ)だから、ほぼ実力通り、ということになるのだが、もうちょっといいとうれしい(スポーツカーなのに燃費の話をするな!という声はあろうかと思いますが)。

都内の自宅から横浜の日産グローバル本社まで、30km弱。朝、エンジンをかけて日産本社まで走っても、油温計は適温(たぶん100~110℃)まで暖まらない。最近のエンジンは触媒の活性化のためにも早期暖機するようになっているけれど、フェアレディZのVQ37VHRは、どうも違うようだ。これだと、たとえば、片道15~20km程度の通勤や買い物ではエンジンが暖まらないうちに目的地へ到着してしまうということになってしまう(スポーツカーで買い物っていうのが、使い方が違うと言われたらそれまでですが)。

タイヤはブリヂストン POTENZA RE050A サイズは、F245/40R19  R/275/35R19
ブレーキは前後ベンチレーテッドディスク(フロント4ポッド、リヤ2ポッドのレッド塗装アルミキャリパー対向ピストン)
サスペンションは、リヤがマルチリンク式
フロントはダブルウィッシュボーン式

そんなわけで、いろいろ書いてきたが、熟成され尽くしたZ34型フェアレディZは、とてもいいクルマだった。何度も言うが、2021年に新車で買える古典的なスポーツカーとして、とても魅力的だった。



燃費に関しては、8.4km/ℓで文句を言ったが、これがたとえ、12.0km/ℓだったとしても、年間8000km程度の走行距離だったら、

8.4km/ℓだったら952ℓ

12.0km/ℓだったら667ℓ

ハイオク仕様だから燃料代は(158円/ℓだとして)15万416円と10万5386円で年間4万5000円程度(月3750円程度)の違いに過ぎない。(5年乗ったら22万5000円の違いだけど)

メーターもいまやクラシカルな3眼式。センターが回転計だ。

次期型が搭載するのは、十中八九スカイライン400Rと同じVR30DDTT型3.0ℓV6ツインターボだ。

最高出力:405ps(298kW)/6400rpm

最大トルク:475Nm/1600-5200rpm



と強力なスペックになる。がモード燃費は

スカイライン400R

WLTCモード燃費:10.0km/ℓ

 市街地モード 6.5km/ℓ

 郊外モード 10.6km/ℓ

 高速道路モード 12.5km/ℓ



だから、14%程度良くなるに過ぎない(パワーアップして燃費もよくなるのだから凄いことなのだが)。

大排気量自然吸気エンジンと油圧式パワーステアリングという現行Zが持っている美点は次期型では消えてしまうのだから、最後に現行モデルを味わっておく……という選択肢は、アリだろう。

いまや、「小さい」モニター。その下には、当時最先端のユーザーインターフェイスだったマルチファンクションコントロールスイッチが並ぶ。

ということで、筆者の(ちょっとうるさくて燃費も悪いけれど)お勧めは

ベースグレード(6MT)モデル(どうせならMTを楽しむのもいい)

である。価格は397万9800円。



最上級のversionST(530万8600円)との違いは

BOSEサウンドシステム(うるさいからあんまりオーディオにこだわっても……)

運転席/助手席パワーシート(なくても大丈夫)

バックビューモニター(あったらうれしいけれど)

本革・スエード調ファブリックコンビシート(ファブリックで不自由なし)

タイヤ&ホイールが18インチ(versionSTは19インチ)

4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ(verionS以上。これはほしいかも)



現行フェアレディZが持っている古典的スポーツカーの味わいは、ベースモデルでも充分あると思う(試乗していないので推測だが)。

ラゲッジルームは、とにかく浅い。

400万円を切る価格で、3.7ℓV6高回転型自然吸気エンジンを搭載するFRスポーツカー(どこからどう見ても誰が見てもスポーツカーのルックス)が買えるのは、おそらくいまだけ。

100km/h巡航のエンジン回転数は2000rpm

もうすぐ登場する86/BRZも気になるだろうけれど、Z34型フェアレディZの有終の美もちょっと気にしてもいいと思う。

最低地上高:120mm この角度から見ると本当にかっこいい。

日産フェアレディZ Version ST

全長×全幅×全高:4260×1845×1315mm

ホイールベース:2550mm

車両重量:1550kg

乗車定員:2名

サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式

エンジン

形式:V型6気筒DOHCターボ

型式:VQ37VHR

排気量:3696cc

ボア×ストローク:95.5mm×86.0mm

圧縮比:11.0

最高出力:355ps(261kW)/7400rpm

最大トルク:374Nm/5200rpm

燃料供給方式:PFI

使用燃料:プレミアム

燃料タンク容量:72ℓ

トランスミッション:7速AT



WLTCモード:8.8km/ℓ

車両本体価格○530万8600円

情報提供元:MotorFan
記事名:「 現行Z34型日産フェアレディZ トヨタ86/スバルBRZの新型登場直前の今、乗ってみた 「スポーツカー」としての味わいは健在か、次期型を待つべき?