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従来のスポーティ路線から一転、親しみやすさを追求したホンダ新型フィットの魅力を競合車との比較で明らかにする!


国産コンパクトカーのビッグネームであるヴィッツ(ヤリス)とフィットが相次いで新型となって登場。迎え撃つのはコンパクトカー売上No.1を誇るノートと、欧州コンパクトにも引けを取らないスイフトだ。個性豊かな新型の登場で、コンパクトカー選びがより一層楽しくなる。




REPORT●石井 昌道(ISHI Masamichi)


PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)


※本稿は2020年2月発売の「新型フィットのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

ホンダ・フィット e:HEV LUXE:新型フィット 20年の時を経て新たな時代に沿ったコンセプトを追求

四代目への進化にあたり、「数値では語れない価値」という感覚性能も研ぎ澄まされた。搭載されるパワートレーンは、新開発CVTが組み合わせられた1.3ℓガソリンエンジンと、小型化された1.5ℓの2モーターハイブリッド。ともにコンセプトに相応しい走りを獲得している。



 四代目にして大きくイメージを変えてきたフィット。スタイリングはスポーティーだった先代モデルから一転して愛玩動物のように親しみやすくなった。コックピットに腰掛けてみれば、フンワリと身体を包み込むシートにやたらと開けた明るい視界。全てが穏やかで乗員に優しい。走り出す前から、なんだかウキウキとしてくるのだ。




 振り返ってみれば、20世紀のBセグメントカーのハッチバッグと言えば、やすく手短で、一応は5人乗れて荷物もそれなりに乗るという、ベーシックカーという表現がピッタリのモデルだった。ところが2001年デビューの初代フィットはセンタータンクレイアウトという画期的なプラットフォームを開発して、コンパクトカーとは思えないほど広々とした室内空間を実現。見た目品質も良く、Bセグメントながら従来では考えられないほど幸せなファミリーカーだったのだ。ホンダはすべての人に、「生活の可能性が拡がる喜び」を提供することをヴィジョンとして掲げているが、初代フィットは見事にそれを成し遂げたと言えるだろう。




 二代目、三代目は正常に進化していったが、広さや低燃費性能などは当たり前のものとなりつつある。機能だけではない、新たな「生活の可能性が拡がる喜び」を日本の成熟した自動車ユーザーに対して盛り込むのであれば、カタログの数値等には現れない感覚性能が必要。そこでコンセプトとなったのが”心地よい”であり、前述のルックスやシートの感触、視界の良さ、その他の使い勝手などあらゆる面でそれが追求されている。




 先に新型フィットの全体的な乗り味を記しておくと、見て触れて感じた印象と違わず優しさがあり、いわば癒し系。”心地よい”が走らせてみても実感できるのである。




 プラットフォームはキャリーオーバーであるが、大幅な改良が施された。肝要なのはサスペンションをとにかくスムーズにストロークさせること。ボディやサスペンション取り付け部など剛性を高めるべきところは高め、可動部のフリクションは徹底的に低減従来モデルも乗り心地が硬いというほどではなかったものの、サスペンションのストロークに渋いところがあったが、見事に払拭したのが新型が獲得した乗り味だ。




 そんな新鮮さを持った新型フィットと比較乗車するのは、ハイブリッドシステムが近似しているノートe-POWERと、欧州風の乗り心地が玄人筋からも評価されているスズキ・スイフト。トヨタ・ヤリスは同時に乗ることは叶わなかったが、プロトタイプ試乗の記憶を頼りに記していくことにする。

WLTCモード燃費:27.4㎞/ℓ


直列4気筒DOHC/1496㏄ 


エンジン最高出力:98㎰/5600-6400rpm


エンジン最大トルク:13.0㎏m/4500-5000rpm 


モーター最高出力:109㎰


モーター最大トルク:25.8㎏m 


車両本体価格:232万7600円

日産・ノート e-POWER NISMO S モーター駆動が魅力

登録車販売台数NO.1の座を長きにわたって堅持するノートは、広い室内空間もさることながら、ガソリン車に加えてモーター駆動のe-POWERの存在が人気の源泉。大トルクでレスポンスの良い走りとワンペダルドライブは、他車と一線を画する独自の走行感覚が魅力的。



 ノートe-POWERのパワートレーンは、79㎰の1.2ℓ直列3気筒エンジンが発電に徹し、80kW(109㎰)の電気モーターで駆動するシリーズ・ハイブリッド。エンジン車に比べると、電気モーター特有の低回転から発する大トルクによって格段に走りやすくて力強く、静かで低燃費といいこと尽くめ。ノートを3年連続コンパクトカー販売台数ナンバー1へと押し上げた立役者だ。また、電気モーター駆動ならではの特性を活かして回生ブレーキを強力にすることで、ほとんどのシーンをアクセルペダルだけで走行できてしまうe-POWER Driveを持たせているのがユニーク。運転にはある程度の慣れが必要であり、好き嫌いが分かれるところではあるが、ノーマルモードなら一般的なエンジン車と変わらない感覚だから誰にでもオススメできる。




 走行感覚はあたりまえだが電気自動車に近い。その滑らかで力強い加速を味わってしまうと、普通のエンジン車には戻れなくなりそうだ。通常、停止時はエンジンがストップしていて発進もバッテリーの電力でまかなうから静か。バッテリー残量が十分にある時なら、50〜60㎞/hまでエンジンが掛からずに加速していくこともある。残量が少なければエンジンが掛かって発電し、バッテリーに充電しつつ電気モーターを回すことになる。エンジンは3気筒だから始動時は少しブルンッとした感触があり、音はいかにも実用エンジンのそれで、しかも一定回転でブーンとうなるから、できればバッテリーに早く充電してEV走行に移って欲しいと思わせる。




 アクセルを床まで踏みつけると、エンジン回転数は一際高くなり、普通のコンパクトカーとしては望外の加速をみせつける。エンジンは最高出力の79㎰を発生するが、それだけでは80kW(109㎰)の電気モーターの能力をフルに発揮させられないのでバッテリーからも電力を持ち出すことになる。バッテリーの残量が低くなってしまうとエンジンが生み出すだけの電力しかなくなってしまうので少し遅くなるが、日本の道路事情なら高速道路でもワインディングでもそういったシチュエーションになることはほとんどないだろう。サーキットで何度か試したことがあるが、フルパワーを発揮させ続けられるのは概ね2㎞程度だ。




 ワインディングでも電気モーターの頼もしさが光って痛快な走りが楽しめるが、少しもどかしいのはコーナー立ち上がりでアクセルをベタッと踏み込んだ時、すぐにはフルパワーが得られないこと。エンジン回転数が上がってパワーを供給するまでにタイムラグがあるからだ。シリーズハイブリッドだから仕方ないところだが、今回試乗に駆り出した「N-SMO S」にはそれを解消するモードが用意されていた。SモードのBレンジで走行するとアクセルを戻してもエンジン回転数がキープされるから、レスポンスよくフルパワーが得られるし、充電が強化されるのでスポーティな走行でもバッテリーが減るのを抑えられる。スポーツ・シリーズハイブリッドとして仕立てられているのが面白い。




 ノート自体は世代的に新しくはなく、もともと新興国に向いたプラットフォームでもあるため、e-POWER登場以前のモデルはシャシー性能はそれなり、という印象だったが、e-POWERではボディの強化などが行なわれて見違えるように良くなった。街なかから高速道路まで乗り心地は快適で直進安定性やハンドリングなども頼もしい。さらに、「N-SMO S」はステーやクロスメンバーの追加でフロア剛性を強化。サスペンションやタイヤなども専用品だ。




 走らせてみるといかにもチューニングカーといった趣があってそれなりの硬さではあるものの、サスペンションはきちんとストロークしているし、ゴツゴツ感は低く抑えられている。タイヤは縦バネがそこまで硬くなくて効果的に細かな凹凸を吸収しているようだ。




 コーナーを攻めると「N-SMO S」は本領を発揮。ステアリング操作に対するノーズの反応が素早く、グイグイと曲がっていく。パワートレーンも合わせてBセグメントで最も楽しいホットハッチと言えそうだ。



JC08モード燃費:(e-POWER参考値34.0-37.2㎞/ℓ)


直列4気筒DOHC/1198㏄ 


エンジン最高出力:83㎰/6000rpm 


エンジン最大トルク:10.5㎏m/3600-5200rpm 


モーター最高出力:136㎰/2985-8000rpm 


モーター最大トルク:32.6㎏m/0-2985rpm 


車両本体価格:272万1400円

スズキ・スイフト HYBRID SL 骨太な印象のスイフト

若者に人気のホットハッチであるスイフトスポーツとともに、欧州の道で鍛え上げられたスイフト。その走りはやはり欧州的で安定感が高い。パワートレーンは1.2ℓ直4NAと1.0ℓ直3ターボ、さらに2種類の1.2ℓ直4ハイブリッドと多彩な設定で多様なニーズに対応する。



 スイフトはいくつものパワートレーンを用意しているが、今回の試乗車は上級グレードで燃費もいい「HYBRID SL」。マイルドハイブリッドの「HYBRID RS」とは違ってモーターもバッテリーも強化され、EV走行もこなす。面白いのはトランスミッションにAGSと呼ばれるロボタイズドMTを使用していること。5速MTをベースにクラッチ操作及びシフトチェンジを自動化した2ペダルミッションだ。




 発進時は、標準モードだとブレーキから足を離せばアイドリングストップしていたエンジンが再始動、エコモードでは電気モーターでクリープしつつアクセルを踏めばエンジン始動。加速はちょっと強めにすると電気モーターのアシストが入る。60㎞/h以下の巡航など、ごく負荷の低い領域ではエンジンが停止してEV走行。マイルドではないハイブリッドとしては電気モーターは大きくないから、それほどハイブリッド感は強くないが、良好な燃費性能とエンジン車よりもちょっと上乗せされるパワー&トルクがリーズナブルに提供されているのがスズキらしい。




 シングルクラッチのロボタイズドMTはシフトアップ時のタイムラグが気になるものだが、そこは電気モーターが補うので一般的な走行では気になることがなく、トルクコンバーターATのように走れてしまう。




 アクセルを深く踏み込んでいくとスペックから想像するよりもずっと力強い。わずか3.1㎏mとはいえ電気モーターの利点が発揮され、エンジン自体のレスポンスや常用トルクも優れているからだ。ただし、全開にするとシフトアップのタイムラグは大きく感じられ、少しもどかしくなってくる。




 スイフトはシャシー性能に定評があるが、新型フィットやヤリスが大きな進化を遂げた中で乗ってみると、やや古さを感じる。ノイズやバイブレーションは並レベルで、荒れた路面ではサスペンションがドタバタと感じられる。パワーステアリングの制御も粗いから高速直進などでも修正舵が多く、ハンドリングのレスポンスも良くはない。




 ところが、ワインディングを元気に走らせてみると骨太な印象で、やはり基本の部分ではポテンシャルが高いことが確認できた。速度域が高くなればなるほど良く感じられるのは、欧州を重視しているスイフトらしいところだ。最新モデル達の上質感には敵わないが、タフな状況では相変わらず強みを発揮するのだった。

JC08モード燃費:32.0㎞/ℓ


直列4気筒DOHC/1242㏄ 


最高出力:91㎰/6000rpm


最大トルク:12.0㎏m/4400rpm 


モーター最高出力:13.6㎰/3185-8000rpm


モーター最大トルク:3.1㎏m/1000-3185rpm 


車両本体価格:198万5500円

癒しのフィットとスポーティなヤリスの直接対決に期待

 新型フィットのe:HEVはノートe-POWERに近いが、ドライバビリティやドライビングプレジャーなど感覚的な性能は大きく上回っていた。まずエンジンが1.5ℓ直列4気筒のためトルクに余裕があり、再始動時の振動も少ない。EV走行からアクセルを踏み増していっても、いつエンジンが掛かったのか気付かないこともあるほどだ。さらにリニアシフトコントロール制御が驚くほどつくり込まれている。CVTなどでよくある、加速に合わせて有段ギアのようにエンジン回転数が上下してシフトチェンジしているかのように思わせる制御に近く、CVTの場合はほぼ全開に近いところでのみ作用するが、e:HEVのそれはちょっと早めぐらいの加速でも有段ギア感がある。空いている郊外路を普通に加速するイメージで走らせると、50㎞/h、70㎞/h、90㎞/hでシフトチェンジ。加速の強さや状況によって制御は変わってくるが、あらゆる場面でドライバーの感覚と加速感、音の変化が見事にマッチしていて心地良い。エンジンの音の変化が、加減速を予測させてくれるかのようで、一体感があるのだ。基本的には電気モーターで加速しているからギミックなのだが、下手なエンジン車よりもずっとリニアに感じられるのだから驚いてしまう。




 高速域の巡航などではエンジンドライブモードとなるが、その切り替えはとてもスムーズでそれと気が付かせない。一度そのモードになると、それなりに加速させても今度はモーターがアシストするから案外と外れないで粘るようだ。




 シャシーの乗り味は穏やかで癒やし系ではあるものの、ワインディングを元気に走らせてみれば思いのほか楽しめるのがうれしい。クイックな動きではないが、ステアリングを深く切り込んでいっても舵の効きは良く、リヤはがっしりと粘りつつ、多少滑ったとしても動きがわかりやすくてコントローラブル。すべての動きが滑らかで連続性があるから、シャープさやクイックさがなくても一体感があって楽しい気持ちにさせてくれるのだ。



トヨタ・ヤリス HYBRID G( 2WD)スポーティなヤリス

TNGAシャシーが採用されるとともに、グローバルネームに統一されたヤリスは、1.0ℓ及び1.5ℓのガソリンエンジンと、1.5ℓエンジンを搭載したハイブリッドをラインナップ。さらにリヤをモーター駆動するE-four四駆も設定され多彩なラインナップを誇る。



 新型フィットに比べるとヤリスはもうちょっとスポーティなイメージが強い。TNGAによる新たなBセグメント用プラットフォームは低重心感があってサーキットを走らせてもミズスマシのようにスムーズかつ素早くコーナーを駆け抜けていく。タイトコーナーでも驚くほど回頭性が良くクルッと回り込み、それでいてリヤが破綻することもない。しかも、サスペンションは無用に硬いわけではなく、乗り心地とのバランスが良いのも新規プラットフォームの実力の高さゆえだろう。




 THSⅡのハイブリッドシステムは、e-POWERやe:HEVなど電気モーター駆動にはドライバビリティで敵わないだろうと想像していたが、エンジンも電気系も強化したことでかなりいい勝負になっている。レスポンスの良さと電気モーターのアシスト感の強さが、THSⅡにファン・トゥ・ドライブをもたらしているのだ。




  新型フィットは大いに進化して、Bセグメントの常識を塗り替えるほど上質になった。これに真っ向から対抗できるのは日本車ではヤリスだけだろう。かたや癒やし系、かたやスポーティ系とキャラクターは分かれるが、どちらも高度なのでバランスにも優れる。つまりフィットもスポーティに走らせればそれなりに楽しめるし、ヤリスはスポーティであっても快適性は十分に高い。どちらが優れているのか、あるいは好みに合うのか、早く公道試乗で直接対決させてみたい。久々にBセグメントカーでワクワクさせられる新型車の登場に興奮が抑えられないのだ。

WLTCモード燃費:35.8㎞/ℓ


直列3気筒DOHC/1490㏄ 


エンジン最高出力:91㎰/5500rpm


エンジン最大トルク:12.2㎏m/3800-4800rpm 


モーター最高出力:80㎰


モーター最大トルク:14.4㎏m 


車両本体価格:213万円
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