レクサスLSが、2020年11月にマイナーチェンジをし、エクステリア、インテリアの意匠変更などとともに、V6型3.5ℓツインターボエンジンにも手が入った。静粛性と乗り心地に加えて、「走り」を武器にした。
TEXT:高橋 明(Akira TAKAHASHI) PHOTO:MFi/LEXUS
レクサスブランドのフラッグシップであるLSに期待する性能のなかに、静粛性と滑らかさがあると思う。言い換えれば、それが「高級車らしさ」に繋がるわけだが、今回改良されたLSは、これまでのそうした部分のブラッシュアップよりも、ハンドリングやスポーツ性といったところに力が入った仕上がりになっていると感じた。これはレクサスのモデル全般に言えることだ。SUV各種やIS、RC、LCといったラインアップには、そうしたスポーティな性格を期待するのは事実であり、レクサスが目指すブランドの方向性として意思が伝わってくる。
とはいえ、LSは、スポーティさもさることながら、メルセデス・ベンツのSクラスを視野に入れるモデルだけに、多くのユーザーは、静粛性や滑らかさといった、居住性も重視していると思う。
今回試乗したV6型3.5ℓターボモデルは、これまでより数段静粛性が上がり、滑らかに走るようになっていた。走り出してすぐに感じるものは、スッと動く動きだし、滑からなステアフィールを感じ、そこからアクセルを踏み込んでいくと、滑るように加速していく。高級車らしい、いや高級車にしかないフィーリングになっていた。
これこそレクサスのフラッグシップに相応しい静粛性と乗り心地、それにプラスしてのスポーティさを身にまとったという印象になった。
レクサスは、開発コンセプトとして、問題が起これば遡って解決する、「源流主義」を信念を持っている。例えば、NVHに問題があれば吸音材や制振材で対応するのではなく、どこから振動が出ているのか?の原因を突き止め、対策していくという意味だ。
今回、具体的にはエンジン本体に手を入れている。燃焼室内の燃焼圧力が高速燃焼を目指すがために、筒内最高圧力(Pmax)が高すぎたということに気づき、燃焼波形を変更し、出力を落とさずに完全燃焼させ、排気性能も維持するように変更している。
さらに、クランクシャフトとコンロッドとの関係性における慣性マスを小さくすることも行なっており、その対策によってエンジン本体からの振動が極めて少なくできという。そのため振動を吸収するためのダイナミックダンパーを、今回から装備していない。
こうしたエンジンの改良によって、滑らかなエンジンに仕上がっていた。サスペンションとランフラットタイヤの熟成を図った新型LSは、極めて滑らかに、滑るように走るモデルへとなっていた。静粛性も高く、個人的には「これぞLS」という期待どおりに仕上がっていると思う。ちなみに、試乗モデルはLS500 エグゼクティブAWDで19インチサイズを装着している。
いっぽう、LS500h F SPORTは20インチサイズのタイヤ&ホイールを装着し、ドライバーズカーの位置づけでチューニングされている。
こちらのモデルにも試乗したが、500hはハイブリッドモデルだから、ガソリンモデルよりさらに静粛性が高いと期待したのだが、じつは、そうした結果にはならなかった。
というのは、ステアリングとフロアから若干の振動が伝わってきて、さらに20インチサイズということもあり、乗り心地が高級サルーンなのかといえば、やはりドライバーズカーの印象なのだ。乗り心地が悪いとか静粛性が悪いということではなく、V6 ツインターボ搭載モデルのLS500が極めて上級な乗り味になっていたため、少々劣るという印象になっている。
しかしSクラスとの比較を考えれば、やはりハイブリッドの500hもガソリンモデル以上の静粛性は欲しいと感じた。