半世紀以上の長きに渡って、単気筒専業メーカーというスタンスを維持して来たロイヤルエンフィールド。そんな同社が現体制で初めて手がけた並列2気筒車は、日英のライバル候補と互角以上の資質を備えているだけではなく、650ccならではの魅力を真摯に追及していた。



REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)

PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)

ロイヤルエンフィールド/コンチネンタルGT650(スタンダード)・・・795000円

ロイヤルエンフィールド/コンチネンタルGT650(カスタム)・・・810000円

ロイヤルエンフィールド/コンチネンタルGT650(スペシャル)・・・839000円

 2018年秋に公開され、翌年から発売が始まったINT650/コンチネンタルGT650は、60年以上に渡って単気筒車のみを生産して来たインドのロイヤルエンフィールドが、初めて手がけた並列2気筒車である。

 もっとも1970年に倒産したイギリスの本家は、1948~1970年に500~750ccの並列2気筒車を販売していたのだが、それらとINT650/コンチネンタルGT650の間に、共通点はほとんど存在しない。あえて言うなら、エンジンのシリンダーヘッドカバーの造形は似ているものの、単気筒車のバレット/クラシック系のように、昔ながらの伝統を継承するモデルかと言うと、必ずしもそうではないようだ。

 もちろんINT650/コンチネンタルGT650のパッと見の印象は、どこからどう見てもネオクラシックである。

 とはいえ、まずはエンジンに注目すると、ショートストローク指向のボア×ストローク:78×57.8mmや、OHC4バルブの動弁系、270度位相のクランク、偶力振動を緩和する1軸バランサー、ギア式1次減速などは、現代ならでは機構で、往年の500~750ccの並列2気筒とは完全な別物。また、昔ながらの空冷という冷却方式を採用しつつも、シリンダーヘッドに油冷を思わせるシステムを導入したこと、冷却性能向上を実現する大型オイルクーラーを装備することも、現代ならではと言えるだろう。

 一方の車体に関しては、基本的にはオーソドックスな構成である。ただしダブルクレードルフレームを設計したのは、かつては世界GPやSBKに参戦し、2015年からロイヤルエンフィールドと同じエイカーグループに所属するシャシーコンストラクター、イギリスのハリスパフォーマンスなのだ。

 なおフロントのφ41mm正立フォークとリアのリザーバータンク付きツインショックは、一般的な基準では特に珍しい装備ではないけれど、単気筒のバレット/クラシック系で、昔ながらの構成を維持して来た同社にとっては、十分に現代的な装備だと思う(いずれも初採用車は2013年型コンチネンタルGT535)。

 どうして650ccという排気量を選択したんだろう。ロイヤルエンフィールドの並列2気筒車を初めて体験するにあたって、僕はそんな疑問を抱いていた。と言うのも、市場でライバルになりそうなパラレルツインのネオクラシックモデルを考えると、カワワキW800は773cc/52ps、トライアンフ・ストリートツインは900cc/65psなのである。そんな中で650cc、正しく言うなら648cc/47bhp(47.7ps)という設定は、どう考えても不利じゃないだろうか。でも実際に試乗を始めてみると、排気量に関する疑問は意外にアッサリ霧散することになった。

 まずは当初の僕が最も気になっていた、ゼロ発進時のトルクの話をすると、前述したライバル候補に負けていないのである。グイグイと言うほどではないものの、ミドルツインらしい鼓動を発揮しながら、必要にして十分以上の加速を披露してくれる。不思議に思って本国の英文プレスリリースを読むと、この650ccエンジンはわずか2500rpmで、最大トルクの約80%を発揮するとのこと。なるほど、どうりで物足りなさを感じないわけだ。

 もっともミッドレンジの力は、排気量とパワーに優るW800やストリートツインには及ばない。ただしその気になれば、最高速はメーター読みで170km/h前後は出そうだし、個人的にはライバル候補とは一線を画する、650ccならではの軽やかでストレスが少ない吹けが上がりが印象的だった。

 改めて振り返ると、1940~1970年代に販売されたブリティッシュツインの多くは、当初は500ccからスタートし、650ccを経て、最終的にはほとんどが750ccになったのだが、英車マニアの中には650ccがベスト、と言う人が少なくないのである。もしかするとINT650/コンチネンタルGT650の開発陣は、そのあたりを考慮して、排気量設定を行ったのかもしれない。

 そして車体に関しても、INT650/コンチネンタルGT650はライバル勢とは一線を画する軽快さを感じさせてくれた。その印象の背景には、安定性より操縦性を重視したディメンション、キャスター/トレール:24度/105mm、軸間距離:1398mmという数値や(W800のSTDは27度/108mm/1465mmで、ストリートツインは25度/102.4mm/1415mm)、細身の前後18インチタイヤもあるのだが、排気量が少なくてクランクが軽いおかげで、このバイクのハンドリングは単気筒車+αと言いたくなる感触なのである。

 もっともハリスが設計したフレームの現代的な剛性感を考えると、今後の排気量拡大はあり得そうだが、現状のINT650/コンチネンタルGT650は、650ccならではの魅力をきっちり構築しているのだ。

 さて、そんなわけでINT650/コンチネンタルGT650にかなりの好感を抱いた僕だが、作動性がいまひとつの前後ショックや左右への張り出しが大きいマフラーなど、気になる点がなかったわけではない。とはいえ今回の試乗では、初めて手がけた並列2気筒車でありながら、先行する日英のライバル候補に対して、互角以上に戦える資質と、似て非なる特性を実現したロイヤルエンフィールドの手腕に、しみじみ感心することになったのだった。

ディテール解説

灯火類はオーソドックスなハロゲンバルブ/白熱球。この種のネオクラシックモデルの場合、近年の流行であるLEDを採用しないことは、特にマイナス要素にならないだろう。アンダーブラケットはボルト2本締め。

兄弟車のINT650がバーハンドルを採用するのに対して、カフェレーサーのコンチネンタルGT650はスワンネックタイプのセパハン。取り付け角度はやや開き気味。スイッチボックスはスズキ車でよく見られる部品で、操作性は至って良好。

昨今では貴重になりつつある指針式メーターは、往年のスミスを思わせるトラディショナルなデザイン。速度計内にはオド/トリップメーターや燃料残量を表示する液晶画面、回転計内には各種警告灯を設置。

燃料タンクは各車専用設計で、スクエアスタイルのコンチネンタルGT650は12.5L、ティアドロップタイプのINT650は13.7Lの容量を確保。キャップはいずれもエノッツタイプで、中央のカバーの下にキーシリンダーが備わる。

シートもINT650とコンチネンタルGT650で異なる形状。ちなみにコンチネンタルGT650は、当初は820mmというシート高を公称していたのだが、その数値が市場で受け入れられなかったのだろうか、現在は793mmに下げられている。

シート後方にはグラブバーを装備。テールランプはかつての英車の定番だったルーカスを思わせる形状だ。
シート下にはETCユニットが設置されているが、これはもちろん標準装備ではない。右側サイドカバー内には車載工具を設置。

ステップも各車専用設計で、当然、コンチネンタルGT650の装着位置はINT650よりも後退している。ラバーに刻まれたメーカー名は、かつてのブリティッシュツインに通じる手法。

往年の英車のほとんどが、左側にプライマリーチェーンケースを設置していたのに対して、INT650/コンチネンタルGT650の1次減速機構は右側。エキパイの取り出し口となるフィン付きの排気アダプターには、O2センサーが設置されている。

パワーユニットは、エンジンとミッションが別体式?と思えなくもないデザイン。始動はセルのみで、キックは装備しない。最高出力47bhp、最大トルク52Nmという数値は、現行ロイヤルエンフィールドでは最強で、ミッションは同社初の6段。

電制制御式インジェクションはボッシュ。それを隠すかのような左右のカバーは、カワサキW800や、ストリートツインを含めたトライアンフのパラレルツイン車を参考にしたのだろうか。

ホイールは前後18インチで、アルミリムはエキセル。純正タイヤはピレリのファントムスポーツコンプで、サイズは、F:100/90-18、R:130/70-18。これに組み合わせられるブレーキは、F:φ320mmディスク+片押し式2ピストン、R:φ240mmディスク+片押し式1ピストンで、キャリパーはバイブレ製だ。2チャンネル式ABSはボッシュが開発している。

φ41mm正立フォークとリザーバータンク付きリアショックはガブリエル製。調整機構はリアのプリロードのみ。

主要諸元

全長:2,122mm

全幅:744mm

全高:1,024mm

シート高:793mm

乗車定員:2人

重量:198kg

排気量:648cc

エンジン:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ

最大出力:47bhp/7150rpm

最大トルク:52Nm@5250rpm

トランスミッション:6速マニュアル

フューエルタンク:12.5L

ブレーキ:Front=φ320mmディスク/ABS Rear=φ240mmディスク/ABS

ホイール(前後):2.50-18

タイヤ:Front=100/90-18 Rear=130/70-18

ライダープロフィール

中村友彦



1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車から最新スーパースポーツまで、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車でロングランに出かけている。



現在の所有車は、1974年型モトグッツィV850GT、2006年型H-D XL883、1985年型ヤマハTZR250など。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 【コンチネンタルGT650試乗】ロイヤルエンフィールドが放つ新生ブリティッシュツイン! 味付けはレトロ。