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マツダの制御技術によるアップデートは体感できるか? MAZDA3のSKYACTIV-X&D1.8のアップデート版に試乗


マツダは制御技術のアップデートで走りの質を上げる試みを行なっている。その第1弾がMAZDA3で行なった商品改良の内容だ。ハードウェアではなくソフトで性能が上がる。それをドライバーは体感できるのか? 試乗して確かめてみた。


TEXT◎世良耕太(SERA Kota) PHOTO◎Motor Fan illustrated

マツダは2020年11月19日に新世代商品群第1弾のMAZDA3を商品改良した。合わせて、SKYACTIV-G 2.0搭載車に6速MT車を追加。「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した記念モデルを100周年特別記念車に設定した。今回の商品改良で、ファストバックではSKYACTIV-G 1.5(2WD)、SKYACTIV-G 2.0(2WD)、SKYACTIV-X(2WD、4WD)で6速MT車が選べるようになった。




商品改良の主な内容は次の3点だ。




1. 制御技術のアップデートによる走りの進化(SKYACTIV-X、SKYACTIV-D 1.8)


2. 車両ダイナミクス性能の進化


3. 予防安全性能の進化

SKYACTIVD1.8を積んだMAZDA3 FASTBACK

SKYACTIV-Xを積んだMAZDA SEDAN

マツダは制御技術のアップデートによって商品価値を高めていく方針を打ち出した。その第1弾がMAZDA3で行なった商品改良の内容だ。SKYACTIV-XについてはEGR(排ガス再循環:排ガスを吸気に混入させて燃焼を制御する技術)制御の精度を高めることにより、出力とトルクを向上させた。最高出力は180ps(132kW)から190ps(140kW)に、最大トルクは224Nmから240Nmにそれぞれ向上している。同時に、素早いアクセル操作に対する応答性とコントロール性を高めたという。開発に携わる技術者から、もう少し詳しく聞いてみよう。

「EGRの予測精度を上げました。予測精度を上げると何がいいのか。(SKYACTIV-Xが採用する)SPCCI(火花点火制御圧縮着火)という燃焼方式は、EGRの量によって自着火のタイミングや量をコントロールしています。そのため、EGRがどのくらい(新気に)混ざっているかは重要な情報になっています。それを予測するためにCPSという筒内圧センサーを全気筒につけています。そのCPSから得られる信号から燃焼室内の燃焼状態を解析して、EGRの量を予測しています」

今回のアップデートでは、CPSから得られる信号の処理の仕方を改善した。




「得られる信号は同じなのですが、より精度高く燃焼室の状態を検出できるようになりました。その結果、EGRの予測精度が上がり、EGRに合わせて空気の量を正確にコントロールできるようになりましたす。そうすると結果的に、アクセルの踏み込みに対して素早く空気量を立ち上げることができる。全開時には、正しいEGRが計測できているおかげで空気量を増やすことができます。その結果、全開時のトルクが上がっている。それが、今回のアップデートの内容です」

SKYACTIV-D 1.8の改良もEGRがカギを握っている。

1.8ℓ直4ディーゼルターボのSKYACTIV-D1.8

「EGRを最適化しています。いままで少しEGRを入れすぎていたところがあり、加速のための酸素が足りない領域がありました。そこを、エミッションが悪化しない範囲で最適化しています。いままでのSKYACTIV-D 1.8はアクセルを踏んだ後にちょっと停滞感のような感じがあったと思います。その領域のEGRの最適化がかなり効いており、もたつきなく噴け上がる特性に貢献しています」




ここでアップデート版に試乗した印象を述べておくと、SKYACTIV-X搭載車もSKYACTIV-D 1.8搭載車も、「ちょっと物足りないところがあるなぁ」と感じた部分が解消されている。とくに、アクセルペダルを踏み増した際の反応についてだ。アップデート版はアクセルペダルの踏み込みに対する反応がいいし、充分な力を発揮してくれる。とくにSKYACTIV-Xはエンジン回転が上昇していくときの音も良く、気分を盛り上げる。

SKYACTIV-Xに関しては、既存のオーナーに対し無償でソフトウェアプログラムのアップデートを準備しているという。「提供の時期や方法については準備が整い次第、お客様にご案内する予定」とのことだ。マツダがMAZDA3の商品改良を発表した直後の2020年11月23日、国土交通省は「自動車の特定改造等の許可」に関する省令を新たに制定。「自動車の使用過程における適切なソフトウェアアップデートを確保する環境」が整備された。SKYACTIV-Xのソフトウェアプログラムのアップデートは国交省の許可待ちの状態。SKYACTIV-D 1.8や先進運転支援技術系のアップデートに関しても「検討していきたい」とのことだ。

前記2.の「車両ダイナミクス性能の進化」は以下の4つの項目で成り立っている。




1. GVCアクティブエアシャッター協調制御の追加(SKYACTIV-X)


2. スポーツモードにGVC追加(SKYACTIV-X)


3. エンジン出力向上に伴うi-ACTIV AWDの進化(SKYACTIV-X)


4. サスペンション前後バランスの見直しによるフラット感の向上(全車)

MAZDA3は空気抵抗の低減とエンジンの熱マネジメントを両立するためにフロントグリル内にエアシャッターを装備している。SKYACTIV-X搭載車ではエンジンの熱効率のためにシャッターの開閉を緻密に制御するが、開閉状態に応じてリフト特性が微小ながらも変化する。その変化に合わせてGVC(Gベクタリングコントロール)を協調制御するようにしたのだ。シャッターが閉まっているときはリフトが小さいので(フロントタイヤに充分荷重が乗っているため)、エンジンのトルクを制御することによって行なうGVCは弱めに制御する。反対にシャッターを開くときは、フロントリフトの増加に応じて(フロントタイヤの荷重が減り加減なので)GVCのゲインを増やしていく。

「(シャッターが開いていると)リフトが出て接地荷重が減り、タイヤが出せる横力が減っていきます。その減った荷重を補うためにGVCのゲインを上げていきます。直進時だとエンジントルクで2〜3Nmの差にしかなりませんが、そうした細かなトルクを制御できるくらい、エンジンのポテンシャルが上がりました」

SKYACTIV-XはEGRの予測精度が上がったため、より緻密にトルクの制御を行なうことができるようになった。そのおかげで、車両運動制御の能力を引き上げることができるようになったのだ。




AT車に設定されるドライブモードの場合、従来のスポーツモードではエンジンの応答性とATのシフトパターンを変化させることでドライバーのアクティブな運転操作に対してリズミカルな応答を提供してきた。今回の商品改良では、GVCの制御量を変化させることで、よりダイレクトなステアフィールを実現し、リズミカルな走りの一体感を高めている。

i-ACTIV AWDの進化はエンジンの出力/トルクの向上に合わせたものだ。駆動トルク配分自体は変わっていないが、原資が大きくなったのでリヤに配分されるトルクの絶対値が上がり、4WDとしてのポテンシャルが上がったということだ。「ニュートラルにできる範囲を少し拡大することができた」と開発担当者は説明する。ここでも、エンジンの応答性が向上しているのが効き、ドライバーのアクセル操作に対して素早くリヤにトルクを伝えることができるようになっているという。そのため、回頭性も上がる方向だ。

サスペンションに関しては、車両フラット感の向上を狙った。フロントはコイルスプリングのばね定数をアップし、ダンパーの減衰特性を変更。さらに、バンプストッパーの特性を変更し、初期ばね定数をダウンした。いっぽうリヤはダンパーの減衰特性を変更している。




「リヤのダンパーは微調整。フロントのダンパーはメインバルブの1枚目を厚いものに換えています。微低速の領域ではバルブの剛性をじゃっかん上げて、縮み側をしっかりさせる方向。(定数を上げた)ばねと縮み側の減衰力がしっかり効くことで、路面からの入力に対してサスペンションがしっかりする。その結果、タイヤがうまい具合につぶれてくれると考えています」




フロントダンパーの伸び側はバルブ域と呼ばれる中速域の剛性を下げている。マツダがMAZDA3に行なった商品改良についてはエンジンだけが主役でないことは、運転してみるとわかる。タイヤがひと転がりし、路面の補修跡のような小さな突起を乗り越えた瞬間に「あれ?」っとなる。「なんだか、いなしかたが気持ちいいぞ」と。周囲の流れに合わせてアクセルペダルの動きだけで車速をコントロールし、遅いクルマに引っかかったので車線変更をしたり、首都高速に入るために上り勾配を駆け上がったり、合流と分岐でタイトなコーナーをクリアしたりするうちに、運転それ自体を楽しんでいる自分に気づく。

その気持ち良さの由来は、思いどおりにクルマが反応してくれることにある。それに、ドライバーがステアリング、アクセル、ブレーキを操作した際のリアクションが心地良い。マツダはクルマづくりの哲学を示す表現として「Be a driver.」という表現を用いているが、言い得て妙である。MAZDA3は今回の商品改良により、以前にも増してドライバーの気持ちにフィットするクルマになった。クルマを運転することの楽しさを再認識させてくれる。




なお、予防安全性能の進化については、追従走行機能とステアリングアシスト機能で車線の中央を走行するCTS(クルージング&トラフィックサポート)の作動を高速域まで広げた(商品改良前は60km/hまで)。「ステアリングを積極的に握ってもらいたい」という考えで高速域に対応していなかったが、「ロングドライブでの疲労軽減につなげてもらいたい」という考えに改め、ソフトウェアの変更で対応したものだ(MX-30で適用した内容と同じ)。MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)と合わせて進化している。

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