エンジンにハーネスを接続しようと確認すると、点火コイルの線がボロボロになっていた。皮膜が破れ内部の電線は今にも千切れそうな状態だから、そのまま組んでいいはずがない。ではどうするか。この部分の配線だけ新たに作ればいいだけだ。ホームセンター素材で可能ので、配線が傷んだままなら参考になるはずだ。
タイトル写真と上の写真を見比べていただきたい。タイトル写真のエンジン左下にあるのが点火コイルで、奥からグリーンの配線が伸びて上にある黒い端子箱へとつながっている。エンジンを下ろす前の状態で、この時はまだ配線もしっかりしているように見えた。だが、点火コイル単体になった写真を見て欲しい。グリーンの配線ってどれだっけ?というくらい皮膜がなくなりボロボロだ。
どうしてこうなったかと言えば、それは経年劣化。配線はエンジンがかかっている状態なら絶えず電気が通っている。電気が通ると熱が発生するので、配線には微弱ながら熱がこもる。これを長い年月繰り返せば、当然劣化が進む。その状態で点火コイルを外して端子を抜いたから、劣化により硬化していた皮膜が見事に割れたのだろう。放置したままにはできないので、今回は配線を作る作業を紹介しよう。
どうしたものかと千切れそうな配線を確認すると平端子で接続されていることに気づく。ということは点火コイル側も平端子でつながっているのではないか? そう考えてゴムカバーをめくってみると予感が的中。点火コイルから配線を外すことができた。これなら作り直すのもカンタンだ。
外した配線は端子も再使用しない。電線も端子も新たに用意したものと入れ替えるのだが、配線内にあるゴムカバーは弾力もあり再使用できそう。ということで配線をぶった切りゴムカバーを取り外して、中性洗剤を用いて水洗いしておく。これで準備は万端だ。
新しく用意したのが赤い電線だが、ここで注意したいのが電線の太さ。ホームセンターなどで数多く売っているのは断面積が0.75sqなどの細いタイプが主流。ところが点火コイルなど強い電気が流れる個所にはもっと太いタイプが使われていることが多い。0.75sqの電線と比較したところ、ベスパP125Xに使われていた電線はやはりさらに太いものだった。そこで手元にあった2sq線を使うことにした。
純正の線と同程度の長さに切ったら両端の皮膜だけカットして内部の電線をよじっておく。ここにゴムカバーを通したら、端子を準備しよう。
新しい電線につける平端子も新品にするのだが、ここもサイズをよく確認しておこう。ベスパP125Xに使われていたのは250型。このほか110型や187型が多く使われているが、大きさが違うので接続することができないのだ。写真のものは5セット入りで250円(税別)なので、各サイズで揃えていくとイザという時に役立つはずだ。
電線と端子を圧着させるためには電工ペンチが不可欠。電工ペンチは手元側で配線皮膜だけを切ることも可能なので、非常に便利な工具。ぜひ揃えておきたい。まず端子に電線を合わせるが、露出させた電線をよじって2つ折りにしておくと電工ペンチでカシメた後も抜けにくくなる。
電工ペンチは太さが何段階かに分かれている。まずは一番太い部分で電線と端子をカシメよう。次に細くなった部分でもカシメて電線と端子の状態を確認する。電線がすっぽり抜けたりしてはやり直しになるので次に細い部分でカシメられるか確かめておくといい。
露出した電線がしっかりと圧着されたら、次に皮膜と端子をカシメる。これでコード本体と端子が圧着されるのだ。
片方の端子を圧着できたら反対側にも端子を圧着しよう。純正の配線にはオスメス両方の平端子が接続されていたので、同じように反対側にはメス側を圧着する。今回はこれで完了だが、通常はゴムカバーの代わりに半透明だったり透明なゴム製のスリーブが使われている。端子を買うなら同時にスリーブも揃えておくのが鉄則だ。ゴムカバー同様にスリーブも端子を圧着させる前に配線に通しておく。端子が圧着できたらスリーブをかぶせて端子同士を接続させてみる。この時スリーブが長い場合もあるので、ちょうどいい長さにカットして使うのだ。
新しい配線を点火コイルに接続してみよう。しっかりした手応えとともに端子はコイル側と合わさるはずだ。これだけでも気持ち良いもの。古くなった端子はすり減っているからかぶせてもカチッと接続されないことが多い。そのまま走ると振動で外れてしまうこともあるので、できれば新品端子を使って刷新するのが理想。取り外せる配線なら今回のように作り直してしまうといいだろう。
最後に点火コイル側の端子から汚れを落として導通が確保されるように処理しておこう。古くなった配線はトラブルのもとで、旧車に多い不調は端子や配線の見直しで改善されることもある。電工ペンチと配線、それに端子があればカンタンにできるので、電気系の不調を抱えているなら参考にして欲しい。