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2020年MotoGPをおさらい/9人のウイナーを生んだ混沌のシーズン


 2020年シーズンのMotoGPは、新型コロナウイルス感染症の影響でレースカレンダーが変更となった。最高峰クラスであるMotoGPクラスの初戦は7月中旬、スペインのヘレスで、最終戦は11月下旬のポルトガルGPに。全20戦が予定されていたレース数は15戦(MotoGPクラスは14戦)で行われた。2020年シーズンのMotoGPについて振り返る。


TEXT●伊藤英里(ITO Eri)


PHOTO●Honda、LCR Honda、MICHELIN、SUZUKI

 今季を象徴するトピックスの一つといえば、9人のライダーが優勝を飾ったことだろう。2016年も同じく9人のウイナーが生まれたシーズンではあったが、このときは全18戦。対して今季は前述のように、MotoGPクラスについては全14戦で争われており、そのうち9戦で異なるライダーが優勝を飾ったのである。




 そうした優勝を挙げたライダーの数からうかがえるように、2020年シーズンのチャンピオンシップは混戦模様が続いた。2019年までに最高峰クラスで6度ものチャンピオンを獲得し、シーズンをけん引する存在であったマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、初戦である第2戦スペインGPの決勝レース中に転倒を喫し、右上腕を骨折。シーズン中に2度の手術を受け、今季中に復帰することはかなわなかった。




 一方、2017年シーズンからMotoGPクラスに参戦を開始したKTMがブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)、ミゲール・オリベイラ(Red Bull KTM Tech 3)によって3勝して新興勢力として名乗りを挙げ、スズキの二人のライダーはコンスタントに表彰台を獲得した。対して、3強メーカーと目されてきたホンダ、ヤマハ、ドゥカティは、チャンピオンシップの成績としては安定感を欠いていた。今季は総じて、拮抗した戦いが展開されたと言えるだろう。

現在のMotoGPで圧倒的な強さを誇ってきたマルケスだったが、初戦で転倒。今季はその負傷の療養にあてることになった

 こうした中で、素晴らしい安定感を見せたのが、チャンピオンを獲得したジョアン・ミル(Team SUZUKI ECSTAR)である。優勝こそ第13戦ヨーロッパGPの1回のみだったが、第5戦オーストリアGPの2位表彰台獲得を皮切りに、7度もの表彰台を獲得している。この表彰台獲得回数は、今季フル参戦したライダーの中でもトップだった。




 ミルは第7戦から第9戦あたりで、チャンピオンシップを意識し始めたという。第9戦後、ミルはチャンピオンシップでランキング2番手に浮上し、ついには第11戦アラゴンGPでランキングトップに立つと、第14戦バレンシアGPでチャンピオンを獲得した。スズキライダーとしては、20年ぶりにライダータイトルを獲得するという快挙を成し遂げた。

スズキに20年ぶりのライダータイトルをもたらしたミル。2020年で23歳、MotoGPクラス参戦2年目のライダーだ

ミルはヨーロッパGPでの1勝を含む7度の表彰台を獲得した

 今季を振り返るならば、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)の話題を挙げておきたい。MotoGPクラスに参戦する、ただ一人の日本人ライダーだ。2020年シーズン、最高峰クラス参戦3シーズン目を迎えた中上は、今季、自己ベストリザルトの4位を2度獲得し、表彰台獲得に迫るレースを何度も繰り広げた。さらに予選では、第12戦テルエルGPで、最高峰クラスで初めて、予選でポールポジションを獲得。このポールポジションを含めて4度、決勝レースを1列目からスタートしている。ホンダのエース、マルケスが負傷によって不在の中、シーズンを通してホンダをけん引。来季に向けて、大きな期待を感じさせる2020年シーズンとなった。

中上はテルエルGPで最高峰クラス初のポールポジションを獲得。最高峰クラスに参戦する日本人ライダーとしては2004年に玉田誠が獲得して以来の快挙

惜しくも転倒リタイアとなった第14戦バレンシアGPでは力強い追い上げで表彰台に迫った

 今季のMotoGPマシンの特徴を挙げるなら、その一つは『ホールショットデバイス』の投入、になるだろう。このシステムはサスペンションが縮んだ状態を維持し、バイクが前に進むパワーを効率化するもの。ドゥカティが以前より先陣を切って取り入れたものだが、2020年シーズン後半戦までにはすべてのメーカーがホールショットデバイスを投入した。現在はスタート時の使用が主流だが、このシステムの先駆者であるドゥカティはレース中の使用もあるという。進化が気になる技術である。

 2020年シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響が、少なからずMotoGPにも及んでいた。そんな中で、ライダーたちが最終戦まで激闘を見せたことは間違いない。




※記事内のチーム名は2020年シーズンのもの。

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