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日産ルークス 車体はよく跳ねパワートレーンはギクシャクしやすい。走りの抜本的改善は急務


コロナ禍が猛威を振るう昨今、プライベートな空間を保ちながら自由に移動できるマイカーの良さが見直されつつある。




そこで、クルマの運転のブランクが大きいペーパードライバーや高齢者、あるいはこの機会に運転免許を取得した初心者にオススメなのが、安価かつ狭い道でも扱いやすい軽自動車やコンパクトカーだ。しかし、肝心の帰省や旅行でも、家族みんなが快適に過ごせるのだろうか?




「最新の軽&コンパクトはファーストカーとして使えるか?」と題したこの企画、2台目は日産の超背高軽ワゴン、ルークスハイウェイスターのNAエンジン搭載車における上級グレード「Xプロパイロットエディション」FF車。日産本社がある横浜から東京湾アクアラインを経て九十九里浜に至り、さらに房総半島を半周する約500kmのルートを走行した。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)


PHOTO●遠藤正賢、日産自動車、三菱自動車工業

2011年12月に初代ホンダN-BOXが発売されて以降、軽乗用車の市場は超背高ワゴンのシェアが急増。その後も徐々に増え、2018年にはスズキ・ワゴンRなどが属する背高ワゴンを追い抜き、最大のボリュームゾーンとなった。




なお、超背高ワゴンが背高ワゴンを追い抜く構図はダイハツとスズキも同様で、同じく2018年以降は毎年、タントがムーヴ、スペーシアがワゴンRの販売台数を上回っている。

現行日産デイズハイウェイスター(左)、デイズ(右)
現行三菱eKワゴン(左)、eKクロス(右)

そんな市場環境の変化を経た後の2019年3月、日産と三菱の合弁会社「NMKV」はまず、背高ワゴンの日産デイズと三菱eKワゴンからフルモデルチェンジ。この世代交代にあたり、NMKVはプラットフォーム・パワートレーンとも一新し、企画・開発の主体を三菱から日産に移している。

新型日産ルークスハイウェイスター(左)、ルークス(右)

新型三菱eKスペース(左)、eKクロススペース(右)

そして今回採り上げる、2020年3月に発売された日産デイズルークス改めルークスと、姉妹車の三菱eKスペースは、新型デイズ/eKワゴンの新世代プラットフォーム・パワートレーンをベースに全高を140mmアップ。リヤドアをヒンジ式からスライド式に変更した超背高ワゴンである。

Cセグメント車を凌ぐ質感と多彩な小物入れを兼ね備えた運転席まわり

320mmの前後スライド量を確保した後席。スライドドアの開口幅は650mm
中折れ形状の背もたれパッドを採用した前席は絶対的なサイズが小ぶり

そのため内外装の質感はデイズ/eKワゴンと同様に申し分なく、コンパクトカーどころか下手なCセグメント車を上回る水準。そして後席室内高は1390~1400mm、後席ニールームは770~795mm(最後端スライド時)、荷室床面長は675mm(後席最前端スライド時)と、後席・荷室の広さは申し分ない。

後席使用時の荷室。左側は最前端、右側は最後端にスライドした状態で、奥行きは筆者実測でそれぞれ63cm、30cm
後席格納時の荷室。奥行きは筆者実測で140cm
荷室床下のラゲッジアンダーボックス

また後席の前後スライド量は320mm、リヤスライドドアの開口幅は650mm、荷室の開口幅は1050mm、開口高は1080mm(いずれもメーカー公表値)と、それぞれクラストップの広さを確保したため、乗り降りと荷物の積み下ろしは極めて容易で、使い勝手にも優れている。

三菱eKスペースの前席セパレートシート

しかしながらデイズ/eKワゴンと同様に、前後とも絶対的なシートサイズが小さく、特に座面はベンチシートになっているせいもあり、身長176cmの筆者には下半身のサイドサポートとフィット感が物足りない。eKスペースには前席セパレートシートがメーカーオプション設定されているため、ルークスにもぜひ用意してほしいところだ。

日産ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション

テスト車両は155/65R14 75Sのヨコハマ・ブルーアースFE AE30を装着

率直な所、この時点ですでに嫌な予感がしていた。




デイズ/eKワゴンに対し、シートの出来の悪さは変わらず、ボディサイズは全高だけが140mmアップしている。タイヤサイズも変わらず、だが車重は100kg増し。しかしながら、デイズ/eKワゴンから1年遅れて発売されたため、その間にメカニズムの熟成が進んでいるかもしれない。




こうして考えれば考えるほどこの新型ルークス、走りに関しては不利な材料が多い。とりわけ今回のように約500kmを半日かけて走る長距離長時間ドライブでは、マイナス面が心身の疲労に直結して顕在化しやすいのだが……残念ながら嫌な予感は当たってしまった。

フロントサスペンションはストラット式
FF車のリヤサスペンションはトーションビーム式

日産本社を出て横浜市内の市街地を走り始めた瞬間から、デイズと同様に路面の細かな凹凸を前後サスペンションとも忠実に拾い、車体が上下に跳ねて落ち着かない。また、減速して10km/h以下に落ちアイドリングストップに入った際の空走感が非常に強く、ブレーキペダルの踏み増しを余儀なくされる。しかもそこで完全停止せず再加速した場合は、「スマートシンプルハイブリッド」のモーターアシストと最終減速比がデイズの6.540から7.319に低められたCVTが急加速を誘発するため、前後方向にムダな動きを起こしやすいのも頭痛の種だ。




元町商店街の石畳路で早々にノックアウトされてしまったため、首都高速道路湾岸線へ乗り込むと、加減速でギクシャクしやすい傾向は影を潜めるが、今度は空気抵抗の大きさと、横風への耐性の低さが顔を出す。今回はベイブリッジや鶴見つばさ橋、そして東京湾アクアラインと、海風の直撃を受けやすい道を敢えて通ったが、こうした場面で望外の安定性を見せたダイハツ・タントと比べると、ルークスは超背高軽ワゴン相応のレベルに留まっていた。

BR06DE型直列3気筒NAエンジンとジヤトコ製「CVT-S」、SM21型モーターを搭載

圏央道茂原長南ICから再び一般道に入り、九十九里浜を経て房総半島の中ほどを100km強、約5時間にわたり走っていくと、良路ではパワートレーンからの振動・騒音が少なく、ハンドリングも軽快かつ安定性が高いため快適に過ごせるものの、荒れた路面ではやはり突き上げと車体の跳ねが顕著になり、ロードノイズも際立つようになる。また停止寸前まで車速が落ちるとやはり、前述の加減速に伴うギクシャクした動きが出やすくなった。

「プロパイロット」に追加されたミリ波レーダーの搭載部

だが一番不快に感じられたのは、従来の単眼カメラに加え、この新型ルークスよりミリ波レーダーを併用するようになったADAS「プロパイロット」を使って、帰路の東関東自動車道を走行した時だろう。検知範囲が広がったおかげで、特にレーンキープアシストのライントレース性は申し分ないものに進化したが、アダプティブクルーズコントロールは従来と変わらず車間を多く取り過ぎる傾向にあった。




そして、不運にも事故渋滞に遭遇し、渋滞追従でストップ&ゴーを繰り返す状況に陥ると、前述の加減速に伴うギクシャクした動きが、自分で操作するよりもむしろ強く感じられるようになる。これは自分の意思とクルマの動きが連動せず、同乗者のように受け身の状態になることも無関係ではないだろう。だが、それまでに蓄積された疲労も相まって、この時点でいよいよ車酔いし、軽い吐き気を催すようになった。




超背高軽ワゴンの現行車種、ホンダN-BOXは2017年9月、スズキ・スペーシアは2017年12月、ダイハツ・タントは2019年7月に発売されており、この日産ルークスと三菱eKスペースは2020年3月発売の最後発モデルだ。それにも関わらず、競合車種に勝っているセールスポイントが見た目の質感と広さだけというのは、余りにも寂しすぎる。




端的に言えばこの新型ルークス、ファーストカーとして使うのは難しい。帰省はもちろん近所の送り迎えや買い物でも、助手席や後席に乗せられれば車酔いし、運転しても意のままにならないパワートレーンにストレスを溜めることになる。走りの抜本的改善は急務だろう。

■日産ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション(FF)


全長×全幅×全高:3395×1475×1780mm


ホイールベース:2495mm


車両重量:970kg


エンジン形式:直列3気筒DOHC


総排気量:659cc


エンジン最高出力:38kW(52ps)/6400rpm


エンジン最大トルク:60Nm/3600rpm


モーター最高出力:2kW(3ps)/1200rpm


モーター最大トルク:40Nm/100rpm


トランスミッション:CVT


サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム


ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム


タイヤサイズ:155/65R14 75S


乗車定員:4名


WLTCモード燃費:20.8km/L


市街地モード燃費:18.5km/L


郊外モード燃費:22.3km/L


高速道路モード燃費:21.0km/L


車両価格:184万3600円
日産ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション

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