法人向けに販売される電動ビジネススクーター、ベンリィe:シリーズに試乗した。原付一種の「Ⅰ(ワン)」と原付二種の「Ⅱ(ツー)」があり、それぞれに大型フロントバスケットや大型リヤキャリア、ナックルバイザー、フットブレーキを標準装備した「プロ」をラインナップする。今回は売れ筋となりそうな「Ⅱプロ」をメインに、最もベーシックな「Ⅰ」の2モデルを乗り比べてみた。



REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)

PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・BENLY e:Ⅱプロ……748,000円/BENLY e:Ⅰ……737,000円

ガソリン車のベンリィシリーズをベースにEV化。ヘッドライトの形状やサイレンサーの有無などが判別ポイントで、試乗したⅡプロは110プロよりも10kg重い。

車体色は全ての仕様でロスホワイトのみとなり、サイドに専用ロゴステッカーを貼付。なお、ウインドシールドは純正アクセサリーで、価格は13,200円だ。

初速がスムーズ、きつい坂道もグングン上る

 新聞配達や宅配用途に特化したビジネススクーター、ベンリィが登場したのが2011年のこと。あれから10年、すっかり街の風景に溶け込むほど普及した感があるが、残念ながら私の試乗経験はゼロ。ゆえに今回のEVモデルについて、ガソリン車との比較はできないことをあらかじめお許しいただきたい。

 メインで試乗したのは原付二種登録のⅡプロで、純正アクセサリーのウインドシールドやグリップヒーター、インナーラックなどが追加装着された車両だ。ベンリィってこんなに大きいのか、と思うほどにボリューム感があり、ウインドシールドのせいもあって取り回しがしづらい。だが、後述する後進アシスト機能を利用することで、これは大きなネガではなくなるのでご安心を。

 まずは動力性能から。最高出力5.7psは、同じくEVで原付二種登録となるPCXエレクトリックと共通だが、発生回転数がPCXの5,500rpmに対して3,900rpmとやや低い。一方、最大トルクはPCXの18Nm/500rpmに対して15Nm/1,500rpmと、こちらは発生回転数に3倍もの開きがある。とはいえ、スタートダッシュの力強さは同等レベルで、おそらくリヤデッキに60kgの荷物をフル積載しても電動モーターゆえに加速力は大きく落ちないだろう。なお、登坂性能は12°(約22%)を公称しており、これはガソリン車のベンリィ(50cc)の約16°(29%)に迫る。

 何より感心したのは、スロットルの動きに対するレスポンスの緻密さだ。駆動電流をより効率良くモーターへ供給する制御技術によるもので、人が歩くような微速域でも自在にコントロールできる。また、左右のスイッチボックスにあるボタンを同時に押して作動する後進アシスト機能も優秀で、降りて押し引きするよりもこれを利用した方が圧倒的に取り回しが楽チンなのだ。

 続いてハンドリングについて。もともとベンリィシリーズがそうなのか、それともEV化による重心位置の変化によるものなのかは定かではないが、ややリヤヘビーな印象を受けた。起き上がり小法師のように直立を保とうとする力が強く、すぐに慣れるレベルではあるが、そこにスーパーカブのようなファンな印象はない。例えば新聞配達なら、販売店を出発する際はフル積載であり、帰るときにはゼロになっていることから、積載量が大きく増減してもハンドリングが変化しにくいことを狙ったなど、何かしら意図があるように思われた。

 なお、フットペダルによる前後連動ブレーキの印象は良好で、非常にコントローラブルかつ高い制動力を確認。これなら安心して左手をフリーにできるだろう。

 合わせて原付一種登録のⅠ(無印)にも試乗した。ガソリン車なら50ccと110ccで動力性能に大きな差が出るが、ベンリィe:に関してはモーターは共通であり、制御系で差別化を図っているとのこと。それもあって、ゼロ発進の印象はⅡプロと大差なく、何度もナンバープレートの色を確認したほど。ちなみに最高速はⅠが50km/h、Ⅱが60km/hに設定されているとのことで、最高出力も3.8ps/3,000rpmに抑えられている。その結果、一充電あたりの走行距離はⅡの43km(60km/h定地走行テスト値)に対して、87km(30km/h定地走行テスト値)となっている。同条件でのデータではないので単純に比較はできないが、航続距離を優先するならⅠを選択するというのもありだろう。

 リアルタイムにバイクの位置を把握できるクラウド型の車両管理サービス〝ホンダ・フリート・マネージメント〟が利用できるのも、法人にとっては見逃せない長所だろう。ベンリィe:はモーターの制御技術がここまで進んでいることを示したモデルであり、EV化の未来が明るいことを我々に見せてくれた。

ディテール解説(画像は全てⅡプロ)

PCXエレクトリックとは異なり、アルミ製のモーターケースとモーターカバーを新設し、ステーターとローターをこの中に固定することでモーターをユニット化。さらにトルクリップルの少ない分布巻きモーターを採用している。
エネルギー源としてPCXエレクトリックと共通のモバイルパワーパックを2個搭載。登坂性能は60kgフル積載時に12°、一充電あたりの走行距離を車速60km/h定地走行テストで43kmとしている。
ガソリン車のプロと同様にフットブレーキを採用し、さらに前後連動システムを新開発。
ホイールはフロント12インチ、リヤ10インチ。リヤのタイヤサイズ(110/90-10)は50ccのベンリィ/プロと共通だ(ベンリィ110/プロは110/80-10)。
ヘッドライトはガソリン車の丸目から六角形となり、さらに光源はLEDに。これによりヘッドライトハウジングの高さが2cm低くなり、大型フロントバスケットの設置部もその分だけ下げられている。
リヤデッキとリヤキャリアはガソリン車のプロと同一仕様とされる。二つ折りの新聞の束を前後に並べて積めるサイズで、Ⅱ/Ⅱプロの最大積載量は60kgだ。
インナーラック(3,190円)は純正アクセサリーだ。シャッター付きキーシリンダー、開放タイプのインナーポケット、最大1kgまでの荷物を掛けられるフロントフック、アクセサリーソケットなどを採用。左に見えるノブはリヤブレーキを保持する際に使用する。
プロは風雨から手元をガードするナックルガードを標準装備。
グリップヒーターは純正アクセサリーで、取り付けに必要なクランパーコードとスイッチブラケットを含む装着価格は14,047円だ。
左側スイッチボックスにあるリバーススイッチを押しながら右の青いスタータースイッチを押すと後進アシストが駆動する。

BENLY e:Ⅱ/BENLY e:Ⅱプロ 主要諸元

◆車体(モバイルパワーパック2個搭載時の性能)

車名・型式:

BENLY e:Ⅱ…ホンダ・ZAD-EF10

BENLY e:Ⅱプロ…ホンダ・ZAD-EF11

全長×全幅×全高(mm):

 BENLY e:Ⅱ…1,820×710×1,025

 BENLY e:Ⅱプロ…1,840×780×1,050

軸距(mm):1,280

最低地上高(mm)★:115

シート高(mm)★:710

車両重量(kg):

 BENLY e:Ⅱ…125

 BENLY e:Ⅱプロ…130

乗車定員(人):1

一充電走行距離(※8)(km)

国土交通省届出値…43(60km/h定地走行テスト値)<1名乗車時>

最小回転半径(m):1.9

原動機形式・種類:EF10M・交流同期電動機

定格出力(kw):0.98(※9)

最高出力(kW[PS]/rpm):4.2[5.7]/3,900

最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):15[1.5]/1,500

タイヤ:前…90/90-12 44J、後…110/90-10 61J

ブレーキ形式:

 前…機械式リーディング・トレーリング

 後…機械式リーディング・トレーリング

懸架方式:前…テレスコピック式、後…ユニットスイング式

アンダーボーン:駆動用バッテリーHonda Mobile Power Pack2個



■道路運送車両法による型式認定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)

■製造事業者/五羊-本田摩托(広州)有限公司  

■製造国/中国

■輸入事業者/本田技研工業株式会社



(※8)一充電走行距離は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。一充電走行距離は、車速一定で走行した実測にもとづいた値です

(※9)道路運送車両法上の第二種原動機付自転車に分類

情報提供元:MotorFan
記事名:「 はたらくバイクとして活躍中!|ホンダ ベンリィe:シリーズに電動化の未来を見る【インプレッション】